第三話 ドーナツの穴

「ねえ、知ってる? ドーナツの穴を覗くと、未来が見えるらしいよ」

「はあ? ナニソレ、チョーウケルンデスケド」


アタシたちはオキニのドーナツ屋さんでそんな話をした。それに釣られて、初めにミキが持っていたドーナツの穴を覗く。


「見えた! 私ね、将来独身で、借金にまみれて、でもなんやかんや幸せみたい!」


すごい反応に困る未来だな。まあ、本人が幸せならいいのか。


「それで、ミワコに保証人になってもらって大迷惑かけるみたい! ごめんね!」


前言撤回だ。アタシに飛び火してるんじゃねぇか。どうにかしろよ、ミキ。次に、サラがドーナツの穴を覗く。


「ウチはね、有名なYouTuberと付き合ってるって!」

「えぇー! すごいじゃん、サラ! 私、ずっとサラと仲良くして将来そのYouTuberにサインもらうね!」

「仕方ない。ウチのダーリンに書かせてあげよう」


何様だよ。ミキもそれに尻尾振るんじゃない。


「でもね、ウチ、そのYouTuberと喧嘩しちゃって、仕返しに私の友人とそのYouTuberを浮気させて、その上で私が妊娠することでそのYouTuberの人生終わらせるんだ」


ただのゴミ野郎じゃねぇか。


「それで、そのうちその社長さんも飽きちゃって、ホスト通い。そこでお持ち帰りして一夜を過ごすの。で、最終的には幼馴染とホストと社長の三股。後にYouTuberとも復縁するんだー」

「いいなぁ! 私も色んな人に愛されたい!」


コイツらの感性イカれてんのか? それとも、逆に私がおかしいのだろうか。とにかく、砂糖まみれの甘いドーナツからこんなに美味しくない未来が見えるもんなのかね。


「ミワコはどんな未来が見えるの?」

「あ、私も気になる! ミワコ、私たちの中で一番JKっぽいから、きっとキラキラした大人になるんだろうなー!」


ミキとサラに言い寄られ、私は満を辞してその穴を覗いてみた。見えたのは単純にミキとサラ。所詮はただの穴だ。未来なんて見えないし、向かいに座る二人しか見えるわけないだろう。


「どんな未来だった?」

「ん、あんたらと絶交してる未来だったよ」

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