『直近のベスト・アイテム』

ちょうど話題が尽きてきたところだし、ものの話をしよう。

某プラットフォーム系配信者たちがこぞって商品紹介したがるのにはわけがある。

その先蹤に倣うのだ。


さて、今日日手にして就中満足した品はなんだろうか。

かくのごとく思料にふけった結果、思い当たるのがひとつあった。

ふくだ。お洋服だ。Issey Miyake HOMME PLUSSE──その名前である。


出し抜けに仰々しい文字列がでてきたな、とお思いやもしれない。

私はそう思う……面目ないかぎりだ。

ところで、ここに名誉のためお断りするが、べつに気取って御仏風の呼び方を採用したのではない。


正式名称がこれなのだ。

すでにご承知のことと目するが、この響きにしてわれら日本のブランドである。

わたしは商品に敬意を表明したにすぎない。


HOMMEとは、メンだとか野郎を服飾の本場風に言ってみた単語だ。

ようするに紳士服である。

しかしながら、その名に反してユニセックス仕様のため、実質的に性差などあってないようなものだ。


わかったよ、ドメブラで服をね、それで?

濁さず申し上げよう。

死ぬほど快適だ。


身も蓋もないけど、事実だから詮方無い。

所謂「おしゃれは我慢神話」──あれは真理だと思って生きてきた。


だって、シャツはしわくちゃになるし、コートはもろくなるし、ニットはほつれるし、デニムは硬くなるし、だいたい洗濯できないじゃん──。


オムプリッセはちがった。

まず、楽だ。とにかく楽だ。


男性ならモンペ、女性ならノンアイロンのスカートを想像されたい。

つまり……着心地は寝巻きと大差ない。

ゴム仕様でポリ100%、盛夏炎天下32度でも着こなせるだろう。


じゃあ、見た目がひどいんじゃないの?

ここが一番のポイントである。


一言に尽くすなら、部屋着をモードに振り切ったらこうなりました。そんな具合だ。

原価はさぞかし安いのだろうが、モンペをスラックスやプリーツスカート並の端正さに仕上げられては買ってしまうのだろう。


さらに自宅で洗濯でき、シワがつかない。

まるめれば携えるに易しく、出先で間違いなく重宝する。

攻守ともにぬかりなし、ちょっと感動してしまった。


お値段は決してファストファッションのようにいかないが、単なるみてくれにとどまらない価値がある。

日常に寄与するという意味で、ふと手に取ってしまう魔力があるのだ。


結局のところ、人間は楽に流れる。

どれだけイカしていても、痩せ我慢は続かない。


ワンマイルウェアなる言葉があるが、その理想形がまさにこれだ。

ゆたかな普段着をお求めの方には、ぜひおすすめしたいと思う。


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陳腐陳述 @Aithra

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