あとがき

最後まで読んで下さり、本当にありがとうございます。


この詩集は、とある東京都下の精神病院に入院した際、病棟で書き綴った詩を纒めたものになります。


通信機器の持ち込みが禁止の病棟、そこで詩を書いたのは、度々この詩集に登場する「友(同室の方)」が、私のルーズリーフを折り紙として使って、余りの紙が出来たから。それがきっかけでした。


折り紙として使うためにB5のルーズリーフを正方形に切り取ると、3分の1の余白の紙が出来上がります。


切り取って渡されたそのスペースに詩を書いてみたら、意外にスッと収まったので、次からは自分で三つ折りにしてから手で切って、退院まで特にOT(作業療法)の時間を中心に、細々と書き続けました。


それがここに纏めている詩で、入院中すべての詩です。


その友とは、退院前の最後の一週は会えなくなってしまい、お別れをきちんと出来ないまま、私は退院してしまいました(彼に熱が出てしまい、部屋が隔てられてしまったのです)。


それは悲しかった。でも実は、彼がとても巧みな折り紙を折る特技がある方だったこと自体、詩を書くもうひとつの動機にもなっていました。


彼の折り紙が病院の広報に写真として掲載されると噂で聞いて「詩を書いたら私の詩も一個くらい載せてもらえるかも」という期待を持って、作業療法の先生に書いては手渡していたんです。


預けるという形になっている詩が返ってくる時、三人の作業療法の先生がそれぞれ読んで下さり、感想を書いた手紙も渡してくれました。


その手紙には


「ダイヤモンドの原石はゴツゴツして、まるで人を傷つけることも厭わないフジツボみたいななりをしていて、決して美しいとは言えないものです。でも、あなたにはダイヤを磨ける硬さがある、自分を信じて、これからも夢を叶えに行ってほしいなぁと思いました」


と書いてありました。心理の仕事に就きたい私も、詩を書く私も、患者としての私も応援してくれて、その先生方には本当にありがとうという気持ちと、心地よい、本当に学校の先生のような尊敬と親しみと畏怖の混じった感情があります。出会えて良かった。


「友」にも会えて良かったです。


もし、精神科に入院したまま、本当に出ることが出来なくなっても、紙とペンさえあれば詩を書ける。これは、希望としては小さなものではないです。


実際に退院したら、やっぱり、紙とペン以外のものにも色々気をとられますが、この経験を大事にしたい。それは、退院して一ヶ月半経っても変わらず思ってます。


拙い詩集ではありますが、どうしても語りたくて書いた背景を語ってしまいました。お付き合い頂いて感謝致します。


カクヨムに投稿しようと思いながら書いた詩集なので、カクヨムで長く書けることも考えて、ひとまずこの作品は綴じておこうと思います。


本当にありがとうございました。

また、どこかで。


2022.4.30(土)

八朔 恋


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太陽と向日葵とその子供 八朔 恋 @renhassaku

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