第158話 おまけ話 白瀬先輩のお宅訪問《メメちゃんとの関係改善アフター》

「あ〜あ。やっぱ夏子最強だわ。」

「あの尻には勝てないわ〜。」

「悔しいけど信太くん、夏子お幸せに!」


椅子取りゲームで、三原夏子に負け、その場を離れる風紀委員の女子達。


「うん!負けた後は潔く引くのが風紀委員女子きみたちのいいところだぞ?皆、いい女だ!」


負けた風紀委員女子達に、親指を立て爽やかな笑顔を見せる柑菜。


「ああ〜ん!委員長、心破れた私を慰めて下さい〜!」

「おやおや…。ぎゅっ。ヨシヨシ!」

「きゃうん…♡」


風紀委員女子の一人が柑菜に迫り、ハグと頭ポンポンをしてもらう。


「「「「「あっ。ずるい、委員長、私も〜♡」」」」」


「あっコラ!あんた達今まで、しょ太くんの方に行っていたくせに調子がいいわよ!」


柑菜の前にハグ&頭ポンポン待ちの列をつくる風紀委員女子(敗者)達に、副委員長の姫華が怒る。


「もう!どうせなら私も並ぶわ!」


「せっかくだから、私も並んでこよっと!」


「ええっ。雅まで!」


ショックを受ける潮に、いたずらっぽい笑みを浮かべる雅。


「ふふっ。潮、悔しかったら、後で上書きハグ&頭ポンポンしてくれてもいいよ?」


「な、何言ってんだよ、雅ぃ…!///」


真っ赤になり、狼狽える潮。


「おおっ…💡上書きハグ&頭ポンポン…!!」


その二人の様子を見て、その手があったかと目を輝かせる芽衣子。


「きょ、京先輩?わ、私も並びますけど、あ、後で上書きしてくれても…。」


チラッと、京太郎の様子を窺うが…。


「おー、ヨシヨシ、メメちゃん、お手上手にできるんだな?」

「クウン!♡」


柑菜の飼い犬のメメを撫でていて、全く見ていない京太郎に涙がちょちょ切れる芽衣子。


「え〜ん。全然こっち見てくれない…。っていうか、私も頭撫でて上書きして欲しいよぉ…。」


「芽衣子嬢も並んでいたのか。」


「あっ。ハイ…。」


いつの間にか、自分の順番が来ていて、柑菜が芽衣子の目の前に立っていた。


「ふふっ。メメに負けず、メーワンコも頑張れよ?」

「クウン…。ワフン…。(ハイ…。頑張ります…。)」


柑菜は、芽衣子に激励のハグをするがすぐにワザとらしく大げさに腕を組んで困ったようなポーズをとる。


「いや、しかし、困ったな〜!頭ポンポンは、禁止されていたのだったな。飼い主に許可を取ってみるか…。オ〜イ!矢口少年!!」


「!!」


「白瀬先輩、どうかしましたか?」


「芽衣子嬢、他の人に頭を触られるの、君に禁止されているらしいんだが、せっかくの機会だから、今だけ私に許してくれないかい?」


「へえっ?!」


ニヤニヤ笑いを浮かべる柑菜にそんな事を聞かれ、頓狂な声を出してしまう京太郎。


(へえ〜、矢口くん、他の人が氷川さんの頭に触れるの禁止してるんだ…。)


(女の子もダメなんて、意外と矢口くん嫉妬深いんだね…。)


ざわめく風紀委員一同。


「い、いやっ。べ、別に、禁止してるわけじゃっ。俺に許可取らなくていいのでご自由にして下さいっ。」


焦ってそう答える京太郎に、手を合わせる柑菜と芽衣子。


「そうか、矢口少年、ごめんな〜?ちょっとだけ芽衣子嬢の頭に触れさせてもらうな?」


「じゃあ、京先輩。今だけすみません…!」


芽衣子の頭を触りながら歓声を上げる柑菜。


「おお〜、柔らかくって触り心地のよい髪だな〜。これを矢口くんは、一人占めしてるのかぁ。羨ましい限りだなぁ…!」


「はいっ。京先輩に触り心地がよいと思って貰えるように、毎日ブラッシングして、トリートメントしています!」


「め、芽衣子ちゃん…。///」


キリッと答える芽衣子に、照れ照れの京太郎。


「矢口少年、芽衣子嬢の髪を触らせてくれて、ありがとうな!」


「だから、俺に礼を言わなくていいですってぇ…。」


「そんなに触り心地いいんだぁ…。氷川さん、私も髪触ってもいい?」

「あっ。私も氷川さんの髪触りたい!」

「私も〜!」

「あっ。えっと…。」


雅や他の風紀委員女子に聞かれ、遠慮がちに京太郎を見る芽衣子。

「だから、自由にしていいってば…!」


「矢口少年、風紀委員なら、いいそうだ!皆、並んで、並んで〜。」


「いやっ。そのっ。(なんで、女子のところだけ強く言うんだよ…!)」


柑菜のかけ声で、今度は、芽衣子に風紀委員の女子の行列が出来た。


「ふふっ。矢口くん。氷川さんの髪に触らせてくれてありがとうね〜?」


「矢口くん、ありがとうね〜!」


「〰〰〰〰。だから、なんで、皆俺にお礼言うんだよぅ…//」


口々に風紀委員女子からお礼を言われ、HPを削られる京太郎であった…。


         *

         *


「きゃ〜。メメちゃん。毛並みいいね?」


「ホラホラ、メメちゃんオモチャだよ?」


「キャンキャン!」


芽衣子の頭を撫でてから、何かを愛玩したい欲求が高まってしまった風紀女子達は、今度はメメの周りに集まっていた。


「京先輩?お疲れのようですが、大丈夫ですか?雨宮先輩お手製のクッキーはいかがですか?ホラ、あ〜ん!」


芽衣子が隣の席の京太郎の口にクッキーを入れようとする。


「め、芽衣子ちゃん、自分で食べれるよ。皆の前で恥ずかし…。」

「え?でも、皆やってますよ?」


「へ?」


芽衣子の言葉に周りを見渡すと…。


「はい。潮、あ〜ん♡」

「あ〜ん♡ムグムグ…。美味しいよ、雅ぃ…。」


「委員長、どれがいいですか?」

「あっ、姫華。その、クルミ入りのチョコカップケーキを頼む。」

「これですね?はい、あ〜ん♡」


「新太くん。食べさせ合いっこしよう?」

「いいよ。夏子ちゃん。」

「「あ〜ん♡♡」」


いつの間にか、復活した三原さんと庭木くんも交え、辺り一帯、ラブラブな雰囲気に包まれていた。


「ね?だから、京先輩も…。」

「あっ。うん…。じゃあ…。」


頬を染めた芽衣子に促され、京太郎も雰囲気に流されかかったところ…。


「ああっ!!ボールがっっ!!」

ガシャーン!


突然外で子供の叫び声がしたかと思うと、窓ガラスを突き破って、野球ボールがこちらに飛んで来た。


「「きゃあっ!!」」

「メメっ!!」


皆の悲鳴と共に、ボールが怖がり、固まっているメメちゃんに、向かって行ったかと思うと…。


何か黒い影がシャッと通り、メメちゃんの方に飛んできたボールを窓ガラスに開いた穴をそのまま通る軌道で、打ち返した。


「ふうっ。危なかったぁ…。」


見れば、芽衣子ちゃんが、メメちゃんを庇うような位置に立って汗を拭いている。

あまりに人間離れした技を目の当たりにして、一同静まり返る中、柑菜は、半泣きで駆け寄り芽衣子に礼を言う。


「芽衣子嬢がメメを助けてくれたんだな?本当にありがとう…!!」


「いえ、間に合ってよかったです。」


「クフウン…ブルブルッ。」


「怖かったな?メメ、もう大丈夫だぞ?このお姉さんが助けてくれたからな?」

「!!キャンキャン!」


柑菜が震えるメメを抱き上げてそう言うと、言っている事が分かったのか、メメは、芽衣子の方に行きたい素振りを見せる。


「メメ?」

「メメちゃん?わっ!」

「キャフンキャフン♡ペロペロ…。」


芽衣子が覗き込もうとすると、感謝の気持ちを表すように、メメにほっぺを舐められる。


「ふふっ。メメちゃん、くすぐったいですよぅ…。もう、やめてぇ…。」


そう言いながらも、嬉しそうな芽衣子であった。

         *

         *


ハプニングがあったものの、幸いガラスでケガをする人もいなく、後からボールを誤って投げ入れてしまった男の子が保護者と共に謝りに来たが、柑菜と話し合いの末、弁償は求めず、何故かその子は柑菜の父の経営する空手道場に入る事となった。


風紀委員の会合もお開きになった後、風紀委員とメメに別れを告げ、帰路につく京太郎と芽衣子。


「メイちゃん、すっかり、芽々子ちゃんに懐いていたね〜。」


「きょ、京先輩?!名前交じっちゃってます。メメちゃんに、芽衣子ですから!!」


慌てて京太郎に突っ込む芽衣子。


「あっ。ごめんごめん。芽衣子ちゃんもワンコっぽいから、つい間違えちゃったよ。」


舌を出す京太郎に芽衣子は不服そうに頬を膨らます。


「もう〜。そりゃ、私は京先輩の飼いワンコでもありますが、生物学上は人間の女の子でもある事を忘れてはいませんかね…。」


チラリと、京太郎を見遣る芽衣子。


「そんなにワンコ扱いするなら、本当にワンワンになっちゃいますよ?」

「えっ。」


不意に芽衣子の顔が近付いたかと思うと…。


ペロッ。


頬に温かく湿った何かの感触を感じ、真っ赤になる京太郎。


「!!!!め、芽衣子ちゃ…!!///」


「お、お祓いです!!メメちゃんにペロペロされてたから…!!///」


芽衣子も、これ以上ないくらい真っ赤になっている。


「あ、2回目から有料でしたね?お金を…。」

「払わなくっていいってば!」


と言って、芽衣子がバックから財布を取り出そうとしているところを止める京太郎。


「お、俺も、お祓いするから、いいよ…。相殺しよ?」

「えっ。そんなシステムでしたっけ。」


「ああ。芽衣子ちゃんが嫌…なら辞めるけど…。」

「いえいえ、ぜひお祓いして下さい!」


頭を突き出す芽衣子に一瞬戸惑う京太郎。


「えっ。頭?」


「えっ。違いました?ナデナデして下さるのかと…。」


「あっ。いや、合ってるよ?違わない違わない!!///」


「そ、そうですか…??」


焦って否定する京太郎に、芽衣子はパチパチと目を瞬かせる。


(一瞬、芽衣子ちゃんに今された事と同じ事をしようと思ってしまった…。それは流石にダメ…だよな?)


夕焼けに照らされてピンク色になった、芽衣子の柔らかそうな頬をチラチラと見てしまう京太郎。


「クウウ〜ン♡♡やっぱり、京先輩に撫でてもらうのが、一番気持ちいいです〜。」


「そ、そう…?(俺も気持ちいい〜♡やっぱこの子の髪、メッチャ触り心地いいわ…。)」


止めるタイミングが分からず、しばらくずっと芽衣子の髪を撫でている京太郎であった…。


*あとがき*


来週から、嘘コク7人目本編のお話になります。

今後ともよろしくお願いしますm(__)m

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