第116話 おまけ 夏祭りの思い出③

「めーこっ〜!めーこ〜っ!!」


祭り会場で、芽衣子を探し回る京太郎の元へに、めーこ、手を振りながら走ってくる。

髪は乱れているものの、目は元通り前髪で隠している。


「京ちゃぁ〜んっ!!」

「めーこっ!!どこ行ってたんだよ?心配したんだぞ?」


芽衣子に叱りながらも、ホッとした様子の京太郎。


「ご、ごめん。京ちゃん。」


「まぁ、見つかってよかったよ。けど、

芽衣子。そのおもちゃどうした?」


謝ってくる芽衣子が、さっきの剣のおもちゃの他、銃のおもちゃも抱えているのに、気付くいて指摘する京太郎だが…。


「あっ。このおもちゃは、トラ男から『りゃくだつ』した!」


「『りゃくだつ』!?」


得意満面の笑顔でそう言われ、青褪める京太郎。


(どうしよう?めーこが不良になってしまった?!)


「め、めーこっ!!いくらトラ男からとはいえ、『りゃくだつ』はダメだろ?」


「あっ。いや、うそ!そうじゃなくて、もらったの。『君にあげるよ』って言われた!」


「トラ男がめーこに??」


気に入らない事があると、いつも問答無用で芽衣子や京太郎を殴ってくるトラ男が、おもちゃをくれるなんて?と不審げに首を傾げる京太郎に、芽衣子は必死に説明する。


「ホントだよ?めーこ、その時転んで、宇宙人みたいな目が出てしまっていたから、多分、トラ男怖くて貢ぎ物をくれたんだと思う。めーこだと、気付いてもなかったみたい。」


「う、う〜ん?(あのトラ男が、目が大きくて怖いなんていう理由で、おもちゃくれたりするかな?)」


「そ、それにっ…。トラ男の友達がこれで、鳩さん撃っていじめるって、言っててっ…。だから、めーこっ、めーこっ…。」


信じていない様子の京太郎に、説明を続けながら、泣き出してしまう芽衣子。


「分かった分かった。信じるよ!

鳩さんの為によく頑張ったな!めーこ、偉かったぞ?」

「ゔわ〜ん、京ぢゃぁんっ…。」


頭をポンポンされ、京太郎にしがみつき、号泣する芽衣子。


そこへ、芽衣子母が慌てて駆けてくる。


「二人共こんなところにいたの?探したのよっ。」


「お母さん…。」

「おばさん…。」


「あら、芽衣子、転んだの?しょうがないわねぇ。」


髪が乱れて、浴衣の裾が汚れている芽衣子を見て呆れたような声を出す芽衣子母。


「おばさん、さっきめーことはぐれちゃって、その間に転んじゃったみたいで…。俺がいたのに、ごめんなさい…。」


「いいのよ。この子、そそっかしいから。

芽衣子を見つけてくれて、ありがとうね?京太郎くん。」


すまなそうな京太郎に、笑顔を向け、芽衣子母、飲食スペースのテーブルの方を指差す。


「タコ焼き、冷めない内にあそこに座って食べちゃいましょ?めーこは、そこで髪も直すからね。」


「「はーい。」」


顔を見合わせて、笑い合うと、芽衣子母について、飲食スペースへ移動する芽衣子と京太郎。 


         *

         *


その一時間後ー。


ヒュルル…ドーン!

ヒュルル…ドーン!


「わあぁっ!」

「綺麗だなぁ…!」


夜空一面に、パアッと赤や黄、緑など、様々な色彩の花が広がり、歓声を上げる芽衣子と京太郎。

それぞれの母達も、それを微笑ましく見守る。


「ここ人も少ないし、花火綺麗に見えるわねぇ!すごいわぁ!

奈美ちゃん。いいところ教えてくれてありがとう!」


「いえいえ。昔から、やってるから、穴場で見易いところをいくつか知ってるだけよ。それより、麻衣ちゃんお祭り連れてきてくれてありがとうね?」


夏祭りの終わり際、15分程花火が上がるのが、毎年恒例になっていた。


夏祭りの途中から、合流した京太郎母に、穴場スポット(さっきの神社)を教えてもらい、4人で花火を見ていたのだった。



夜空を彩る花火を見ながら、芽衣子と京太郎は考えていた。


(花火、京ちゃんと見られて嬉しいなぁ…。京ちゃんと会ってからめーこは、びっくりするぐらい、楽しい事でいっぱいだ。

京ちゃんて、めーこの心を明るく照らしてくれる花火みたいだなぁ…。)


(花火、めーこと見られてよかったなぁ…。さっき、めーこがいなくなったときは、まるで暗闇に一人残されたみたいで怖かった。

いつの間にか俺は、めーこの事、すごく大事に思っていたんだなぁ。)


お互いに目を見交わすと、笑顔になり、自然と手を繋ぐ。


         *

         *


やがて、花火も終わり、母達と一緒に帰る途中、トラ男達とすれ違う。


「ん?天使と同じ浴衣の子…?」

「ビックゥ!!」


トラ男に視線を向けられ、バレないかドッキドキの芽衣子。

「めーこ!な、何か用か、トラ男?」


しがみつく芽衣子を守るように一歩前に出た京太郎だが…。


「なんだ。めーこと京太郎か…。同じような浴衣着てても、あの天使様とは月とスッポンだな。ダサいのはダサいの同士仲良くやってくれよ。じゃあなっ。」

「あっ。魁虎さん、待って下さいよ!」

「魁虎さん!」


「「ホッ。」」


トラ男は興味をなくしたように、ため息をついて、友達と去って行き、安堵のため息を漏らす芽衣子と京太郎。

         

         *

         *


そして、その後…。祭りの興奮冷めやらぬ

二人は自宅にて、戦いごっこを始める。


「鉛が欲しいならそう言いな!バキュンバキュン!!」


「バサッ!!フッ。また、つまらぬものを斬ってしまった…!」


「コラァっ!!あなた達、夜に暴れないの!!」


「早くお風呂に入りなさーいっ!!」


京太郎は、トラ男から『りゃくだつ』した銃のおもちゃ、芽衣子は、クジで当てた剣のおもちゃを手に大暴れして、母達に大目玉を食うのであった。


               (完)





*あとがき*


おまけの投稿は今回までで、明日から

本編の嘘コク6人目のお話となります。

通常通り、水、木、金 12時投稿となりますので、今後もよろしくお願いします

m(_ _)m

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