きっとこれが純愛だ

星宮 穹

一章 約束

第1話 面接ヤバい

「うぉぉぉおおおおおおお」 

 俺、滝優太たき ゆうたは死にものぐるいに自転車をこいでいた。

 理由は明快、寝坊したからだ。

 バイトの面接日だと言うのに前日親友の智樹ともきと寝落ち通話なんてことしていた自分が悪いのだが…。

 だが、わかっててやめられなかった。

 いや?楽しことって次の日なんか予定とかあっても実行なり継続なりしたくなるのが人間のサガだと思うね俺は!

 そんな言い訳を心の中でしながら周りの景観なんて目に映らない速度で駆け抜けていた。

 いやぁ風って気持ちいいね!

 半ば自暴自棄のごとくしらばっくれかけていた。

 そんな折奇跡的、いや天文学的確率だろうか?

 面接先のバイトの制服を着た人が走っているのが目に入る。

 額に汗を流しながら呼吸が荒げな様子だ。

 あれ?俺結構一心不乱に自転車こいでるんだけどな?なんだこのストーカー並みの観察眼は...自分ながらキモイな。

 ああ、そうか俺今半ば自棄ってるようなもんだもんな!もうそういうことでいいや今自分がキモイ理由...。

 ははっもうついでだ、この精神的な勢いであの人に声かけちゃお。

 遅刻しそうな職員の手助けしたほうが相手の心象もいいでしょ!(今思いついた適当な言い訳)

 急ブレーキをかけて自転車をその人との10m先くらいで止め、相手に目を向ける。

「すみませんそこの人!もしかして遅刻しそうですか!?」

「え!?」

 突然声をかけたためか相手の人は驚いた声を上げながら立ち止まる。

「あっあのすいましぇ、あっいやすいませんあっあの私急いでるんです!ナンパとかあのちょっとほんとに...」

 あっあれ?何?ナンパだと思われた?ヤバいじゃん、誰だよ突然声かけようぜと考えたやつ!俺ですね...なんか自分のバカに付き合わせてるみたいな感じがして申し訳なくなるな...。

 ってあれ本題って...そうだそうじゃない本題は遅刻しそうなら自転車乗りません?だ。

 そう、ここは相手を不快にさせないように...あっ、ちらっと時計見たら遅刻確定だ!

「あっいやその、あっその制服!小夜曲セレナーデってバーのものじゃないですか!?俺の自転車乗りません!?」

 よし、少し出だしグダッたがちゃんといえt...

「えっ?あっあの何で私のバイト先がわかるんですか!?もっもしかして実はストーカーだったんですか!?」

 あれ?何で今度はストーカー!?なんか言い方間違えたぁぁぁぁぁぁあああ。

 いや、ここは落ち着こうフリーズ、フリーズ。

 思考に走っている熱を冷まし冷静に考えていく...あっ何故小夜曲行くのか言ってなかったな。

 突然店だけ知ってる他人に声かけられたら怖いわ、というこの人俺と同い年ぐらいの女性か。

 その女性...同い年ぐらいだし彼女としよう。

 彼女を驚かせてしまったのは申し訳ないな。

 だが、俺はここで『すいませんでした』というわけにはいけない...もう、面接には遅刻確定だからな!!!

 何かしらあそこに恩を売っていくしかない!!!(そんなわけありません)

 とりあえずここで訂正入れていくしかないだろう。

 俺の選択肢はそれしかない...。(自分で少なくしてるだけ)

「あの!ストーカーじゃありません!!ただの遅刻確定の面接予定者です!!!」

「それ!私に声かけてる場合じゃないんじゃないですか!?」

「売れるわけないけど恩売るためです!!」

「売れないってわかってるじゃないですか!?」

「そうですね!!!」

 これでいい...相手からストーカーとか犯罪者予備軍に思われないならそれでいい!

 あれストーカーって予備軍じゃなくて実行犯では...?

「あ、あの!私が遅刻しそうなのを声かけてもらって自転車乗せてもらったことにしますから早く行ってください!」

 彼女から助け舟?だろうか嬉しいお言葉がかかるが素直にというかそれでは意味がないんです...。

「ありがとうございます!でも...」

「でも?どうしたんですか、早く行かないと...」

「でも、それだったらあなた乗せてないと来る途中でどっかで降ろして放置した鬼畜野郎に俺なるんですよね!!」

 だってそれ言う人が僕より遅く着くのあまりに不自然じゃん、というか先言ってもらわないと順序的にダメなんだ...。

「そうですね!!じゃあ乗ればいいですか!?」

「それが一番助かります!!」

 あっやっと乗ってもらえる...。

 これで恩が売れる(売れません)。

 彼女が自転車に乗ると今日一番に足に力を込めてペダルをこいだ。

 

 

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