第19話 反省会

「では、まずお二人のステータスを見せてもらってもいいですか。」


俺達はポケットからギルドカードを取り出し、キャサリンに見せる。

ちなみに今の俺達のステータスはこんな感じだ。


ユウキ・ツキモト (17)

魔法使い 得意属性【無】


魔法攻撃力 E--

魔法防御力 F++

魔法回復力 F+

魔法制御力 D-

魔力回復速度 E

魔力量 D++


Eランク


スキル欄(3)


スキル

詠唱省略(小)


EXスキル

無の加護(真・無属性)


器の欠片(2)

器の加護

マジックシェア


リーフ・クレイン(16)

魔法使い 得意属性【?】


魔法攻撃力 F++

魔法防御力 F-

魔法回復力 D-

魔法制御力 E-

魔力回復速度 F+

魔力量 E--


Eランク


スキル欄(3)

回復魔法使い


「あれ、いつの間にかステータスがめっちゃ上がってる?」


自分のステータスとリーフのステータスを見て、最後にステータスを見たときよりも、上昇していることに気づいた。

俺は、魔法制御力が2段階上昇し、魔法攻撃力、魔法防御力と魔力量が1段階ずつ上昇し、リーフは、魔法攻撃力と、魔法防御力、魔法制御力、魔力量が1段階上昇している。


「最後にステータスを確認したのはいつですか?」


はてなマークを浮かべている俺にキャサリンが質問してきた。


最後に確認したのは確か……


「アイオンと、キャサリンに会う前、ゴブリン達と戦っていた時だな。」


ちょうど、デュアルアクションを覚えたときに確認したから、ちゃんと覚えている。


「私はそれよりも少し前……ヒューデットに会う前ですね。」


「あぁ、Eランクになったって喜んでいたときだよな。」


「ふむ、その時と比べてステータスが上がっている……と。おそらく戦闘に集中していて気づかなかったのでしょうね。よくあることですよ、いつの間にかステータスが上がっているということは。」


「俺と戦ったというのもあるだろうな。最初はほら、俺に思いっきりお前達魔法ぶっぱなしてただろ?そのときに、魔法攻撃力とかが上がっててもおかしくない。

それにヒューデットとも戦って、倒したんだろ?まだ、ヒューデットのことが分かっていないから推測でしかないが、ヒューデットは倒すとステータスが上がりやすい魔物かもしれないな。」


「魔物は種類によってステータスが上がりやすい魔物、上がりにくい魔物がいるんですよ。例えば、スライムとかは倒してもあまりステータスが上がりませんが、グレイウルフは倒すと、ステータスが上がりやすいのです。

たくさんステータスが上がっているということは、ヒューデットはかなりステータスが上がりやすい魔物なのかもしれませんね。」


「なるほど、ステータスを上げるのにうってつけな魔物ってことですか。」


キャサリンの説明にリーフが反応する。

ステータスが上がれば、出来ることも増えるし、気持ちは分からなくもない。


「だからって、無理に1人で突っ走るなよ?

相手はDランクだ。俺達よりも格上だから慎重にいかないと。」


「わ、分かってますよ!私だって痛い思いしたくないですし、ちゃんとユウキさんと協力しますよ。」


俺の忠告に頬を膨らませながら、ジト目でリーフが俺を見てくる。……うん、かわいい。


「とりあえず、ヒューデットの話しはおいておくとして、反省会をしますよ。」


パンパン、とキャサリンが手を叩き、注目を集め話を遮る。


「まずはユウキさんの反省からしましょう。

ユウキさんは、前線でデュアルアクションと詠唱省略(小)の組み合わせによる手数の多さで戦っていましたね。」


「あぁ、デュアルアクションで手数を増やせば、その分攻撃回数も多くなるし、詠唱省略(小)があれば、すぐに魔法を放てるから攻撃にも防御にも使えると思ったからだ。」


「そうですね、確かに手数を増やせば、こちらができることが多く相手の行動をうまく制限できるでしょう。

しかしそれをするには、少しユウキさんのステータスが足りていません。」


キャサリンの眉が少し下がり、少し言いにくそうに呟いた。


「ステータスが足りてない?」


イマイチ理解しきれていない俺は首を傾げながら、思考する。


「えぇ、魔法攻撃力のステータスがもう少し高ければ、アイオンの行動を制限出来たでしょう。

魔法攻撃力が高ければ、先ほどの『フラッシュアウト』の後に、アイオンが『ファイア』を受けたらマズイと思い、攻撃を受けきるという選択肢を消すことができ、アイオンは避けるという選択をするしかありません。

回避するということが分かっていれば、回避した所に更に追撃をすることも可能でしょう。ましてや、アイオンは視覚が『フラッシュアウト』によって奪われていた。

……おそらくもっと簡単にアイオンに攻撃を当て、体力を削ることが出来たでしょう。」


「なるほど、つまりもっとステータスを上げろってことか?」


「そういう事です……と言いたいですが、今回の相手は手加減をしていたと言えど、Bランクのアイオン。実際に明日戦うのはDランクのヒューデットです。おそらく、今のステータスでも通用するでしょう。

このアドバイスで言いたいのは、手数を増やすのであれば、相手の選択肢を潰し、自分達の有利になるように戦況を持っていくことが重要ということですね。

あと、それ以外では……。」


キャサリンが思い返すように、腕を組み……


「デュアルアクションの使い方が少しもったいない気がしますね。」


「もったいないって、どういうことだ?」


「デュアルアクションは1回の詠唱で、2発の魔法を放つスキルですが、2発目も1発目と同じ方向から撃っていましたね。それが、もったいないということです。」


もしかして、デュアルアクションの2発目は1発目とは別の方向から撃てるのだろうか?


「ふむ、2発目の軌道を変えることが出来ることを知らないと言う顔をしていますね。実際に見た方が早いでしょう。

コマンド――魔法射撃シューティングマジック。」


キャサリンが呟くように言うと、10mほど離れた位置の床がスライドし、そこから人型の木で出来た人形が1mずつ間隔をあけて、5体出てきた。


「人形が出てきましたね……。これもこの空間の仕様なんですか?」


人形が出てきたのに、リーフが反応し、隣にいたアイオンに尋ねる。


「そうだ、魔法射撃シューティングマジック……つまり、魔法の練習をするためのモードだな。主に、攻撃魔法の。

あの人形を全部倒すと、また床がスライドして入れ替わりに人形が出てくる。」


「では、ユウキさん見ててくださいね。〈集いし魔力よ〉」


右手を1番右の人形に向け、デュアルアクションを使いながら、『マジックショット』を放つ。

すると……


「え、2体同時に!?」


後ろでリーフの驚愕の声が上がる。

右手から、1発目の『マジックショット』が発射されたあと、すぐにもう1発の『マジックショット』が放たれる。

ぐいーんと、左に弧を描きながら。

そして、1発目の『マジックショット』が人形に直撃した後、ワンテンポ遅れて、2発目が左の人形に直撃する。


「こんな感じで、2発目の魔法は軌道を変えることが出来るんです。魔法の制御が本来必要な魔法制御力よりも少し上昇しますが、このやり方を覚えておいて損は無いでしょう。」


さらに、真ん中の人形にデュアルアクションを使い、『マジックショット』を放つ。1発目が真っ直ぐ飛んでいき、2発目はクイッと3mほど高速で上昇して、人形目掛けて飛んでいき、1発目が人形に当たった後、人形の頭部に向かって急降下し、人形の頭部を砕いた。


「こんな感じで、1発目を囮にして注目させ、2発目を確実に当てる、という方法も出来ます。」


「私もデュアルアクション覚えようかな。」


色んな応用の仕方があるんだなぁと思っていると、隣で一緒に見ていたリーフがぽつりと呟く。


「できるだけ早く覚えた方がいいでしょうね。

しかし、リーフさん、あなたは魔力量がE--と低めであるため、まずは魔力量のステータスを上昇させましょう。

先ほどの練習試合でも、あなたはユウキさんのサポートの他に攻撃役もしていましたね。

『マジックチャージ』や、『ファイア』……それに『フラッシュアウト』等などを使っていました。」


「そうですね、ユウキさんのサポートをしつつ、ユウキさんがチャンスを作って攻撃出来る時は、攻撃してました。」


「しかし、後半は魔力が無くなりそうになっていましたね。

まずは、魔力量をあげることを優先するといいでしょう。

そしてそれまでは、攻撃とサポートを両立するのではなく、どちらか片方に専念した方がいいでしょう。その方が魔法をたくさん使わずにすみ、魔力も温存できますからね。」


「だ、そうだが、ユウキとリーフはどうしたい?」


今まで口を閉じていたアイオンが、俺に問いかけてきた。


「どうしたいってどういうことだ?」


「どっちが攻撃をして、どっちがサポートをするか今のうちに決めておいた方がいいってことだ。リーフが片方のみになる以上、ユウキも戦い方を変える必要がある。

リーフが攻撃をするなら、ユウキはリーフのサポートを、そしてその逆のパターンの方法もある。」


確かに、リーフの戦い方が変わるのだ。俺もどう動くか考える必要がある。


「んー、リーフはどうしたい?」


「私は……サポートに回った方がいいかなって思います。」


若干自信なさげにリーフが答える。


「私は魔法攻撃力が低いので、攻撃役になっても相手にあまりダメージを与えられないでしょう。

さっきみたいに『マジックチャージ』を使って、攻撃しないと多分ヒューデットにも効かないと思いますし。

それだったら、『エレキバインド』とか、『フラッシュアウト』でサポートする方がまだ役に立てると思ったので。」


「ふむ、確かにリーフさんがサポート役に回る、というのはいいと思います。ただ、これはあくまでも魔力量が少ないから、というわけであって、魔力量がD--くらいになれば、攻撃、サポートを兼用しても魔力がすぐ無くなるということは無くなるでしょう。」


「それに、リーフももうちょいしたら得意属性が決まるだろうし、得意属性に合わせた戦い方をするといいさ。」


アイオンの言葉に俺は疑問を覚える。

そういえば、Eランクになると得意属性が決まると、べシールは言っていたが、リーフはEランクになったにも関わらず、未だに得意属性が決まっていない。


「なぁ、得意属性ってEランクになったら決まるんだよな。

リーフはまだ決まっていないみたいだが、いつ決まるんだ?」


「Eランクになった瞬間に、得意属性が決まる人もいますが、大抵の魔法使いはEランクになって、その後少しステータスを上昇させると、決まる人が大半です。つまり、人によって得意属性が決まるタイミングは違うということですね。

しかし、共通して言えることは、Dランクになる前には、必ず得意属性は決まります。」


どうやら、人によってタイミングが異なるらしい。


「なるほど……たのしみだな、得意属性がどれになるのか。」


「そうですね、早く私も自分がどの属性になるのか知りたいです。キャサリンさんは、雷属性ですよね。」


「えぇ、それとステータスが一定のランクを超えたから、雷電属性も私の得意属性ですよ。」


雷電属性?聞いたことない属性だ。

もしかしたら、魔法の属性の特性について学ぶためにギルドの本で読んだ上位属性と言うやつだろうか?

聞いてみることにしよう。

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