第十三話 究極チャンネル
ワシは究極のテレビとリモコンを開発した。その機能とは、1から12のチャンネルに映せる景色、情報、番組を自由に決めることができるという革命的なもの。まさに究極だろう。ワシはそのリモコンをテレビに向けて、「1」チャンネルを選択した。
『悔しくて……死にそう……』
このチャンネルではワシの大好きなバラエティやドラマ、アニメなどが常に放送される。今は丁度アニメをやっているようだ。ワシの彼女が吹奏楽をやっていたのをきかっけに見始めて好きになったアニメ。ワシは何分かそれを見た後に、「5」番を選択する。
ここではワシの好きなロックバンドのライブ映像が放送されている。激しいギターサウンドが気持ちよく響く。次に「9」番を選択した。「9」番ではワシの行きつけのお店の店内がライブ中継される。これを見れば店に行かなくてもお目当ての商品が売っているかすぐに確認することができる。
「2」番では自分の推しているスポーツチームの試合映像が、「3」番では好きな動物の映像が見られる。
「……我ながら、最高のテレビだな」
あまりの出来に惚れ惚れしていると、家のチャイムが鳴る。ワシが玄関の戸を開けると、友人が訪ねてきた。
「よっ。遊びに来たぜ」
「いいよ。上がって」
ワシはチャンネルを「6」にする。「6」には客人が今家にある飲み物の中で何を一番欲しているのか教えてくれる。
「お前、昼からビールかよ」
「あはは、バレちった」
友人は笑うと、ビールを取りに行こうとしたワシの目を盗んでチャンネルを変えようとする。ワシはすぐに振り返り、その友人の行動を監視した。
友人は迷わずに「4」番を選択した。ここには次の大学の期末試験の解答が表示される。お前、初めからそれが目的かよ。
ワシは友人の前にビールを置くと、二人で「10」番のチャンネルを鑑賞した。ここでは現在公開中の映画が見れる。見終わると、「8」番にチャンネルを変えた。
「8」番では少しえっちなビデオが見られる。ビールで酔っているからか、友人は終始気持ちわるくニヤニヤとして、下品な笑い声をあげていた。
「今日は楽しかったよ! じゃあな」
ワシは友人が帰った後、「7」チャンネルを視聴した。「7」番はカラオケ。好きなイントロが流れ、歌詞が表示される。ワシはカラオケを1時間ほど楽しんでから、「11」番を選択する。「11」番は彼女の家の中のライブ中継。彼女の着替えも、お風呂も全てがワシに筒抜けである。夕食を食べながら、彼女の生活を眺めるのがワシの日課だ。
「本当にいいテレビを作った」
そう思ったのも束の間、ワシの携帯がうるさく震え出した。見てみると、通販サイトで500万円以上の請求が来ていた。
「どういうことだ……!? 何が起きている!?」
少し考えてから、ワシはピンときた。静かにテレビに「12」番を表示させる。
「……あいつか」
「12」番にはどんな情報も表示させることができる。
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