第114話 おまけ 夏祭りの思い出①
京太郎9才、芽衣子8才の夏休みー。
夏休みは、お互いの家を行き来して遊んだり、宿題をしたり、アイス(たいていソーダバーかチューペット)を食べたりして過ごしていた京太郎と芽衣子。
8月上旬のある日。
今日は、母の帰りが遅い為、京太郎の家で
夕食をごちそうになり、
金曜ムービー「ルパ○三世 ピラミッドの秘宝」を、京太郎と並んで見ていた芽衣子。
画面には、ル○ンと共に、秘宝を狙う敵を次々とやっつけていく次○と、五○衛門の姿が映し出されている。
「次○カッコイイなぁ…。」
「五○衛門カッコイイなぁ…。」
京太郎と芽衣子、同時に発言し、顔を見合わせる。
「あれ?めーこは五右○門が好きなんだ?初めて意見が別れたな。」
「あっ…、ちが、あの、私もやっぱり、京ちゃんと一緒で、次○が好きかも…。」
意外そうな顔をする京太郎に、焦って否定しようとする芽衣子。
この頃、京太郎大好きな芽衣子は、好きなものも嫌いなものも京太郎と一緒にしたいと思っていた。
しかし、京太郎は逆に残念そうな顔をする。
「あっ。そうなのか?もし、芽衣子が五右○門好きなら、それぞれ刀と銃で戦いごっこできると思ったんだけど…。そしたら、家にある銃のおもちゃ、芽衣子に譲ってやるよ。」
「えっ?あ、やっぱり、嘘!私、本当は五○衛門好き!」
京太郎の家には、刀と銃のおもちゃが一つずつあったので、それぞれ好みが別れた方が
楽しく遊べる事に気付いて、慌ててまた訂正する芽衣子。
「そうか?そしたら、刀のおもちゃ貸してやるな?」
「うん!ありがとう京ちゃん…!」
(いつも一緒のものを好きでいたいと思ったのも初めて。でも、時には別のものを好きな方がうまくいく時もあるって分かったのも初めて。
京ちゃんと、一緒にいると、いつも素敵な発見があるなぁ…。)
京太郎と一緒にいられる嬉しさを噛みしめる芽衣子。
そこへ、芽衣子の母が帰ってきた。
「お邪魔しまーす。」
「あ。お母さん…。」
「奈美ちゃん。遅くまで芽衣子をごめんね?」
「あっ。麻衣ちゃんお帰りなさーい。全然大丈夫よ?芽衣子ちゃん、すごくお利口さんでお手伝いもしてくれたんだよ。ねっ?」
「は、はいっ。(トマト洗うとか、レタス千切るとかだけど)チョットだけ…。」
京太郎母に言われ、緊張ぎみに答える芽衣子。
「奈美ちゃん明日はお仕事だったわよね?」
「うん。そうなの。申し訳ないけど、明日は京太郎お願いします。」
「うん。任せといて?明日は近くで夏祭りがあるみたいなんだけど、京太郎くん、芽衣子と一緒に連れて行ってもいいかしら?」
夏祭りのビラを見せる芽衣子母。
「「夏祭り!?」」
色めき立つ芽衣子と京太郎。
「ああ。毎年中央公園でやってるやつね…。麻衣ちゃん、ありがとう!大変じゃなければお願いしてもいい?私も仕事終わったらすぐ駆けつけるから…。」
「もちろんよ。京太郎くん、もし浴衣とかあるなら着付けるけど…。」
「奈美ちゃん、ありがとう!助かるわぁ。
ちょっと待ってね?サイズまだ大丈夫かな?」
と、クローゼットに浴衣を探しにいく京太郎母。
「夏祭り、楽しみだな?めーこ!」
「うん!楽しみだね?京ちゃん!」
京太郎と芽衣子はわくわくした様子で顔を見合わせた。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇
翌日ー。
芽衣子は、黄色いひまわり柄にピンク色の帯の浴衣、
京太郎は、黒の絣模様に紺の帯の浴衣をそれぞれ芽衣子母に着付けてもらう。
(きょ、京ちゃん、浴衣似合う…!か、カッコイイ…♡)
(芽衣子、浴衣似合って可愛いな…♡
髪もいつもと違うお団子にしてる。
相変わらず目は前髪で見えないけど…。)
お互いの姿を見て照れ照れの二人。
そんな二人見てを微笑ましく思う、芽衣子母。
「ふふっ。二人共浴衣似合うわね〜!さっ。早速夏祭りにレッツゴーよ!!」
「「おー!」」
*
*
夕方前、お祭りの開催されている公園には、もう既に人がたくさん来ていた。
食べ物や、くじ、おもちゃ、金魚すくいなどの出店が立ち並んでいる。
「二人共、たこ焼きと焼きそばとか売ってるけど、なんか食べたいものある?」
「「たこ焼き食べたい!」」
京太郎と芽衣子ハモって顔を見合わせる。
今回は、本当に二人共好みが同じだったらしい。
「よし。じゃあ、たこ焼き…って、結構列長いわねぇ!そしたら、お母さん、ここで並んでるから、二人共いくつか好きなとこ回って来ていいよ?」
芽衣子母、芽衣子、京太郎それぞれの手に300円を渡す。
手を繋いで、出店を回る事になった京太郎と芽衣子。
「よし、じゃあ、芽衣子どこ行きたい?」
「んー。あ、あれ食べたい!」
わたがしを指差す芽衣子。
*
*
「あー。美味しかった。」
「わたがし、もう食べたのか?芽衣子!」
割り箸に山盛りになっていたわた菓子を一瞬で食べ尽くす芽衣子に驚く京太郎。
「えへへ。私、わたがし食べるのだけは早いって言われるんだぁ!」
「わたがし好きなんだな?少し俺の分もあげるよ!」
「いいのっ?京ちゃんありがとう!!」
わたがしのふわふわを少し千切って芽衣子に渡そうと差し出すと、芽衣子は、京太郎の指ごとわたがしをパクっと口に入れる。
「め、芽衣子っ?!」
指に芽衣子の柔らかい唇と舌の感触を感じて、ドキッとする京太郎。
芽衣子はドギマギしている京太郎に慌てて謝る。
「あっ。ごめん。なんか、わたがしも、京ちゃんも両方美味しそうだったから、思わず口に入れちゃった…って、めーこ何言ってるんだろ?!汚かったよね?ごめん!」
持っていたカゴバックから、ウェットティッシュを出して京太郎の指を拭く芽衣子。
「い、いや、別に汚いとかでは…。ちょっとびっくりしただけで…。」
(めーこは妹みたいなものだ。こんなのは、何でもない事だ。)
自分に言い聞かせながら、真っ赤になる京太郎。
わたがしを食べ終わると、再び出店を見て回る事に…。
「次は京ちゃんの行きたいとこ行こっ。どこがいい?」
「う〜ん。どうしよっかな。」
京太郎が考え込んでいると、おもちゃのくじをやっている出店の前で立ち止まった。
「わぁ。あのおもちゃ、カッコイイなぁ…。」
くじの景品に、銃のおもちゃがあり、気になる京太郎。
「坊や、気に入ったのかい?これ、本当にプラスチックの弾を撃てる奴だよ。」
「へぇ。すごい!」
出店のおじさんに説明され、目を輝かせる。
「運試ししてみるかい?」
「う〜ん、でも、俺くじ運悪いんだよなぁ…。」
迷う京太郎に、芽衣子が後押しする。
「京ちゃん、やってみようよ。私もくじやってみたいな。」
「じゃ、じゃあ、お願いします。」
「あいよ!そしたら、二人共、すきな番号の札を選んでね。」
「うーん。じゃ、これ!」「めーこはこれ!」
京太郎は7番、芽衣子は8番を選ぶ。
札の紐を引いていくと、それに繋がっていたおもちゃは…。
「あ〜、スーパーボールだった…。」
「何これ、光る剣…?」
肩を落とす京太郎と、思わぬ大物を当てて驚く芽衣子。
「坊やは残念だったけど、スーパーボールも面白いから遊んでね。
お嬢ちゃんは大当たり引けて、よかったね!」
くじのおじさんは、二人にそれぞれの景品を渡す。
「すごいな。芽衣子!いいの当たってよかったな?」
「う、うん…。」
京太郎にそう言われながらも浮かない顔の芽衣子。
(嬉しいけど…、ホントは京ちゃんにあの銃当たって欲しかったんだけどなぁ…。あっ。そうだ…!)
「芽衣子。お金も使い切ったし、そろそろおばさんのところに戻ろう…って、アレ、めーこ?めーこっ?」
後ろに付いてきていた筈の芽衣子がこつ然と消え、焦る京太郎。
*
*
「おじさーん!」
さっきのくじの出店まで走って戻ってきていた芽衣子。
「あれ?さっきの大当たりの嬢ちゃん。どうしたんだい?」
「この景品返すから、さっきの銃のおもちゃと交換してもらえませんか?同じぐらいいい景品でしょう?」
必死に頼み込む芽衣子だが、おじさんは、申し訳なさそうに言った。
「お嬢ちゃん。ごめんね。景品は、番号とセットになってるから、そういうワケにはいかないんだよ。」
「やっぱりダメかぁ…。」
しょんぼりする芽衣子。
「それに、銃のおもちゃは、さっきくじで当たった子がいてね。あ、ホラ、あの子だよ。」
「!!」
少し離れたところに、何人かの少年が並んで歩いていて、その内の一人が、銃のおもちゃを手にしていた。
「さっすが魁虎さん!くじでいきなりこんなの当てちゃうなんて…!」
「ホント、マジすげーっす!魁虎さん!」
「まぁな、俺、持ってる男だからな。でも、銃のおもちゃなら、もっといいの家にたくさん持ってるんだけどな。お前らにこれ、やろうか?」
「え!いいんすか?」
「やったー!!」
銃のおもちゃを抱えてニヤニヤ笑いを浮かべて友達と話している、体格のよい少年の顔を見て芽衣子は愕然とした。
「と、トラ男…!」
(続く)
新年明けましておめでとうございます🌅
いつも読んで頂き、フォローや、応援、評価下さって本当にありがとうございます!
今年もどうかよろしくお願いします
m(_ _)m
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