vsジュラルタイガー、ダークエルフとの出会い
僕達は予定通り早朝から軽い朝食を済ませて出発する。
「牛乳が欲しくなるなぁ」
朝食の際、僕はふと思った。するとセフィ姉さんは言う。
「この世界には牛はいないわよ?畜産自体がないのよね。昨日の晩御飯とか多分世界一のご馳走なんじゃないかしら。米もないし」
自分達がどれだけ恵まれているか再認識した。
「みんなが美味しいものを食べれる様になればいいね」
僕は何となく言った。
「普通は大それた事だと言う所だけどエルくんなら出来ちゃいそうよね。
まぁ焦らず無理せず楽しく行きましょう♪」
そう、今の僕にはその気になればそれに近い事が出来てしまうのかもしれない。
「そうだね。じゃあそろそろ出発しようか」
僕は少しよぎった困惑を無視して、予定通り出発する事にした。
「行ってきます♪」
ハクは元気よくセフィ姉さんに挨拶をする。
「いってらっしゃい♪」
そしてセフィ姉さんはそれを見送った。
予定通り、昨日帰還した場所から僕達は東へ向かって真っ直ぐ走り出した。
昨日よりかなりハイペースで進む。
途中索敵した敵も基本は無視して駆け抜ける。
意外にも追いかけて来る敵はいなかった。
森をもうすぐ抜ける頃、今までと違う反応が索敵にあった。
「サーチに黄色の反応と赤の反応が近接してるんだけど
赤は魔物だろうけど黄色は何だろう?」
僕はセフィ姉さんに質問する。
『黄色は他種族の人よ。交戦中かも。
ここらで人がいるとすればダークエルフのはずだけど』
「助けた方がいいかな?」
状況が分からないので何とも言えないけど。
『ダークエルフは戦闘力が高くて温厚な種族だから仲良くしたいし
助けが必要そうなら助けたいわね』
「よし急ごう!」
僕達は急いで反応のある場所へ向かった。
視界に入った、一目見てピンチだと分かる状況だった。
敵は3m近い白い虎。
ダークエルフと思われる人は怪我をおい、まさに止めを刺されそうになっていた。
まずい!
まだ距離がある。
僕は脚にマナを限界以上に込める。
脚に激痛が走り急加速する。
足は暫く動かなそうだ。
足を犠牲にしたおかげでギリギリ間に合った僕は・・・
今度は両腕にマナを込めてそのままの勢いで虎の首に剣を思い切り叩き込む。
不意を突いた攻撃は上手く首に直撃した。
剣はクビに3分の1ほど食い込み、
そのまま振り抜こうとしたが衝撃は両者を弾き飛ばし、
互いに逆方向へ10mほど吹っ飛ばされた。
「脚と両腕が暫くダメっぽい。ハクあと宜しく!」
「わかった」
戦闘になるとハクは本当に頼りになる。
ハクは虎が飛ばされた方へ追撃をかける。
不意の一撃で大ダメージを受けた虎は動けずにいる。
そして、美しい剣技でハクの連撃が入る。
虎はなす術もなくHPを全て削り取られ、一瞬にして勝利した。
「何とか間に合ってよかった。大丈夫ですか?」
僕はようやく手足が動く様になり、ダークエルフと思しき女性に話しかける。
「大丈夫、、、で、、す?」
女性は大分混乱してる様だ。
「僕はノエルと言います。この子はハク。
もう一人セフィって人がいるんですけど別行動してます」
とりあえず自己紹介をして様子を見る。
「えっと、私はリノンと言います・・・」
少し落ち着いたみたいだけどまだ警戒してそうだ。
それでも続けて話し始めた。
「助けて頂きありがとうございます。えっと、、、、え?18万!?
人族??-7100??」
ステータスを見たんだろうなぁ。また混乱してしまった。
「とりあえずHP回復しちゃいますね」
僕はヒール?を使い回復した。
HPが4分の1くらいだったから本当に危なかったみたいだ。
ついでにステータスを確認すると・・・
え!?lv380?この人すごい強い?
「え?ヒール?なんだか普通のヒールと違う気が・・・」
ヒール?を受けたリノンは普通と違うヒールに困惑していた。
やっぱり普通と違うんだなぁ。
「えっと訳あって気付いたら森の中にいまして、転移失敗?みたいな事で
それでやっと森を出れそうな所あなたが虎に襲われていたので
助けに入ったみたいな感じです」
とりあえず、こっちの事情を伝えてみる。
「えっと、本当にありがとうございます、死を覚悟した所でしたので。
あの、そのステータスは一体?」
そりゃ、気になるのも無理はないよね。しかし・・・
「このステータスは、何というか僕もよく分からないと言いますか・・・」
どうもこうもう説明しようがないのだ。
転移者でステータスエディットの裏技でこうなりました、
とは言えないよね・・・。
「詮索してすいません!助けて頂いたのに」
リノンは色々と察してくれたのか気を遣ってくれた様だ。いい人そうだなぁ。
「気にしないでください。むしろ気を使わせてすいません」
こんなやり取りをしている内にリノンさんは少し落ち着きを取り戻したのか
少し穏やかな表情になった。
「もし良ければ、近くの私達の村に案内させていただけませんか?
村の脅威だったジュラルタイガーを討伐して頂いたお礼もしたいのです」
有難い申し出だ。
「実はそちらの村を僕達は目指してたので案内してもらえると嬉しいです」
僕は素直に答える。
「よかったです。そちらの竜人族の方も凄い強さでしたね」
ハクの事を褒めている。なんだか自分のことの様に嬉しい。
「ハクと言います。訳あって一緒に旅をしてまして」
僕はハクを紹介する。
「ハクですー」
少し警戒しているのか、棒読みで返事をした。
そう言えば僕達以外の人は初めてだもんなぁ。
「ハクさん先程はありがとうございました」
リノンは微笑みながらお礼を言った。
「うむ。くるしゅうない」
ハクは少し警戒を解いて返事をした。
しかし、えらく古風な言い回しを・・・どこでそんな言葉覚えたんだろう?
いや姉さんしかいないけど。
「本当に感謝します」
リノンは深々と頭を下げて優しく微笑んだ。
とりあえず僕達は倒した虎を回収して、リノンとダークエルフの里へ向かった。
ちなみに調べて見ると虎は何とlv400だった。僕達、よく勝てたなぁ。
おかげでハクのlvはlv301まで爆上がりしていた・・・。
・・・僕、次の模擬戦で死ぬんじゃないかな?
複製体だから平気だけど・・・なんかヤダなぁ・・・。
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