桃色カプセルその後
ぽん、という軽い音と共に視界が切り替わった。
周囲はボロいアパートの一室から自宅の寝室に。
十年近く前のまだ貧相でクソみたいにダサかった若い頃の嫁は、今の嫁に。
互いに目を合わせて、なにが起こったのか悟った。
あのガチャを伴侶となった人間同士が過去に回していた場合、全く同じタイミングで過去の世界に召喚されるらしい。
なので自分が今過去の嫁に召喚されたように、嫁も過去の自分に召喚されたのだろう。
「随分と好き勝手言ってくれたなあ? ハズレだのバグだの」
シクシク、と泣き真似をしてやると嫁は顔を青ざめさせた、それでゆっくりと逃げ出そうとするが、逃すとでも?
「運命、変えられなかったなあ?」
畳み掛けるように嫁を召喚した時のことを思い出しながらそう言ってやると、嫁の身体が震えだす。
「てか、あんなわかりやすい嘘でオレを騙せるとでも? なぁにが望んでいない結婚だよ。こんなに愛し合ってるのにさあ?」
何も言わずに視線を逸らした嫁の顔を掴んで無理矢理視線を合わせてやると、その目が潤んでいく。
ああ、本当にこいつは可愛い女だな。
逃さないで正解だった、なにが低レアだ、ふざけんな。
「じゃあ、オシオキ、な。……オレ以外の男にあっさり身体見られてんじゃねーよ」
頬をつねりながらそう言うと、嫁は「理不尽!」と叫んだ。
将来の伴侶か希少石が出るガチャ(一回三万円) 朝霧 @asagiri
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