第十話 ラブホテル
立っていられないほどの強風が吹いた。雨も強いし、これはやばいな。俺は友人とともに夜の街を走り回り、やっとの思いで雨宿りができそうな場所を見つけた。
「ねぇ、○太くん。ここって……ラブホだよね?」
友人は頬を赤らめて訊いてきた。女性ということもあって少し恥ずかしく感じているんだろう。だが、俺に限ってそんなことはあり得ない。
「安心しろ、何もしないさ。俺には彼女だっているんだしさ」
「うん、だよね」
俺は友人を連れて受付をした。ルームキーを渡され、廊下を歩いていると、ガタイのいい男の人とぶつかる。
「痛っ。ごめんなさい」
俺は頭を下げて、そのまま部屋に入る。すぐにベッドに座って、ほっと長めの息を吐いた。
「悪いな、彼女のプレゼント探すの手伝ってもらって。その上こんな天気になってさ」
「ううん、いいの。私だって二人のこと応援してるし」
「もう遅いし、お前先に寝てていいぞ。一緒に寝るわけにもいかんし、俺は起きてるから」
「いやいや、せめて交代で寝よ? なんか私だけ申し訳ないよ」
友人にそう言われて俺は軽く頷いた。本当にいい奴だな。そう思いながら俺はテレビの電源を入れる。テレビでは暴風雨注意報が流れていた。これ、本当に帰れるのか? 浮気と誤解されるのを恐れ、知り合いのいない遠くの街にまで繰り出していただけに、そのニュースを見て不安になる。
それと同時に部屋の扉がドンドンと強くノックされた。覗き穴からその人物を見てみると、そこには俺の彼女の姿が。やべぇ、修羅場だ。
「ねぇ、あんた何他の女連れてんのよ!」
強引に扉を開けた彼女がそう怒鳴ってきた。
「違う、誤解だ! 俺はお前のプレゼントを買ってたんだよ!」
「信じられない。あんたがラブホに来てるって聞いたけど本当だったのね」
彼女は怒り心頭で俺の部屋から出て行った。その様子を見ていた友人は最後にボソッとこう言った。
「今すぐ別れた方がいいよ」
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