第123話 事件は現場で起こっているんだ!
「うん。ここの箇所韻を踏んでて、リズム良く読めたよ。」
「えへへ〜。そこの語末の韻、苦労したんですよぅ!」
俺の左隣に座っている、三つ編みの髪をツーサイドで赤いリボンでお団子にまとめている小柄な女生徒が、口元の笑みを可愛らしく隠した。
「あと、この直した部分、一部分の表現だけにした事でより印象強くなって、全体の雰囲気が伝わってくる。俺、詩の事は詳しくないけど、前より格段に良くなったと思うよ?」
「ホントですかぁ?」
「うん。
「えっ!す、好きぃっ!?やだぁ!
もぅ矢口くん、口が上手いんですからぁっ!!」
「いてっ!」
照れた彼女に、ベシッと思い切り背中を叩かれ、俺は声を上げた。
「ねぇねぇ。私の挿し絵はどうです?以前と画材変えて見たんですけど…!」
俺の右隣に座っている、左隣の女生徒と瓜二つで同じように三つ編みを青いリボンでまとめている小柄な女生徒が、焦れたように俺に意見を求めてきた。
「あっ。うん。水彩画から、パステル画にしたんだっけ?前も優しいタッチで、よかったけど、今の方がぼかし方に暖かみがある感じで、うさぎのフワフワ感が出ててるよね。」
「えへへへ〜。そう。うさぎのフワフワ感出したかったんですよぉ。」
「
「か、可愛らしいだなんて!矢口くん、本当に口が上手いんですからぁっ!!」
「いてっ!」
俺は右隣の女生徒からもベシッと背中を叩かれた。
「ま、まぁ、紅ちゃんの詩と、碧ちゃんの挿し絵、セットで素敵な作品になってると思うよ?大切なもの読ませてくれて、ありがとう。」
俺が双子の女生徒にそれぞれの原稿を返した。
「力仕事とか、他にもなんか、手伝える事あったら、言ってね?」
言いながら、機嫌の悪そうなボブカットの女生徒の顔が浮かび、声を潜めて付け足した。
「あ。部長に見つからないようにこっそりだけど…。」
と、双子は、声を揃えて礼を言ってきた。
「「は、はい、ありがとうございます。」」
「じゃ、俺はそろそろ失礼するね?ちょっと約束があって…。」
「あっ…。彼女さん…ですか?」
「あの綺麗な茶髪の一年生の子ですね…?」
双子に一度に、突っ込まれ、俺は少し狼狽えた。
「あっ。うん。い、いや…か、彼女とかでは…ないんだけど…。」
(まだ…。)
最近、芽衣子ちゃんとの関係を否定する度に心の中でそう付け足してしまう。
そんな自分自身に気付いて顔が熱くなっていると、何故か双子は顔を曇らせて、顔を見合わせた。
「(あの噂はやっぱり…。ああ、部長…!)矢口くん、お時間とってもらってありがとうございました!では、私達も、これで失礼します〜!!」
俺の目の前で双子はペコッと揃ってお辞儀をすると、タタッと走り去って行った。
それを苦笑いで見送り、俺も早く行かなきゃ。芽衣子ちゃんを待たせてしまっている、と立ち上がった途端…。
般若のようなオーラを身に纏った茶髪美少女と、腕組みをしているポニーテールの風紀委員長と目が合った。
「芽衣子ちゃん…?白瀬先輩…?」
え?何で二人がここにいるんだ?
何、この張り詰めた、圧迫感のある空気…?
「矢口少年に言いたい事があったのだが、今日は取り込み中のようだから、失礼するよ。」
白瀬先輩は、呆れたような表情で、ため息をつくと、最後に蔑むような一瞥をくれた。
「君、いいご身分だな?」
「え?え?」
踵を返して去っていく彼女に戸惑っていると、後ろに怨念に満ちた気配を感じて背筋がゾクッとした。
「京先輩……。」
恐る恐る振り向くと、暗黒のオーラを身に纏う芽衣子ちゃんが、そこにいた。
「用事って、双子の可愛い女の子達とイチャイチャ姉妹丼することだったんですね…。」
「はいぃ?芽衣子ちゃん。ど、どうしてそうなるんだよ?」
俺は、いつもと違う芽衣子ちゃんの様子にビビりながらも、問い返した。
「好きだとか、可愛らしいとか、あの女の子達を口説いてたじゃないですか!」
涙目で叫ぶ芽衣子ちゃんの言葉を、俺は必死に否定した。
「いや、それは芽衣子ちゃんの勘違いだって!それは、作品の事を…。」
「はい。本当に勘違いするところでした。
最近、京先輩の態度が変わったのは、
“たらし”になってしまったからだったんですね?」
「た、たらしって…。」
「ううっ。所詮、京先輩にとっては、私なんか一匹の『キープわんこ』に過ぎなかったんです。
ああ〜ん!京先輩が、ヤリ○ンになってしまったあぁっっ!!」
「ちょ、ちょっと待ってよ!芽衣子ちゃん!!」
泣きながら走っていく芽衣子ちゃんの後を追いかけていると、突然、彼女が、階段の手前で足を滑らせた。
「ひゃあっ!」
「芽衣子ちゃん、危なっっ…!!」
俺は、咄嗟に彼女の体を支えようと手を伸ばし…!
グワシッ!!
!!!!
「きゃああああぁん!!」
彼女の胸を両手で思い切り鷲掴みしてしまった!!
「や、柔かっ!?」
ふくよかな彼女の胸に俺の指が沈み込む。
無意識にそのたぷんとした弾力のある柔らかさを味わいたいと指が欲していたのだろうか?
モニュモニュモニュ…。
「あっ、ああんっ。こんなところでダメェっ♡♡」
「はっ…!」
気が付くと俺は芽衣子ちゃんの胸を揉みしだいてしまったようで、彼女は甘い声を上げていた。
「どうした?大丈夫かっ?」
悲鳴を聞いて再び戻って来た風紀委員長=白瀬柑奈先輩が見たものは…。
俺が一年の茶髪美少女の胸を揉み、悲鳴を上げさせているシーンだった。
「し、白瀬先輩っ!ち、違うんです!これには訳が…!!」
「ああんっ♡」
滅多な事では動じない白瀬先輩も、青褪め、氷点下のような視線で俺を貫いた。
「や、矢口少年…!!君は校内で、なんと
ハレンチな事を!!この一件は、風紀委員で預からせてもらおう!!」
*あとがき*
いつも読んで頂きまして、フォローや応援、評価下さってありがとうございます。
カクヨムコン読者選考期間につき、格別に配慮下さった読者様がいらっしゃいましたら、本当にありがとうございました✨🙏✨
今後もよろしくお願いしますm(_ _)m
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