第2話 時間もヤバいが店長もヤバい

 彼女をのせてから約10分荒く呼吸しながらも目的地の小夜曲セレナーデに到着した。

 おそらくこの短い人生の中で一番全力で自転車をこいだだろう。

 学校に行って智樹に会ったら自慢してやろう(自慢にはなりません)。

「あの乗せていただきありがとうございました。おかげで遅刻は免れました」

「いえ、だひぃじょうふでぃすよぉ。はぁかばひほうじひぃでぇしたかぁ」

「あの疲れすぎてて何言ってるかわかりません」

 そうですか、わかりますとっても。

 だって自分でも認識できない言語ですから。

 自分で言っててわかんないのに聞き手の貴方がわかるはずないですよね。

 もしわかっていたら読心術どころの騒ぎじゃないですね。

 ゴールデンタイムのテレビ番組出れる才能です。

 ちなみに『いえ、大丈夫です。半ば自暴自棄でしたから』と言いたかった。

「あっとりあえず店長にこのこと伝えてきますね!落ち着いたら店に上がってください。店長見た目はあれですけどすごくいい人ですから!」

 おお、ありがたい俺のためにそんなことしてくれるなんて...。

 ストーカー(仮)から昇進したもんだ...あれこの言い方じゃ本当にストーカーなってるな。

 俺の日本語力よ...。

 それよりも早めに店に上がらなければな。

 あまり待たせるのもよくないだろう。

 荒げていた呼吸は精神的に冷静になったおかげか落ち着いてきていた。

 深呼吸をしてさらに落ち着ける。

 体の体温が上がっているのを感じつつ心は完全に静まっている。

 適度なパフォーマンスになったと思えたところで店の扉を開き中へと足を進めた。


 店に入ると視線の先に彼女がいた。

「おっきたね~。こっちだよ!」

 そう言って手を振ってくれる。

 反射的に手を振り返し、そこに向かって足を進める。

 すると奥のほうにとてもごつい?デカい?何かが見える。

 一歩一歩近づくにそれは色や形がはっきりしてくる。

 いや、それはものではなかった...。

 そこには身長は2メートルあるのではないかというほどの高さに相撲取りと同じぐらいの体の大きさそれの上にまさかのヴィクトリアンタイプのメイド服を着ている...人間!

 ものではなく人という名のモンスターか何かだった...。

「いらっ~しゃぁぁぁぁぁぁい♡あらぁかわいい子が入ってきたわね!ちゅっ♡」

 投げキッスされた...声色でわかる男だ。

 キッぃぃぃィィィィィぃィぃぃぃィぃぃぃぃモい!!!

 額から汗が流れる。

 何故だろう緊張?恐怖?わからないけどからだが震えてきた。

 俺という存在だけ氷河期に放り込まれたような感覚だ。

 なんでこのような珍獣が店長していてバイト雇えるほどの余裕ができる運営ができるんだ...。

 いや、もしかして手が回らないから...?

「あら?もしかして何でこんなのが店長の店にバイト雇えるほどの余裕がある経営できるんだとか思ってない?」

「...」

 あれ?こころ読まれた?なんで?実際経営とかしたことないながら結構上から目線のこと考えて申し訳ない...って考えようとしたところにまさかの読心術?読心術なのか?

「あら?何でわかったのか?って顔してるわね」

「え...なんでそんなわかるんですか?」

 もう、深く考えるのはやめよう...きっとこの人は本当に人外なんだろう。

「ちなみに経営の話はそこのゆいちゃんが私にあって開口一番に言った言葉を言っただけよ」

「え?そうだったんですか」

 よかった人外じゃなかった。

 宇宙人との邂逅はまだ早いらしい。

「そうよぉ、私読心術とかできないものぉあっでもここの経営が成り立ってるのはねもともとここがね、


‘‘ゲイバーだからよ‘‘


「は?マジっすか?その常連がいっぱい来るということですか?」

「そう、まぁ嘘だけどね」

「はぁ!?」

「ただ私の作るすべてが一級品なのよ」

「わかりにくい冗談つくなよ!?」

 この外見からゲイバーとか言われたら普通信じるだろ。

 なんだよこの人!?テンションから服装まですべて理解できねぇよ!!!

 反応に疲れるわ!!

 それより何か忘れてないか?

 めっちゃ本気で自転車こいだ理由...なんだっけ?

「あっ忘れてたわ面接しましょ」

「あっはい」

 そうだそうだ面接だ...店長も忘れてやがってたな。

 まっ一番忘れたらいけないの俺なんだけどね!!受ける側だから!!!

「椅子とか用意するのめんどくさいわね...まぁいいわこのまましましょ」

 それでいいのか...適当過ぎやしませんか?

「とりあえず私が聞く質問に答えなさいそれで合否出すから」

「わかりました」

 さて、どんな質問がくるんだろう。

 今日のために喫茶店や居酒屋、パチンコ店もちろんバーの面接のことを調べて理由なりなんなり考えてきた。

 今の俺にはよほど特殊な質問が来なければ大じょu...

「ここを受けた理由ぅぅぅううう。対策したやつなしなぁ!!本音聞かせろやぁ!!!」

 ohぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!

 なんでそんな質問してくんだよぉ。

 何?頭狂ってるの?こんな質問普通ねぇだろぉぉ!?

 いままでコンビニとかうどん屋とか受けてきたけどそんな質問の仕方ねかったぞぉ!?

 もういい、結果なんて知らね!いいじゃねぇか!自暴自棄再来だこん畜生!!!

「遊ぶ金欲しいからです!!!高校はいって友達増えてお小遣いじゃ賄えない分どうにかするためですよぉ!!!」

「いい理由じゃねぇかぁ!!!次!私をみておもったこといってみろぉぉおお!!!」

「始めは化け物だと思いましたぁ!今はテンションヤバいただのカマにしか見えません!」

「次!男にケツ差し出せるか!!??」

「無!理!だ!」

「終わり!」

「ありがとうございました!!!」

 はい、きっと落ちました。

 もうなんにでもなれですね。

 しかも最後の質問なんだよ...ここゲイバーじゃねぇんだろ!?(そもそも風俗じゃありません)

 そもそもすべての質問がおかしいわ!!

 ここ何の店だよ関係ないだろ!?

 落ちても後悔なi...

「あっ、あなた合格ね。ちゅっ♡」

「えぇ!?」

 もう...意味わかりません。

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