71
71
僕が目を覚ました時には翌日の朝になっていた。
ぐっすり眠ったおかげで眠気はないんだけど、筋肉痛で全身が痛む。しかも筋肉が硬直しているような感じで、ちょっと動かすだけでもジンワリとした鈍痛がする。もしミューリエの回復魔法がなかったら、もっと酷い状態だったかもしれないなぁ。
それにしても、太陽の光が僕の顔に差していて暖かい。これだけ高い角度にあるということは、朝というよりは昼に近いのかも……。
――って、えっ? ということは、ミューリエはっ? もうどこかへ行ってしまったってことはないよねっ!?
「ミューリエ!」
僕は半ば取り乱しながら慌てて周りを見回す。
すると近くの切り株の上にミューリエは腰掛けていて、僕の視線に気付くと春風のような穏やかな笑みを浮かべる。
「おっ、ようやく起きたか。今日は少し寝坊だな。ふふふっ」
「あ……♪」
ミューリエはすでに起きていて、朝食を作ってくれている最中だった。今はパンに野菜や肉を挟んでいるところみたい。それとこのスーッとする爽やかな香りはハーブティーを蒸らしているところなのかな? それらを認識して僕は心底ホッとする。
だって空がこんなに明るいんだもん、すでにどこかへ行っちゃったんじゃないかって不安で胸がドキッとしたから。
でも残された時間はあと半日くらい。今日中に自力でタックさんのところへ辿り着けなかったら、どのみちミューリエは僕の前から……。
――いや、そんな悲観的なこと、考えちゃダメだ! 今は目の前のことに集中しなきゃっ!
もちろん、まずは特訓の続きを始める前にしっかり朝食を採ってエネルギーを回復させないと。
僕は起き上がると近くの沢へ行って冷たい水で顔を洗い、そのあとでミューリエの作ってくれた朝食を口に運んだ。
特にハーブティーは美味しいだけでなくて、体の隅々まで癒しの成分が染み渡るような気がして、疲労感や気怠さが抜けていく。
ちなみに昨日のハーブティーとは味も香りも違うから、茶葉のブレンドが違うのかな?
単にその時の気分によって変えているだけなのかもだけど、もし僕の体調を気遣ってそうしてくれているのなら嬉しい。
「……ねぇ、ミューリエ。試練の洞窟へ挑戦するまで、まだ少し時間があるよね? それまで何をすればいい?」
「ひたすら走るだけだ。制限時間いっぱいまでな。それは昨日と同じだ」
ほんのちょっぴり別の展開を期待していたんだけど、ミューリエの返答は変わらない。やっぱり、まだ剣を持たせてはくれないか……。
残念だけど、僕の力不足なんだから仕方がない。
――いや、簡単に諦めるのは早いんじゃないだろうか?
昨日と比べれば少しは体力がついているだろうから、自分の力を試してみるのもいいかもしれない。結果によってはミューリエの気持ちが変わる可能性だってあるし。
さて、どうしようか?
●ミューリエに不意打ちを仕掛ける……→2へ
https://kakuyomu.jp/works/16816927862192814506/episodes/16816927862193178279
●この場は素直にミューリエの言うことを聞いておく……→5へ
https://kakuyomu.jp/works/16816927862192814506/episodes/16816927862193498732
●特訓はこれくらいにして試練の洞窟へ挑戦する……→46へ
https://kakuyomu.jp/works/16816927862192814506/episodes/16816927862194840773
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます