前進?ゾンビアタックで気付けば農家

 あれから1ヶ月後、僕達は未だにホームで生活していた。


 何もしていなかった訳ではなく色々と試行錯誤はしている。


 まず神殿到達報酬で貰ったSPを利用して筋力強化lv1を、

複製体に付与する事に成功した。

 

 そして光竜の指輪(筋力+10)を21個複製して装備。

 (特殊装備は根源値15で1個装備出来る。)

 これで筋力110で筋力強化lv1を使用出来る様になった。


 他の光竜装備は付けてはいるけどどうせ一撃で死ぬ。

 ちなみに死んだ時、装備していたアイテムは素材庫に戻るようだ。


 基礎能力を上げるための筋力トレーニングも欠かさず日課としている。


 それと、ホームの時間設定を10分の一に設定する事で

思考加速10倍と同等の効果を得る事に成功した。

 思考加速スキルの上限が5倍なのでかなりのチートだ。


 これらのお陰で光竜の初撃ブレスをかわす事に成功した僕は、

光竜の間に転移ポイントを作りまくった。

 今では光竜の間を縦横無尽に転移する事が出来る。


 転移はセーブしたポイントに自由に行き来出来る。

 ホームの転移機能を複製体に複製した結果だ。


 こうして、飛躍的な進歩を遂げた僕は突破口を見つけた・・・

 かと言うと実はそんな事も無かった。


 攻撃はギリギリ光竜の防御を超えただけでダメージはあまり通っていない。

 最強の戦闘AIは伊達じゃなく同じ戦法は通用しない。

 少しでも油断すると一瞬で死ぬ。


 まだまだ先は長そうだけど、それなりに充実した生活を送っていた。


 ちなみにセフィ姉さんは毎回、ホームに作ったモニターで観戦している。

 モニターは転移可能な場所を映すことができる。便利だ。


・・・


 今日もいつも通りの朝を迎える。


「私に何か変わった所はないかしら?」


 何か気づいて欲しそうな様子でセフィが聞いてきた。


「何も変わって無いんじゃないかな?少し太った?」


 僕は適当に答える。


「デリカシーがないわね!髪よ、髪!」


 セフィ姉さんは怒りながら自分の頭を指さした。

 言われても何も変わってない気がする。


「全体的に2センチほど髪を短くしたのよ!」


 2センチなんて分かるわけないじゃないか。


「そうゆう所だぞ!男の子は女性の変化に敏感じゃなきゃモテないぞ♪」


 なんて事ない、いつものやり取りだ。

 この生活にも随分と慣れて来たなぁ。


「今日もハクに挑戦して来るよー」


 僕はいつものように出かける準備をする。


「名前なんてつけて、愛着持っちゃってどうすんのよ」


 セフィ姉さんは、ため息をつき呆れた様に言う。

 ハクとは光竜に勝手につけた名前だ。

 一日一回殺されてる相手に愛着も何も無い気がするけど、

なんだかんだで、この名前は気に入っている。


「今日はもう一本柱を取って来るよ」


 非破壊オブジェクトの素材は重宝する。

 長丁場になりそうなので光竜の間の柱も収納出来ないかと試したら出来た。


「ついでに庭にコッコの卵があったら収納しといて♪」


 コッコとは唐揚げ弁当の鶏肉から複製した鶏の事だ。

 魂は無いらしいが愛着を持って育てていると魂が宿ることがあるらしい。

 食べる時、心が痛むからやめなさいと言われたけど、

コッコと名付けて庭で放し飼いにしている。

 実は僕の筋力強化スキルはコッコから複製した。


 因みにセフィ姉さんのスキルについてだが・・・


「セフィ姉さんってどんなスキルが使えるの?」


 僕は期待して聞いてみる。


「加工スキルを少々」


 まるでどこかのお嬢様がお琴を少々みたいにおしとやかに言う。


「他には?」


 まさかとは思ったけど・・・


「無いわ!キリ」


 いつものドヤ顔で返事が返ってきた。


 言語理解スキルすら僕らにはない・・・ここから出た時大丈夫なんだろうか?

 まぁ、出られないんだけどね。


 コッコの他にもトマト、ジャガイモ、にんじん、玉ねぎ、キャベツ、レモンなどに加えて、米に小麦粉、海苔に梅干、調味料に醤油、お酢、塩、胡椒、砂糖、サラダ油、酒、お茶など色々なものがお弁当から復元できた。種も作れたので庭で栽培もしている。


 農家かな?


 セフィ姉さんが唐揚げ弁当だけでは飽きたと騒いだのが原因だ。

 ちなみに石油製品や化学製品は複製出来なかった。


 ホームは前世の記憶を頼りにセフィ姉さん好みの家具や家財をエディットした。

 前世で可愛がっていた野良猫のミケの毛並みを思い出して作ったカーペットと

毛布はセフィのお気に入りだ。


 攻略の糸口は一向に見えてこないが、

衣食住がどんどん充実していっている気がする・・・。

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