先輩と私の普通の話

谷地雪@悪役令嬢アンソロ発売中

先輩と私の普通の話

「ねぇ見てアレ。女同士で手繋いでる」

「あ、ほんとだー」


 仲いいね、と続けて笑おうとした私は次の言葉で固まった。


「あーいうのマジで無理。気持ち悪っ」


 ――気持ち悪い。


「つか外でやんなよって感じ。恥ずかしくないのかな?」

「そ、そだねー」


 引き攣った笑顔で、私は友達にそう返した。友達は何でもないように次の話題に移ったけれど、私の心にはずんと重いものが残った。


 ――そうか、ああいうの、普通は気持ち悪いんだ。




 女の子の距離感は、男の子よりも近いように思う。

 小学校の頃は、男女の境がそれほどなかった。田舎だったからか、男女混ざって野山を駆け回るのが普通だった。中学校に上がると、なんとなく男子と女子で分かれるようになり、女の子はいわゆる『グループ』ができる。このグループに入れないと、学校という小さな社会では生きていけない。

 私も例に漏れず、何となく趣味の合う子たちとグループになって、ほとんどの時間はそのグループの友達と過ごした。

 友達とは仲が良かった、と思う。他愛ないことが何でも面白くて、同じ机に雑誌を広げて、小さな椅子にわざわざ二人で腰かけたりして、嬉しいことがあれば抱き合って、出かける時は手を繋いで、授業をさぼって階段で膝枕しながらおしゃべりをした。それは私だけではなかったし、誰に指摘されたこともなかったから、私の小さな社会では『普通』なのだと認識していた。

 高校に入ると、仲の良かったグループの友達とは離れ離れになった。雰囲気も田舎の中学とは違って、遠いところからも人が来ていて、少しだけ華やかな子が見受けられた。その中で、新しいグループに入った。ちょっと苦手な子もいたけれど、気の合いそうな子もいた。全員と同じように同じだけ仲良くする必要はないから、何とかやっていけるだろう。そう思っていた。


「その雑誌買ったんだ」

「うん、私これ毎月買ってるから」

「そうなの? 私今月号の特集だけ見たくてさー」

「あ、だったら」

「ね、読み終わったら貸して!」

「え? うん、いいよ」

「やった! 雑誌代浮いた~!」


 よろしくね、と言って、その子は別の子のところへ行った。


 ――一緒に読まないんだ。


 まだ休み時間はあるのに。今読んでいたところなんだから、一緒に読めばよかったのに。

 小さな違和感を抱えながらも、用事があったのかな、と思うくらいで、さほど気にしていなかった。




「でさ、昨日も彼氏とシたんだけど、あいつマジで×××が――」

「うっそ、サイテー!」

「ほんっとそれ」


 少し経つと、会話の中心は彼氏のことばかりになった。甘酸っぱい恋愛話なら喜んで惚気に付き合うけれど、生臭い話が多かったので本当は少し辟易していた。でも、女子高生というのは、市場価値が一番高い時期なのだという。恋愛に興味があるのは、多分『普通』のことなのだし、高校生ならこんなものだろう、と思うことにした。中学の頃にも教室でこういった話をする子はいて、彼女は『大人』なのだと憧れられていた。だから、大人に近づいた今の私たちの年代なら、きっと普通のことなのだ。私には恋人がいなかったから、話題を提供することはできなかったけれど、笑って頷いて同調を繰り返した。


「あたし、ちょっとトイレ行ってくるけど、一緒行く?」

「んー、後でいいやー」

「私もー」


 よく連れ立って行っているのに、今回は一人だけで行くみたいだった。それを見送って暫くすると、一人が口を開いた。


「ってかさ、アレ絶対嘘だよね」

「分かる。無理してるよねー」

「あんなデブとさ、するわけないじゃん。見栄張って社会人の彼氏とか、マジウケるんだけど!」

「あれじゃん? 学生だと会わせろって言われたら困るから、社会人ならバレないと思ってんでしょ」

「バカじゃん!?」


 大声で笑いだす友人たち。ついさっきまで、わかるわかると言って彼氏の話をしていたのに。こんなにあからさまな悪意に触れることのなかった私は、戸惑った。


「ね、ミサキもそう思うっしょ?」

「え? ん、んー……。私は彼氏いないから、よく分かんないなぁ」


 突然会話を振られて、私は曖昧に返事をした。私は、席を立った子のことが嫌いではなかった。だから、嘘か本当かも分からないことを、嘘だと断定したくはなかった。でも波風も立てたくなかったから、庇うこともできなかった。


「ふぅん」


 私に問いかけた彼女は、つまらなそうに鼻を鳴らしただけで、すぐにそっぽを向いた。嫌われたかもしれない、と胸が痛んだ。どうしよう、と思っていると、トイレに立った子が戻ってきた。


「ただいまー」

「おかえりー」

「ねー今さ、帰りにマッ●食べてこーってゆっててー」


 何でもなかった。気まずい空気も、隠すような表情も何もなく、いとも自然にその子は輪の中に戻った。さっきまで、あなたのことでわらっていたのに。

 ぞっとした。




 学校が終わって、駅までの帰り道。昼に話した通り、途中にあるマッ●に寄ることにして、限定メニューの話などしていた。昼の会話などなかったように、私も含めて、いつものように笑いながら歩いていた。


「ねぇ見てアレ。女同士で手繋いでる」

「あ、ほんとだー」


 大通りの向かい側。違う学校の制服の女子高生二人が、手を繋いではしゃいでいた。


 ――いいなぁ。羨ましい。


 私だって、中学まではああだったのに。今の友達とは、あそこまで仲良くなれている気がしない。それとも、勝手に距離を感じているだけなのだろうか。手を伸ばしたら、握り返してくれたりするのだろうか。


「あーいうのマジで無理。気持ち悪っ」


 ――気持ち悪い。


 思いもしなかった言葉が友達の口から飛び出て、一瞬息が詰まった。


「たまにいるよねー、ああいうの。可愛いと思ってんのかな? 普通にイタイだけなんだけど」

「男に相手にされないからじゃん? サミシー」

「つか外でやんなよって感じ。恥ずかしくないのかな?」


 ねぇ、と矛先を向けられて、返事をしないわけにはいかなかった。


「そ、そだねー」


 ――そうか、ああいうの、普通は気持ち悪いんだ。


 田舎の学校に居たから気づかなかった。私の狭い世界より、今の友達は広い世界から来ている。彼氏だっている。きっと、彼女たちの方が普通なんだ。だけど。

 駅前で彼氏とキスするのは普通で。教室でセックスの話をするのは普通で。グループ内の誰かがいなくなった途端、悪口を始めるのは普通で。

 女の子同士が、手を繋いでいるだけのことが、恥ずかしい。気持ち悪い。

 貼りつけた笑顔で会話しながら、私はもう、彼女たちに触れたいとは思わなくなっていた。こんな『気持ちの悪いものたち』に、触れたいなどと。




***




 暫くして、私はアルバイトを始めた。放課後の時間を潰すためだった。というのも、あれから私は友達に対して苦手意識が出てしまい、それに勘づかれたのか、次第にハブられるようになったのだ。

 明確な行動は起こさない。ついていく分には拒まない。けれど、決して言葉に返事をしない。目を合わせない。わざと置いていく。教師の目からは分からずに、生徒の目からは明らか。

 クラスメイトが哀れみの目を向けていることにも気づいていた。中には声をかけてくれる子もいたが、何でもないフリをした。今更別のグループには入れない。それに私は知っている。別のグループは別のグループで、イジメが起きていることを。

 学校という小さな社会では、うまく泳げない者は、せめて沈まないように浮いていなくてはならない。

 だから距離を取ることにした。目立たない程度にはついていくけれど、いつも一緒にいることはもうしない。放課後の寄り道もしなくていいように、予め予定を入れておく。元々高校生になったらアルバイトをしたいと思っていたから、ちょうどいい。

 飲食店だと彼女たちが来店する可能性があるので、駅から少し離れた雑貨屋にした。


「アヤさん、おはようございます」

「ミサキちゃん、おはよー」


 ひらひらと手を振ったのは、アルバイトの先輩であるアヤさん。別の高校に通う二年生で、高校に入ってすぐにこの雑貨屋でアルバイトを始めたらしい。ひとつしか違わないはずなのに、アヤさんは大人びていて、綺麗で、気さくで、素敵な先輩だった。初めてアルバイトをする私に、仕事を一から丁寧に教えてくれて、店長からも信頼されているようだった。


 ロッカーに荷物をしまって、仕事着に着替える。アヤさんは休憩用の小さなテーブルで、ぽりぽりとおやつを食べていた。


「ねねミサキちゃん、これもう食べた? 今月出たばっかのイチゴのやつ」

「あー、それ食べたいと思ってたんですよ! 帰りにコンビニで買おうかなって」

「一個食べる?」

「え、ありがとうございます! でも今着替えてるから後で」

「ほい、口開けて」

「えっ」

「あーん」


 袖を通した格好のままで固まってしまう。口元に差し出されたお菓子を、ぷに、と唇に押し付けられた。これではもう返せない。おそるおそる口を開くと、口の中にころりとお菓子が放り込まれた。


「ど?」

「……美味しいです」

「でっしょー? これアタリだよね」


 いたずらっ子のような顔で、アヤさんが笑う。私は困ったような顔で、もごもごと言葉にならないことを呟いて、結局何を返すこともなく、着替えを続けた。

 アヤさんは、距離が近い。それは私にだけではなくて、他の子にもそうするから、多分そういう人なんだろう。でも、誰からも嫌われていない。アヤさんだから、なのだろうか。他の人たちは、どう思っているんだろう。アヤさんは、どう思っているんだろう。


「やば、そろそろシフトの時間」

「えっ!」


 さすがに遅刻は怒られてしまう。アヤさんは残りのお菓子を急いで食べて、私は脱いだ制服をロッカーに放り込んで、二人揃ってバックヤードから店内に入った。


「すみません、これ探してるんですけど」

「はい、どちらでしょう」


 これなんです、とお客さんがスマホの画面を見せてくる。映っているのは、珍妙なキャラクターグッズだった。全く見た覚えがない。何となく物の配置は把握したつもりだったが、扱っている商品ひとつひとつまでは覚えていない。バックヤードに戻ってパソコンで在庫確認すればいいだろうか、と思ってメモを取り出そうとすると、後ろから声がかかった。


「お客様、どうかなさいましたか?」


 アヤさんだった。営業用の綺麗なスマイルで、お客さんと私の間に割って入る。


「ああ、今コレを探してもらっていて」

「ああ、こちらですね。ご案内します」


 アヤさんはなめらかな動作で、お客さんを案内し始めた。私が慌てて頭を下げると、アヤさんは少しだけ振り返って、軽くウインクをした。

 お客さんを案内し終えたアヤさんが、私のところへ戻ってきた。


「アヤさん、さっきありがとうございました」

「あー、いーのいーの。たまたまだしね」

「でも、よく知ってましたね」

「アレねー、結構前に発売されたやつなんだけど、最近SNSでプチバズったんだよね。んで探してる人がちょいちょい来るんだけど、最近の商品じゃないし、テレビでやったとかでもないから、店でも特に周知してないの」

「そうなんですか……。あの、商品の場所教えてもらえますか? 次聞かれた時のために、覚えておきたくて」


 そう言うと、アヤさんはにまーっと笑って、私の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。


「わっ! なんですか!」

「んー? ミサキちゃんはいい子だなーと思って」


 こっちこっち、と手招きするアヤさんに、くしゃくしゃになった髪を手櫛で直しながら小走りでついていった。




「「「お疲れさまでしたー」」」


 閉店作業を終え、一斉に挨拶をする。そんなに人数のいる職場ではないけれど、ラストまでのシフトは全員が一斉に入るので、休憩室が少しだけ混み合う。邪魔にならないようにそそくさと着替えて外に出ると、アヤさんが居た。


「おすおす、お疲れー」

「アヤさん。どうしたんですか? 誰か待ってます?」

「んー、ミサキちゃん待ち」

「私……ですか?」

「ちょっとおねーさんと寄り道しよーぜぃ」


 そう言って、アヤさんは歩き出した。なんだろう、と思いつつ、少しだけならいいか、とついていく。

 一緒にコンビニに入って、アヤさんは肉まんを買っていた。私はあんまんと、アヤさんにもらったイチゴのお菓子が美味しかったので、それを買う。冷めないうちにと、急いで近くの公園に向かい、ベンチに腰掛けた。


「いっただきまーす」


 ふわふわと湯気を立てる肉まんに、アヤさんがかぶりつく。


「あったかーい。外で食べる肉まんて、なんでこんなに美味しいんだろーね」

「分かります」


 幸せそうな顔のアヤさんに思わず笑みをこぼしつつ、私も自分のあんまんを取り出して一口かじる。甘さが体に染み渡る。


「あ、やっぱあんまんも良かったなー。甘いのいいよね」

「あはは、人が食べてるの見ると欲しくなりますよね」

「ね。そだ、半分こしない?」

「え? でも、これ口つけちゃって」

「だいじょーぶだいじょーぶ。気になるならほら、かじってない方をこうして」


 言いながら、アヤさんが自分の肉まんの、かじったのと反対側から半分ほどちぎる。


「ほら、これでおっけー」

「あー……なるほど……?」


 私も同じように、口をつけたのと反対側をちぎって、アヤさんに渡した。


「交換こ!」


 無邪気に笑って、アヤさんは私のあんまんをかじった。


「んまー、やっぱ甘いのいいな!」


 それを眺めながら、私もアヤさんの肉まんをかじる。


 ――美味しい。


 何てことないコンビニの肉まんなのに、今までで一番美味しい気すらした。


「アヤさんは、肉まんが食べたくて私を誘ったんですか?」

「んー、それもあるけど」


 あるのか。アヤさんらしくて、ちょっと力が抜けた。


「何か今日、バイト入る時? 言いたい事あるようなそぶりだったから」


 アヤさんの言葉に、どきりとする。


「勘違いだったらいーんだけどさ。あん時、時間なかったし、そのままにしちゃったから。何か聞きたかったかなー? と思って」


 その言葉に、じんと胸が熱くなった。私のことを、この人はよく見てくれている。そして、私のために、わざわざ業務時間外に、こうして時間を取ってくれた。

 この人なら、私の欲しい答えをくれるだろうか。


「――……アヤさん、は」

「うん」

「例えば、街中で、手を繋いでいる女子が居たら、どう思いますか?」

「え? 仲いいなーって思う?」

「男女じゃなくて、女子同士で」

「うん? 女子同士でも男子同士でも、手を繋いでるってことは仲いいんじゃない? 悪かったら繋がないでしょ」


 さも当たり前のように答えて、訳がわからない、という顔をしている。そうか、この人にとって。これは、悩むほどのことでもないんだ。

 そう思ったら、ずっと考え込んでいた自分がバカバカしいような気分になって、溜め込んでいたものを全部吐き出した。

 中学の時に仲の良かった友達のこと。高校に入ってからできた友達のこと。学校でうまくいっていないこと。自分の当たり前が人にとって当たり前じゃなかったこと。人の普通についていけないこと。

 私のとりとめのない愚痴を、アヤさんはうんうんと頷きながら、辛抱強く聞いてくれた。


「そっか。しんどかったね」

「はい……」

「自分が大事にしていたことを、バカにされるのは、悲しいよね」

「大事にしていたこと……」

「ミサキちゃんにとって、中学の友達と触れ合うのは、大切で、大好きな時間だったんでしょ。それを気持ち悪いなんて言われたら、悲しいよね」


 ――悲しい。


 そうか、私、悲しかったのか。大切な友達との時間を、踏みにじられたような気になって。

 悲しかった。

 自覚した途端、目頭が熱くなってきた。


「よーしよし、先輩の胸でお泣きなさい!」


 がばっとアヤさんが抱き着いてきて、一瞬涙がひっこんだ。


「だいじょーぶ、だいじょーぶ」


 ぽんぽん、と背中を叩かれて、体の緊張が緩む。そういえば、誰かに抱きしめられるなんて、どれだけぶりだろう。人がこんなに温かいということを、忘れていたような気さえする。


「私は、こういうの好きだよ。好きな人とは触れ合っていたいから。触れないと伝わらない気持ちもあると思ってる。でも、こういうのが嫌いな人がいるってことも分かってる。だから、そういう人には勿論しない」


 アヤさんの優しい声が、耳元で聞こえる。


「普通なんて、どこにもないよ。皆自分の周りだけを見て、合わせて、普通だと思ってるだけ。だから、ミサキちゃんが普通だと思えないなら、そこはミサキちゃんの居場所じゃないんだよ」

「私の、居場所じゃ、ない」

「だって、高校の友達と居る時はしんどくても、私と居る時はしんどくないでしょ? それとも、私とこうしてるのもしんどい?」

「そんなことないです!」

「良かった。だから、ね。わざわざ悲しい場所にこだわる必要はないよ。離れられない場所ならうまーく距離を取って、なるべく居心地のいい場所に居ればいいだけ。戦う必要もないし、無理に合わせる必要もない。そんなことをしなくても、おんなじ『普通』を感じてる人は、どこかにいるんだから」

「アヤさんみたいに?」

「そうだねぇ。今のところ、私とミサキちゃんの普通は似てるのかな?」


 言って、アヤさんはからからと笑った。今のところ。今のところ、私は、アヤさんにこうやって抱きしめてもらえる存在でいられるようだ。ぎゅう、と強く抱きしめ返した。


「またこうやって、甘えたり、してもいいですか」

「おう、どんとこーい!」


 茶化すような言い方に、思わず声を出して笑った。悲しい気持ちはもうなかった。

 名残惜しさを感じながらもアヤさんから離れて、コンビニのゴミをゴミ箱に捨てて、二人で歩き出した。


「あ、そうだ」

「何か忘れ物ですか?」

「ん」


 アヤさんは、あのいたずらっ子のような笑顔で、私に手を差し出した。その顔から行動の意味は容易く読み取れて、私は恥ずかしいような悔しいような複雑な気持ちで、その手を取った。と、普通に繋いだはずなのに、アヤさんはするりと指を滑らせて、五本の指をしっかりと絡ませた。


「ちょ、アヤさん!」

「いいじゃんいいじゃん。誰もいないし」

「そういう問題ですか!?」

「嫌?」

「い……嫌じゃないですけど……」


 赤くなって、もごもごと口ごもってしまう。手を繋いだことは何度もあるけれど、いわゆる恋人繋ぎをしたことはさすがにない。


「アヤさん、誰にでもこういうことするんですか?」


 嫌がる相手にはしないと言っていたけれど、つまり拒まない相手には、誰であってもするのだろうか。そう考えると、なんだかもやもやした。


「誰にでもはしないよー。ミサキちゃんだけ」

「またそんな調子のいいことを……」

「ほんとだよ」


 ぎゅ、っと握られた指先が熱かったのは、先ほどまで食べていた肉まんのせいかもしれない。

 握り返した私の指先が熱かったとしたら、それは多分、別の理由。

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