花散らしの雨

愛美

自分磨き

 あれは、ある夏の日のこと。

自分に自信のなかった私は、周りからの罵倒に必死にもがいていた。

小さな抵抗を見せようと、真っ青な膝丈のワンピースを着た日、

あなたは、少しずつ散らしていった。

私の花という花を―



 爽やかな空気が漂い、良い雰囲気に包まれた社内。

優しい上司に、頼りがいのある先輩。

なにもが完璧な会社に入る。

「つもりだった」

半年前、私、柳瀬朝陽はそこそこ良い大学を卒業し、就職活動に努めていた。

だが、どの会社も私を見た瞬間嫌な顔をして、ける。

そんな中で、死に物狂いでとった合格。

それが今の会社なのだが…

なんといっても社内の雰囲気は悪いわ、鬼上司はいるわ、先輩達から、

持ち前のダサさをいじられるわ、災難な日々を送っている。

 ある日、社内で唯一私を気にかけてくれる同期の七海に、屋上で相談に乗ってもらった。

「私って、ダメダメだよね。地味で仕事も遅いしさ」

「なにいってるの?!地味ってのは確信ないけど…」

やはり、自分は地味なのかとおもうと、少し悔しかった。

「朝陽、イメチェンしようよ!自信ないなら自分でつければいいじゃん」

「私にできるかな?」

「できるよ!」

七海のときどきでる、自信満々な少女っぽさには、毎回驚かされる。

でも、やってみたいといういつもと違う感情もあった。

「わかった、やれるだけやってみる!」



 次の週末、私はショッピングに出かけた。

普段は来ることのないような、大きなモールだった。

モールを目の前にすると、急に心拍が速くなった。

進むしかないこの状況で、私は覚悟を決めた。

 モールの一角にある小さいながらもおしゃれ感があふれるこの空間で、

私は、なぜか一つのワンピースから目が離せなくなった―

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花散らしの雨 愛美 @hubuki0610

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