ミステリアスな店長さん

「そのラブホの話って、店長の実話ですか?」


 続く店長の話を聴いていると少々気になってしまったので、野暮だと知りながら訊いてみた。店長は嫌な顔せず、それに答える。


「ええ、まあ」

「へぇ、店長もなかなか熱い恋愛してるんすね」

「私とて人間ですからね。恋愛のひとつやふたつ、経験しておりますよ」


店長はこれまでに色々な視点で話をしてくれた。実話……中にはフィクションも含まれているのだろうが、俺はそれに確かに惹きつけられていた。これほどまでに惹き込まれる話をできる人を俺は他に知らない。店長の話はどこかミステリアスで、それでいて面白かった。話の魅せ方がとても上手い。


「店長っていつからこの店やってるんですか?」

「……それはお答えできません」

「そうですか。見た感じとても綺麗な店だから、最近かなと思ったんですがね」

「店は最近ですが、この夜咄はずっと続けております。誰かの心の支えになればな、と思っているのでね」

「ふぅん、まあ確かに。店長の話がなかったら、俺も今頃凍え死んでたかもしれないですしね」


俺は背後を振り返って、店の窓を眺める。依然として、吹雪は吹き続けていた。というより、勢いが増している気がする。


「逆に、お客さんは何の仕事をなされているんですか?」


その店長の一声で俺は視線を窓から正面へ移す。


「仕事……ですか。普通に営業ですよ。ブラックでしんどいっすけど、友人の話を聞く限りはどこも同じような感じですね」

「『満喫・夜咄』はそんなお客さんの味方です。是非とも引き続き私の夜咄に付き合っていただけると幸いです」

「ああ。まだ夜明けまで何時間もある。店長の面白い話、期待してますよ」


店長は少し口角を緩めると、再び語り始めた。

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