第8話 当面の目標(仮)

 翌朝、黒麦パンとスープを流し込んだ私はライラやライカにサラを館の大広間に集めた。ラミィは外を回ってもらっているのでこの場にはいない。


「突然集めてごめんね。どうしても話しておかなきゃいけないことがあって……私のことに付いてなんだけど」


 私のことについて詳しく話した。元いた世界の事。その世界から転移してきたこと。その全てを話した。初めは全く意味が解らないと首をかしげていたけど、わかり易いように噛み砕いて説明をしたら若干の疑問が残っているみたいだけど大方理解をしてくれたみたい。


「つまり……アユリ様はこの世界ではない世界から召喚された転生者であると……?」

「うーん。転生者とは違うかもしれないけどその認識でいいと思う」

「勇者様や聖女様と同じです!すごいですアユリ様!」

 

 私は勇敢な勇者でもないし誰かを癒やすことのできる聖女でもない。そんなにたいそれた者ではないことを伝えたいのだけどあんまり信じてもらえない。どうにかこうにか説明をしたいけどまぁ……伝わらないと思うし諦めた。


「それはともかく……これからの目標を決めていくわ。昨日美術館ミュージアムを作るって話したよね?」

「ええ、とても素晴らしい考えだと思います。」

「それに昨日寝込んで考えたんだけどやっぱりライラが防壁の外を彷徨くのは良くないと思うの。それに動く石像ばっかりだと……ね」

「……思えば確かにそうですね。動く石像がいればダンジョン化してしまったと判断されて王国軍から討伐隊が派遣される可能性もありますから」

 

 えぇ……そんなこともあるの?。集めて方針転換の相談をしておいてよかった。私みたいな同じ嗜好同性癖を持っている人を雇えればいいけど総都合よくいるワケでもないし、最悪……はホントに困った時だけにとっておこう。


「とにかくどこからか人を集めて来ないとダンジョンと間違われてしまうから誰かいい場所は知らない?」

「……ごめんなさい。私はさっぱりです」


 元お嬢様のリリィはさっぱりといった感じ。それもそうか領主の娘とはいえまだ若いにそこまで教育に力を入れていなかったのかも。他の娘たちは……。


「すみません私も聞き覚え等は無いです」


 リリィの姉、サラも聞き覚えはない。となれば最後の一人であるライカだけどどうかな。


「風のうわさで聞いたことはありますが詳しい場所までは……」

「そう……残念」

「申し訳ございません……」


 ライカが謝罪をするけど知らないことは仕方がない。こうなれば別の方法で人手を集めるしかない。


「ライカ、最後に行商人がバスラットに来たのはいつ?」

「2つ月前でございます。いつもの時期でしたら行商人の一団がバスラットを訪れていましたが……今年はどうなるか」


 街が壊滅しているから行商人も来ないと可能性があるいうことね。そうなるとさらに人手集めが厳しくなってしまうからできれば来て欲しい所だけど……難しいかな。


「もし行商人が来なくなればこちらから行商人を出す他ないわね。商人だった石像も選別しなきゃいけないし何より人手が足りないわ。」


 またロコモールとヒプノバリス連発しなきゃいけないけどこれはどうしようもない。私しかできないことだから。





 

 


「ふぅ……」

「カオリ様。本日はこの辺にしておきましょう。また倒れられたら大変なことになります」

「うんそうね。今日はこの辺にしておくわ」


 今日も倒れない程度に入魂の祈りロコモール使役の呪文ヒプノバリスを唱えて動ける人数……いやこの場合は石像だけど、とにかく人手が足りない。


(破壊された建物を片付けなきゃいけないし防衛用の人手もほしい。あああ、猫の手も借りたいところ!)


 私がもんもんと悩みながら屋敷に向けて歩いていると石の巨体を揺らしてラミィが私の元へとよってきた。


「どうしたの?」


 理由を聞く前にラミィは私を背中に背負うと一目散に一番高い物見櫓へと上がるようにジェスチャーをする。

 何かあったのかと大急ぎで登ってみれば遠目に荷車と人影が見えました。

 

「……行商人の一行がバスラットに到着したようですどう致しますか?」


 私に遅れて物見櫓に登ったライカが荷車の様子を見ながらそう呟いた。……まだ準備すら整ってないのにどうしよう。

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私は異世界転生したので美術館を作ります 嵯峨もみじ @kolaltuta

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