第115話 おまけ 夏祭りの思い出②
「その銃のおもちゃ、プラスチック弾を撃てるらしいぞ?」
「わぁ。スゲー!じゃあ、試しに鳩でも撃ってみようかなぁ!」
「それなら、神社の辺り、鳩がいっぱいいるぞ?ね、魁虎さん、行ってみましょうよ!」
「おい。おめーら、いーけど、人に見つからないようにやれよ?俺様のイメージに傷がつかないようにしてくれよな?」
トラ男と友達二人の会話を聞いてしまい、驚く芽衣子。
(ええっ!鳩さんにひどい事しようとしてる…?と、止めなきゃ…!)
トラ男達の後を、こっそり付けて、公園の隣の神社まで行く。
神社に着いたところで、トラ男と友達は辺りを見回す。
近くには、鳩が2.3羽しかおらず、トラ男達が来ると、驚いて飛び去って行った。
「ありゃ、飛んでっちゃった。今日は人が多いからか、鳩あんまりいませんね。」
「少し待ってたら、また飛んでくんじゃねーか?」
友達Aとトラ男が話していると、友達Bがお腹を押さえて言った。
「魁虎さん、俺、さっきかき氷食べ過ぎたせいか、腹が…、ちょっとトイレ行ってきます。」
「あ。お、俺もションべ行ってきます。」
つられて、友達Aもブルッと身震いする。
「来た早々何だよお前ら、早く行って来いよ。」
「「すんません。」」
神社内のトイレに駆け込む二人。
トラ男は、銃のおもちゃを抱えて、石造りの椅子に腰掛け待っている。
その様子をジッと窺う芽衣子。
(あっ。二人トイレ行った。一人の時の方が、狙い易いけど…。よりによって、残ったのがトラ男か…。)
芽衣子は、どうやったら、鳩を救えるか考えていた。
作戦① トラ男達を説得する
→99%の確率で殴られる。
作戦② 武器を奪う。
(トラ男の性格から考えて、めーこなんかが説得しても、ほぼ聞いてもらえないし、殴られる
だけだろうな…。武器を奪うのは、一瞬のスキをつけば、出来ないこともないかもしれない。どちらにしろ、失敗すれば殴られるけど…。「りゃくだつ」は、いけないことだけど、鳩さんを見殺しにする罪悪感に比べたら…。)
芽衣子は、決意を固めて、トラ男の近くに忍びより、大声を上げる。
「ああっ!!空にでっかいUFOがっ!!」
「えっ?UFO?」
(よし、チャンス!)
驚いたトラ男が思わず空を見上げたところで、油断したトラ男から、銃のおもちゃを奪おうと近付いて…。
ドベシャッ!!
盛大にすっ転んだ芽衣子。
(い、いったーい…!!今日は下駄履いてるから、機敏な動きが出来なかったんだった。)
「お、お前、何だ…?」
いきなり、目の前に現れた芽衣子に、驚くトラ男。
(ううっ。作戦②失敗。作戦①に変更!多分、殴られるだけだけど…。ごめん。鳩さん。めーこは精一杯頑張りました…。)
起き上がって涙目になりながら、トラ男に
向かい合う。
「ドキン♡き、君は…?」
転んだ拍子に、髪が乱れて、綺麗な目が露わになっていることに気付いていない芽衣子。
「え、えっと…。そ、その銃のおもちゃ、とっても楽しそうだけど…。だけど…。」
恐怖に震えながら、拳をギュッと握りしめる芽衣子。
(い、言うんだ…!鳩さんを撃つのは良くない事だって!やめなって!!)
「は…鳩さ…」
「ああ。このおもちゃ、気になるの?よかったら、君にあげるよ!」
「う、うん。そう。鳩さんが可哀想だから、そのおもちゃはもらって行くっ…て、ええ?いつの間にか作戦②が成功?!い、いいの?」
トラ男の発言にどびっくりする芽衣子。
「ああ。そんなんでいいなら、プレゼントするよ!君、パッチリした大きな目だね。この辺の子?」
「え。」
トラ男に、頬を染めて、興奮気味に話しかけられ、芽衣子は、自分の顔に手をやり、目が露わになってしまっていることに気付き、青褪める。
(し、しまった!めーこの宇宙人みたいな気持ち悪い目が外に出てしまっている!!
トラ男、もしかしてめーこの顔があまりに怖いから貢ぎ物に、銃のおもちゃを差し出して来たのかな?めーこだと気付いてないみたいだし…。だとしたら、この場は結果オーライ?)
「全然この辺の子じゃないよ!すごく遠いところから来たの。銃は有り難く頂きます。」
ガッチリと銃のおもちゃを抱える芽衣子。
「あ。じゃあ、代わりに、この剣のおもちゃをどうぞ。」
とさっきくじで当たった剣のおもちゃを渡そうとする芽衣子だが、トラ男に断られる。
「いや、別にそんなつもりじゃないから、いいよ。」
「ええ?いらないの。」
(めーこの顔が怖いから受け取れないのかな?)
「ああ。それより、そういうおもちゃが好きなら、俺の家にいっぱいあるから、今度、遊びに来な…。」
「…いこぉ〜!どこだぁー?」
その時、かすかに京太郎の声を聞き取った芽衣子。
振り返れば、祭り会場の公園で、急に姿を消した芽衣子を探し回っている京太郎の姿が、見えた。
(京ちゃんが、めーこを呼んでいる!!)
「すみませんが、私はもう自分の星に帰らなければいけませんので、これで!銃のおもちゃありがとう!」
「え、ちょっと待っ…!」
そう言って、芽衣子はトラ男の前からダッシュで立ち去ろうとして…。
(あっ。そう言えば、さっき一つだけ京ちゃんに分けてもらったものが…。大事なものだけど、もらうだけっていうのも…。)
もう一度戻って来て、トラ男の座っている椅子に、何か小さな球を置いてく。
「?!」
「せめて、これだけどうぞ!じゃっ!!」
「あっ。君…!!」
芽衣子は、一目散に祭り会場に戻って行った。
「あ〜、スッキリした!」
「さぁ、魁虎さん。銃のおもちゃ使わして下さいよ?」
「あ。わり〜、他の子にあげちゃった!」
トイレから戻ると、トラ男にあっさりそう
言われ、ショックを受ける友達二人。
「ええっ!嘘でしょ?!」
「そりゃ、ないっすよ、魁虎さん〜!」
「すまんな。突然天使がこの地に舞い降りたので、貢ぎ物が必要だったんでな。」
芽衣子の残していったスーパーボールを握り締めて、ポーッとしているトラ男。
「天使?何言ってんすか、魁虎さん〜!」
「銃のおもちゃ〜!」
「泣くなお前ら!今度は射的でもっといいの、当ててやるから。」
半泣きの友達を宥めてまた、祭り会場に戻るトラ男だった。
(更に続く)
*あとがき*
小学生の頃のトラ男、悪ガキでしたが、この頃はまだ可愛いものでしたね。
もしかしたら、気付かない内に芽衣子ちゃんが初恋だったかもしれません(^_^;)
次回で夏祭り編終わるかと思います。
今後もよろしくお願いしますm(_ _)m
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます