第7話 人手(石)と私の限界

薄暗い地下室には私とりリリィ、そして動くことのない石像たちがいた。


「さてとリリィ。ここにある石像ちゃんたちの中から当たりを付けてもらえるかしら?私からの注文は給仕ができる子。もしくは元冒険者なんかが居ればいいんだけど」

「承りましたアユリ様。ではこちらへ」


等間隔で並べられた石像を順番に品定めしていく。


『初めにですが……こちらの石像は代々我がバスラット家に仕えて来たメイドのライカ。どうですか』

「うん、中々に背も高いし大人びてていいわね。館で使いましょう。採用ね」


といった具合に次々と石像を見ていく。選ばれなかった石像もあるが、後々有効活用することができると思うので今はただ放置しておく。大体半分は見ただろうか選ばれたのは六体ほどを選んで次の石像は私が幌馬車の中で見つけたお嬢様風の石像であった。


「続きまして……っ!サラ・バスラット、私のお姉様です。アユリ様、どうか私のわがままを一つ聞いていただけますか?」

「うんうん言いたいことはわかったわ。つまり……そういうことね」

「はい。私と同じように動けるようにして頂きたいのです。お願いできますか」


私のかわいいゴーレムちゃんからのお願い、断る必要なんて感じられない。


「解ったわ。その代わりしっかりと自分のお姉さんを大切にするのよ」


ありがとうございます。と深々と頭を下げるリリィ。かわいいから頭を撫でるとまんざらでもないようであった。


合計七六体の選別を終わると、サラ・バスラットを含めて一七体の石像に命を吹き込んでゴーレムにうまれかわらせる作業に移る。ロコモールとヒプノバリスを連発する。


「……ロコモール!からのヒプノバリス!よし次!ロコモール!ヒプノバリス!ロコモール!ヒプノバリス!ロコモ……あ、れ……?」


サラ・バスラットを最初にゴーレム化して石像の半分ほどをゴーレムに変化させた所で呪文が口から出なくなる。というか私の身体が動かなくなっていた。呪文を唱えるポーズのまま動けなってしまいバランスが悪かったのかそのまま倒れてしまった。

リリィやサラ、その他にも新しくゴーレムに生まれ変わった娘たちが集まって来る。どの顔にも不安や悲しみといった表情をしていた。大丈夫だと伝えようとしてみるが声も出せない。


(声も出せないし……身体も頭も動かない……大丈夫よリリィ……そんな顔しないで……少し休むだけだから……しんぱい……………)

私はこの世界に来てから二回目の意識を手放した。









「んっ……んん」


私が意識を取り戻したのは誰かの寝室。いつの間にか着替えさせられていたようで寝巻き用の服に着替えさせられていた。窓から外を見てみるとどうやら日が昇り賭けている。どうやら一夜寝込んでしまったみたいである。


「確か私は……」


倒れる前までの行動を思い出す。連続でロコモールとヒプノバリスを唱えまくっていててそれで倒れたんだったんだ。リリィたちには心配をかけてしまったかも。そう思いとりあえず部屋から出ようと思い扉に手をかけようとするとひとりでに開きそこにはリリィがいた。私の食事を持ってきてくれたようであった。


「リリィ……」


食事を机に置くと何も言わずにリリィは私に抱きついてくる。私はそっと抱きしめ返す。


「ごめんなさい。心配かけたでしょ?」

「いいえ良かっだです!わだししんばいでしんばいで」


声からして相当心配していたのであろう。頭を撫でると不安そうだった顔に笑顔が戻っていた。


「さてと十分休んだし残っていた子たちも……ぐわぁ!」


女性がだしてはいけないような声がでえてしまったがそれもそのはず、リリィが私のことをベッドへ押し倒して寝かしつけたのである。


「ダメです。アユリ様は魔力を枯渇するまで使い切ってしまいました。一度使い切ってから回復するまで少なくとも一日は安静にしてください。町の方はライラさんが守ってくれていますしラサ姐さんや私、他のゴーレムたちでやれることはやっておきますのでゆっくりと休んで下さい。いいですね」


私が気に押されて頷くとリリィは部屋を後にする。もちろん部屋の鍵をかけていく。それでは足りないと感じたのだろうかドアの外からドスンという音が聞こえた。扉を開けたとしても私は出られないようにされて密室へと閉じ込められてしまったのである。窓から下をみると灰色の人影がチョロチョロと動いているのがみえた。


「はぁ……しょうがないね。今日一日はゆっくりと横になろうかしら」


ベッドへ再び寝そべり眼を閉じる。私はよっぽど疲れていたのか直ぐに夢の世界へと旅立った。


夜になっても出てくる気配のない私を心配したのか翌朝泣きつかれたのであった。

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