第九話 雨

 雨の日は気分が乗らない。だって、周りがいつもより暗くなるし、ジメッとするんだもん。


「ねぇ、康平くんは雨好き?」

「はあ? まあ、迷惑だわな。俺の野球部の大会も雨のせいでなくなったしよ。お前だって、テニス中止になったんだろ?」

「うん……そうだね。ほとんどの部活が中止になって、みんなも悔しがってたよね。でも、本当に雨という存在がなくなったら、素直に喜べないよな」


この世には雨を必要としている人だっている。そんな人たちに今の僕たちの会話を聞かせてしまったら、きっと怒られてしまうだろう。


「これからも雨の日はこんな沈んだ気分になるんだよね」

「ああ。だが、もう俺は気にしないぞ。雨の日だろうと野球を続けるだけだ」


そんな日でも野球をするなんて、すごいな康平くんは。


「僕はそんなに強くないよ、康平くん。やっぱり……まだ立ち直れないや」


インパクトが強すぎた。この衝撃が更新されることはこの先一生ないだろう。


クラスメイトの雨が自殺した。

今日はその命日。

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