第162話 読書同好会(ハーレム?)へようこそ


「ふんふん…。それで上月さんと、矢口くんの間で揉めて、顧問の私のところまで来たってわけなのね?」


京ちゃんの担任の新谷良子先生は、私と京ちゃん、読者同好会の3人の女の子達の前でウンウンともっともらしく頷いた。


というか、何故、京ちゃんを囲む女の人が更にもう一人増えているの?

私は望まぬハーレム状態になっている現状に

不安を募らせた。


屋上に飛び込んで京ちゃんに文句を言っていたのは、読書同好会の部長さんで、後から来た双子の女の子達はその部員さんらしい。


京ちゃんは、読書同好会に部員として所属しているものの、今は幽霊部員になっているらしい。

それにも関わらず、双子の部員達が作品や、部誌の印刷や、発行について相談しに来たのに対して京ちゃんが色々アドバイスをしてあげていた事が部長さんにとっては、気に入らないようだった。


たびたび部長さんと、京ちゃんの間で揉めていた問題を、今日こそはハッキリ白黒つけようと、私達は職員室にいる読書同好会の顧問の先生で、京ちゃんの担任の先生でもある

新谷先生の下へ、駆けつけたのだった。


「幽霊部員のくせに、中途半端に口を出してくるのやめてくれないかしら?辞めるなら辞める。活動するなら、ちゃんと活動するでハッキリして欲しいわ!」


読書同好会部長=ショートボブの怒れる女子生徒=上月彩梅こうづきあやめ先輩は、京ちゃんを睨み付け、吐き捨てるように言うと、京ちゃんも彼女を睨み返した。


「辞めろと言うなら、俺はいつでも辞めて構わないけど、同好会は、部員4人以上いないと発足できないだろ?幽霊部員の俺でもいないよりはマシなんじゃないか?」


「何よ!幽霊部員のくせに上から目線で、偉そうに…!その時はその時で何とかするわよっ!やる気のない部員に心配されるまでもないわっ!!」


「わ〜ん!私が部誌の製作の事で矢口くんに相談しようって言ったから!」

「あ〜ん!私も、詩について矢口くんに意見を聞きたいっていったから!」


「「私達が悪いんです。ごめんなさい〜!!部長も矢口くんも喧嘩しないでっ〜!!」」


双子の女の子達は、肩を抱き合って泣くばかり。


「双方の言い分は分かったわ。まぁまぁ、皆落ち着いて。この間も、矢口くんに言ったけど、部活をどうするのか考えるいい機会だと思うの。

顧問としては、もちろん矢口くんが辞めるより、部活に参加して貰う方がもちろん有り難いわ。

上月さんは、矢口くんのどっちつかずの状況が気に入らないだけで、ちゃんと部活に参加するなら問題はないのよね?」


「ま、まぁ…そう…ですけど…。」


新谷先生に追求され、部長の上月先輩は、不服そうながら、肯定した。


「小倉さん達も、もちろん異論はないわよね?」


「「はい!私達は、矢口くんが部活に参加してくれたら嬉しいですが…。」」


双子の女の子達は一瞬、顔を輝かせたものの、上月先輩と京ちゃん&私を交互に見て、困ったような表情を浮かべていた。


「うん!3人がそう言ってくれているなら、何も問題はないんじゃないの?将来の希望から言ったら、読書同好会で活動することは、矢口くんにとって有意義な経験になるでしょうし。

この前、矢口くんは、部長が嫌がるだろうから、部活に参加しないと言っていたんだものね?」

「いや、でもそれだけが理由じゃないし、参加したいとは一言も…!」


新谷先生の誘導に、京ちゃんはすぐに反論しようとしていた。


将来の希望??

部活に戻らないのは、部長が嫌がるといけないから…??


私の知らない京ちゃんの状況が次々明らかになって、私を蚊帳の外に、どんどん話が進行していき、不安にかられ、泣きそうになっていると、急に新谷先生から、話を振られた。


「矢口くんと仲良しの氷川さんにも聞きたいのだけど、矢口くんが読書同好会に参加する事になったら、どうかしら?」


!!


私は涙目になりながら、頭を振って、職員室に響き渡る大声で叫んだ。


「女子3人に男子1人なんて、

そんなハーレ厶な環境ダメですっ!!

せめて私を正妻か紫の上的立場にしてくださいっ!!」


「め、芽衣子ちゃん、何言ってるんだよぅ…。///」

「なっ…!なんで私が矢口のハーレムに…

///冗談じゃないわよっっ!!」


「え〜ん!私達もハーレム構成員なんですかぁ?」

「え〜ん!ふしだらな娘達だって親に怒られちゃいますぅ!」


私の発言に、京ちゃんは赤面して狼狽え、上月先輩は、怒り、双子の女の子達は泣き、

大不評のようだった。新谷先生以外には…。


「ふむふむ、なるほど…。要約すると、二人は一心同体と言う事ね?矢口くんが、部活をするなら、氷川さんも漏れなくついてくると。一年生の新入部員生も一人入り、読書同好会の皆にとって、いい事ばかりじゃないの!」


「んん?要約すると、そうなるんですか…??」


新谷先生に笑顔を崩さずそう言われ、私が目をパチクリさせて首を傾げていると、京ちゃんは、先生に怒り気味に抗議してくれた。


「先生っ!芽衣子ちゃんの意見を自分の都合の良いように曲げて解釈しないでください!!」


「あら、バレた?もう矢口くんったら、彼女の為だからって、そんなに怒らないでよぅ…。」



あっ。やっぱり丸め込まれるところだったみたい。危ない、危ない…!

でも、京ちゃん、私の為にあんなに怒ってくれて嬉しい…♡


状況に押されっ放しだったけど、私も京ちゃんを守らなくっちゃ!


私は一気に元気が出て、女性陣にキリッと向かい合った。


「あと、皆さんに一つ聞きたいことがあります。

京先輩は、与えられた仕事があったら、人並み以上にきっちりこなす、真面目で誠実な人です。

美化委員でも、クラスでも、臨時の風紀委員でも、私の些細な頼み事さえも、そうでした。

そんな京先輩が、部活に所属していながら、活動をサボり、幽霊部員になっている状況が普通の事とは思えないんです。


活動に参加できない余程の理由があるのではないですか?」


「め、芽衣子ちゃん…!」

「「「「…!」」」」


私の追求にその場にいた女性の全員が辛そうな表情になった。

特に、上月先輩の顔は泣きそうな程顔を歪ませていた。


やっぱり…!7…!!


7人目にして、最後の嘘コク女子、上月彩梅先輩の情報を柳沢先輩から聞いたときの事を思い出していた。


❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇


「ラスト、嘘コク7人目は、私達と同学年で

A組の上月彩梅。矢口の所属している読書同好会の部長。

えっと…。芽衣子ちゃん、心を強く持って聞いて欲しいんだけど、どうやら、彼女は、矢口と二日間だけ付き合っていたらしいの…。」


「がーん!!!! ||||||||||」

「芽衣子!!」


嘘コク4人目の話を聞いた時のように、

再び、ふらっとする私をマキちゃんが支えてくれる。


「め、芽衣子ちゃん、大丈夫?7人目については聞かない方がいい…かな…?」


心配そうに問いかけてくる柳沢先輩にゆっくりと首を振った。


「だ、大丈…夫です…。この嘘コクミッションの選択肢を聞いたときから、悪い予感はしました…から…。聞かないと…、気になって夜も眠れなくなってしまうので、どうか…続けて下さい。


口から心臓が飛び出さないように押さえています…から…。」


私は青褪めながら口を両手で押さえる私に、柳沢先輩も覚悟を決めたようだった。


「芽衣子ちゃんそこまでして…!

わ、分かった。なるべく手短かに済ますね?


二人かどうやって付き合う事になったかは詳細とか、経緯は分からないの。


矢口は、学園祭の少し前に入部して、

帰りが二人一緒のところを何度か見かけたけど、上月さんの性格からして、男子を寄せ付ける感じでもなかったし、矢口も嘘コクのせいで、女子とは距離をとるようにしていたから、二人が一緒にいても、同じ部活だからいるんだろうなぐらいにしか思わなかった。


けど、学園祭が終わってから数日たったある日。昇降口のところで、二人が揉めているのを見たの。


揉めていた原因とか、詳しい事は分からないんだけど、上月さんが、大きな声で泣き叫んでいるのは聞こえた。


『そんなに、嘘コクされたかったら、私もしてあげるわよ!嘘コクでもなかったら、誰があんたと付き合おうなんて思うのよっ?

嘘コクとはいえ、2日もあんたと付き合っていたなんて、人生の汚点だわっ!!』


って…。


矢口は、俯いて、


「そっか。悪かったな…。」


って言ってその場を離れて…。


私は何があったのか、問い糺そうと、矢口を追いかけて行こうとしたとき、上月さんと目が合ったんだけど、もの凄い目で睨まれた。


何故かは分からないんだけど、私は彼女に酷く憎まれているみたいだった。



矢口は、私にも詳細は語らなかったけど、


『俺に関わっても誰も幸せになれないの分かってたのに、上月には悪い事した。』


ってだけ…。寧ろ上月さんに申し訳なく思っているような様子だった。


場所が昇降口で沢山の人に見られているのもあって、また、7人目の噂が流れたけど、

矢口はもう、すっきりした何でもないような顔をしていた。


それからは、まぁ、当然ながら上月さんと一緒にいる事も、部活に参加する事もなくなったみたい…。


で、女の子を完全に遠避けるようになった今の矢口がいるわけだけど…。


芽衣子ちゃん大丈夫??」


「芽衣子?大丈夫…かぁ?」


俯いてプルプルしている私に、二人が声を掛けた途端、私は心臓の代わりに火を吹く勢いで怒り狂って、吠えた。


「グワガーッ!!嘘コク女子許すまじ!!

もう、問答無用で一人目から順に成敗していきますっっ!!柳沢先輩、お覚悟!!ハァーッ!!」


「ギャーッ!!芽衣子ちゃん、ご乱心!!助けて〜!!」


「コラコラ!!芽衣子、右足はダメだっつーのにっっ!!」


遂にキレた私が、柳沢先輩を追いかけ回し、マキちゃんに止められていた時…。


ピロリラリ〜♪ピロリラリ〜♪

突然スマホから着信音が鳴り出した。


❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇


あの時、秋川先輩に学校放送に誘われていた件で京ちゃんが私に電話をくれていなかったら(18話参照)、今頃柳沢先輩を真っ二つにしていたかもしれない。危なかった…。


とにかく、どんな事情があったにせよ、嘘コク7人目である上月彩梅先輩が、京ちゃんを傷付けたのは、紛れもない事実…!!


私は、上月先輩を睨むように見遣ると、新谷先生にきっぱりと言った。


「京先輩が、読書同好会の活動に参加する事で、嫌な思いをしたり、傷付いたりすることはないのでしょうか…?もし、そういう事が少しでもあるのなら、私は京先輩に参加して欲しくないと思います。」


「なるほど…。氷川さんは、矢口くんの事が色々な意味で心配なのね…。確かに、矢口くんと上月さんの間に、過去いざこざがあった事は確かね…。でも、だからこそ、氷川さんがいる今なら、その事に区切りをつけられるのではないかと思ったの。二人は付き合っている…のよね?」


新谷先生に聞かれて私と京ちゃんは揃って真っ赤になった。


「「えっ。//」」


私が不安気に京ちゃんと赤い顔を見合わせると、京ちゃんは、照れながらも真剣な表情で頷いた。


「は、はい…。つい先程から付き合う事になりました…。」


!!!!


「きょ、きょうせんぱいぃっ!!♡♡///」


私は喜びのあまり、その場に崩れ落ちた。


さっきの告白覚えててくれたっ!!


そう!嘘コクミッションの設定とはいえ、

付き合う事になったんだもんね!!


ううっ。嬉しいよぉっ!!


「め、芽衣子ちゃん、大丈夫?」

「は、はひ…。ら、らいじょーぶ…れす…。ありはとー…ござ…ますぅ…。」


幸福のあまり、スライムのように溶けている私を、京ちゃんが助け起こしてくれた。


そんな私達の様子を見て、上月先輩は、辛そうに目を逸らし、双子の女の子達はそんな上月先輩を心配そうに見ていた。


「あらあら、見せつけてくれるじゃない!

くっそ〜💢崖っぷち29才の婚活中の女子としては思うところもあるけど、今は置いときましょう。


コホン。じゃあ、そんな幸せホヤホヤな矢口くんに聞くけど、

今だにあの上月さんとのいざこざがしこりになっていて、それが部活動に参加できない理由になっているかしら?」


「……!」


再び不安そうに思い、京ちゃんを見上げると、きっぱりと答えてくれた。


「いえ。それはもうないです。ただ、俺が参加すると部長の上月が嫌な思いをするのではないかと思って…。」


「なっ。何よそれ!私は部活に来ないで欲しいなんて一言も言ってないわ。サボる理由を私のせいにしないで!」


「それなら、上月さんにとっても、もうあのいざこざは、過去のものとして、仮に矢口くん、氷川さんカップルが参加するようになっても、問題はないかしら?」


「は、はいっ。私だって矢口の事なんてどうでもいいですが、カップルだからって活動もそこそこにいちゃつかれるのは困ります。

氷川さんは、本とか興味はあるのかしら?」


「え。 ||||||||」


上月先輩の思わぬ逆襲に遭い私は今日一青褪めた。


国語の成績、あんまりよくなくて、いつも勉強ではマキちゃんに泣きついていたんだよな…?


「ええ、まぁ…。こ、こう見えて、本はよく…読む方…なんですよ??」


上月先輩から目を逸らつつ答えた。


う、嘘じゃない…もんっ。


『動物○お医者さん』も『ドラ○もん』も、漫画だけど本には違いない…もんっ。


「芽衣子ちゃん…。(漫画しか読んでるの見たことないけど、大丈夫かな…?)」


そんな私の誤魔化しを見抜いてか、京ちゃんが心配そうな目で私を見て来た。



*あとがき*


いつも読んで頂きましてありがとうございます✨✨

先週から今週にかけて、特に沢山フォローや、応援、評価下さって本当に感謝です✨🙏✨


嘘コク7人目、難航中ですが、なんとかラストまで頑張って行きたいと思います。

今後ともどうかよろしくお願いします。






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