第172話 トリプルカップルの合同ランチ
今日は、スギ、マサとそれぞれの彼女達に誘われ、一緒に一緒にお昼を食べる事になり、皆で中庭のベンチに集合していた。
「京太郎、ようやく氷川さんと付き合う事になったんだな。おめでとう!!」
「京太郎、嘘コク脱出おめでとう!!よかったな!!」
「「矢口くん、氷川さんおめでとう!」」
芽衣子ちゃんと嘘コク設定上、付き合う事になったと皆に伝えると、スギ、マサ、それぞれの彼女から次々にお祝いの言葉をもらった。
(というか、マサよ。俺、まだ嘘コクは脱出できていないんだけど…?)
「あ、ありがとう…。///」
「えへへ…///ありがとうございます…!」
俺は頭を掻きながら、芽衣子ちゃんは、ゆるゆるの笑顔で照れながらも皆にお礼を言った。
「いつも、二人いつも一緒で仲良さそうだったから、もう、とっくに付き合ってるんだと思ってたよ。」
華奢で小柄な体形のスギの彼女=
「私も〜!でも、以前から仲の良い二人なんだから、付き合う事になった昨日は、矢口くんと氷川さん、さぞラブイチャな時間を過ごしたんじゃないの?」
少しぽっちゃり体形のマサの彼女=
「あ、いえ…。」
「それが…。」
俺と芽衣子ちゃんは、気まずく笑みを浮かべて、顔を見合わせた。
*
*
「「はあっ?(嘘コクだと、振られた)元カノと(嘘コク設定上の)今カノと同じ部活で活動する事になったぁ?」」
「「しかも、元カノが今カノと二人きりになるのを邪魔して来るぅ?」」
スギ・マサの声と、西浦さん・日向さんの声がそれぞれハモリ、次に共驚愕の表情を浮かべて、4人同じ事を叫んだ。
「「「「あり得ない!!」」」」
「い、いや。上月はもう俺との事は気にしてないって言ってたし、そういうんじゃないんだけど…。」
「え、ええ。上月先輩は、私が文学や作品作りに詳しくないので、教えて下さろうとしての事だとは思うのですが…。」
その勢いにタジタジになりながら、俺と芽衣子ちゃんは弁解をしたが、スギとマサは首を振った。
「いやいや、京太郎、真に受けるなよ。言葉でいくら気にしていないと言ってもお互いそうはいかないだろう…!」
「そうだよ。京太郎は、色々鈍感で空気読めないところがあるからなぁ…。」
「え、ええ?何だよ二人共…。」
仕方のない奴だという視線を二人に向けられ、俺は怯んだ。
日向さんは、心配そうに、芽衣子ちゃんに聞いてきた。
「氷川さんも大変だよねぇ…。その状況で大丈夫なの?」
「う、う〜ん。今までも、京先輩に嘘コクをした女子達と絡む事は多かったですし、お互いに本当にスッキリしているなら、私は大丈夫だと思いますけど、二人っきりの時間が全くなくなっちゃうのは辛いですねぇ…。」
「芽衣子ちゃん…。」
ため息をついた芽衣子ちゃんに俺は、胸が痛んだ。
やっぱり、彼女を巻きこんで読書同好会に入部させたのは、俺の過ちだったのだろうか?
嘘コク設定上とはいえ、せっかく付き合う事になったというのに、俺は彼女の願いを何一つ叶えられていない。
大事な話があるというのも、上月に2度も遮られ、結局有耶無耶になり、聞いてあげられないし…。
「辛いね…。そんな中、私達お昼に誘っちゃってよかったのかな?
昼休みは、二人きりになれる貴重な時間じゃなかった?」
遠慮がちに聞いてくる西浦さんに、芽衣子ちゃんは、キッパリと答えた。
「いいえ!誘って下さって有り難いです。あれから、何度か試してみたのですが、
上月先輩、私と京先輩が二人きりじゃないときは、干渉して来ないみたいなので、京先輩とイチャイチャできる絶好の機会なんです!今の内に京先輩成分をいっぱい補充しときます。クウン、スリスリ…♡」
「こ、コラコラッ。芽衣子ちゃん…!皆の前で…//」
芽衣子ちゃんは、俺の腕に自分のそれを絡ませ、頭を擦り寄せて来たので、俺は慌てた。
「「「「ごちそうさまです…!!//」」」」
4人はニヨニヨしながらまたも四重奏を奏でた。
それからは、女子達は、作ってきた弁当の卵焼きやら、ハンバーグを交換こして、キャッキャッと盛り上がっているところを、俺とスギとマサは、貴いものを見るように目を細めて見遣ったり、お互いのカップルの普段のデートスポットや、ハマっている事などを話したりと楽しい時間を過ごした。
そうしている内、芽衣子ちゃんが急に難しい顔をしてプルプルし出したのに気づいた。
俺と目が合うと芽衣子ちゃんは、顔を赤くして何かを俺に言いかける。
「ハッ!あ、あの、京先輩…。これは…。」
「ああ。何か考え事をしてそんな顔になっているだけで、おトイレじゃないんだよね?分かってるから、安心して?」
過去から学習した俺は、彼女に爽やかな笑顔を向けたのだが…。
「い、いえ…。今回は、お手洗いです…。///」
彼女は、真っ赤になって俯いてしまった。
「え。あ、ご、ごめん。芽衣子ちゃん。」
「い、いえ…。///」
スマートに対応しようとして、何故俺は空回りしてしまうのか…。
皆の非難の視線が俺の背中に突き刺さった。
「あっ!じゃ、じゃあ、私もお手洗い行こうかな…。」
「私も〜!皆で一緒にいこっか?」
「あっ。はい…✨✨ありがとうございます…!」
気遣ってくれた西浦さんと日向さんに連れられて、芽衣子ちゃんは、校舎の中に去って行った。
「おいおい…。」
「京太郎…。」
スギとマサに冷たい目で見られ、俺はため息をついた。
「ふうっ…。分かってるよ。お前、ホントに空気読めないな?だろ?」
「そうだけど、今の事じゃねーよ。氷川さんの事、もっと考えてやれよ?」
「今大事にすべきは、ひどい振り方をした元カノじゃないだろ?いざという時は、どう対応すべきなのはわかってんだろうな?」
真剣な顔で詰め寄ってくるスギとマサに、俺は躊躇いながらも頷いた。
「あ、ああ…。それも分かってるよ。あんまり芽衣子ちゃんが辛い思いをするようだったら、読書同好会の部活は辞めようと思ってる。」
「それなら、いいんだが…。」
「氷川さん、いい子なんだから、大事にしてやれな?」
「ああ…。それにしても、お前達、芽衣子ちゃんとの仲をすげー応援してくれるのな?
以前上月と付き合うと伝えた時とはえらい違いじゃないか。」
「いやぁ…。だって、上月さんの性格と感じから言って、京太郎の事本当に思ってるように思えなかったもんで…。」
「ああ…。絶対嘘コクだと思ったもんな…。」
スギとマサは見合わせて、頭を撫でた。
「いや、芽衣子ちゃんも嘘コク設定上のお付き合いなんだけど…。」
俺が頬をポリポリして、苦笑いでそう言ったが、スギは首を振った。
「設定上はそうかもだけど、氷川さんは、明らかにお前の事好き過ぎるの丸分かりだもん。」
「京太郎だって、彼女の気持ち全く気付いてないわけじゃないんだろ?」
「そ、そりゃ…、全く思わない事は…ない…けど…。」
マサにも指摘され、俺は顔を赤らめながら、今までの彼女の姿を思い出していた。
真実の井戸で、俺への想いを泣きながら叫んだ芽衣子ちゃん…。
7回目の嘘コクミッションで、緊張しながら告白し、OKしたときの、嬉しそうな笑顔…。
それらが全部嘘だなんて、俺にはもう思えない。そう思う事は、もはや、彼女の気持ちを
見て見ぬ振りして、蔑ろにする事に他ならない。
気付いてしまった彼女の気持ち。
そして、抑えようもない程膨らんでしまった自分の気持ち。
俺はもう、彼女の
その嘘コクを本物にしたいと願うのなら、彼女に辛い思いをさせないように、彼女にいつも笑顔でいてもらえるよう最大限の努力をしなければならない。
「分かってるよ。俺だって、ちゃんと芽衣子ちゃんに告白して、本当の恋人同士になりたい。
自分がしっかりしなきゃダメなのは、ちゃんと分かってるよ。」
「ううっ…。嘘コクでヘタれていた京太郎からそんなセリフを聞けるとは…!」
「ううっ…。本当にな?感無量だぜ!
京太郎!そのいきだ!頑張れよ?」
二人の親友、マサとスギは涙を浮かべてサムズアップを見せてくれたのだった。
*あとがき*
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いつも読んで頂きまして、応援頂きまして本当にありがとうございます✨😭✨
お礼のおまけ話を近日中に近況ノートに書かせて頂きたいと思いますので、よければご覧下さいね。
今後もよろしくお願いしますm(__)m
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