第十二話 こだわり

 僕にはマイルールがある。こだわりって言った方が通じやすいかな? 僕は深夜零時に空中にいたい人間だ。日付が変わるその瞬間、決まって僕はジャンプをする。年が変わる一月一日にジャンプをする人がいるように、僕はそれを毎日続けているってワケ。今日も深い夜が訪れ、時刻は23時56分。迫る零時に向けて僕は真剣に時計の秒針の動きを目で追っていた。


「よし、行くぞ!」


僕は膝を曲げて飛び、着地する。その瞬間に、時計の長針と短針が重なった。成功だ。


「はぁ〜、気持ちイイ」


このこだわりが満たされると、最高に気分が良くなる。なんだろう、この瞬間にこれをしている人が絶対いないとわかるからこそ、自分だけが特別だと感じることができる。その快感がたまらないのだ。


 ある日、事件が起きた。それは修学旅行の話し合いをしていたとき。今まで、小中と僕は修学旅行を休んでいた。だから何ともなかったが、高校の修学旅行では班長を任されることになってしまった。これでは休むことができない。無理に休むと印象も悪くなってしまう。


だがしかし、僕が修学旅行に参加すると臭くなってしまうだろう。それはあまり好ましくない。だが、僕には強いこだわりがある以上、これを止めることはできない。僕は挙手をした。


「先生、修学旅行にペットを連れて行ってもいいですか?」

「いいわけないだろう。ペットはお留守番だ」


やはり許可しては貰えなかった。残念だ。なら、気は乗らないけど、こっそり連れて行くことにしよう。


 修学旅行当日。僕は空港にやってきた。先生からチケットを受け取り、そのまま手荷物検査へ。僕は荷物をコンベアに乗せ、それをエックス線にかけてもらう。すると、すぐに大きな悲鳴があがった。


「きゃぁぁぁぁぁ!」


先生は慌ててその場に駆けつける。


「どうしました!?」

「な、何か死体のようなものが……!」


すぐに僕の鞄は調べられる。中には犬の死骸が入っていた。内臓が飛び出ていて、とてつもない悪臭が広がる。


「おえぇ……。お前、何持ってきてるんだ!?」

「僕、深夜零時に大好きだったポチを思いっきり踏みつけたいんですよ。これが僕のこだわりです」


大好きだったものが僕によってその形を崩していく。日に日に醜くなっていくポチの死骸を眺めるのが気持ちよくてたまらない。


ポチが処分されたら……次は誰にしようかな。

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