第119話 友情の亀裂と再生

「くぅっ。清楚な美少女の純潔が…。」

「畜生…フツメンのくせにあんな美少女と…!」

「嘘コクの矢口のくせに生意気だぁ…!!」


「あっ。矢口だ!ね、知ってる?あの話…。彼、ついに氷川さんと…。」


「知ってる知ってる!あんな美少女を虜にするなんてすごいよね。案外ソッチの方、上手なのかな?」


「きゃーっ!フツメンの矢口のくせに生意気だぁ…!!」


昼休み、久々に芽衣子ちゃんのお弁当を堪能した後、教室に戻ろうとしていた俺は皆の好奇の視線を受け、戸惑った。


二学期始まってから、何だか周りが騒がしい気がする。


一学期、校内放送で、芽衣子ちゃんと共に時の人となって一時的に俺の株が時があったが、そこは所詮平凡な俺のこと、評価も前よりちょい上ぐらいに落ち着いていた筈だ。


定期的に嘘コクの事で噂されているのは、慣れているけど、そういう、嘲笑や、からかい、侮蔑の視線とも違うらしい。


男子は俺に殺意と嫌悪に満ちた視線を、

女子は頬を染めて興味津々な視線をこちらに向けてくる。


一体なんだろう?と首を傾げながら

教室へ入ると、スギとマサが俺の席で待ち構えていた。

二人は、何やらドス黒いオーラに包まれており、俺の姿を見るなり睨み付けてきた。


「おぅ。京太郎。やっと帰ってきたか。」


スギがスチャッとかけ直したメガネが暗黒の光を放った。


「京太郎。締まりのない顔しやがって、いい身分だな。」


マサの締まりのない腹がポヨンと揺れた。


「お、おう。な、何、どうしたんだ?なんか二人共雰囲気怖いぞ?」


俺は怯みながら声をかけると、二人は更に俺に詰め寄ってきた。


「京太郎!俺はお前にこんなに早く裏切られると思わなかったぜ。」


「京太郎!氷川さんとは、ただ嘘コクを通した関係だから、進展も何もないと言っておいて!お前の言葉を信じた俺がバカだったよ!」


「はあ?お前ら、何言って…。」


「「お前は『陰キャカースト底辺同盟』から除名だっっ!」」


「だから、二人共何言ってんのか分かんねーよ!『陰キャカースト底辺童貞同盟』って、この前より字数増えてないか?

何を理由に怒ってるのか、1から説明してくれよ。」


「惚けるなよ。京太郎が、氷川さんと深い仲になって、夏休み中彼女の家でヤりまくって

たって学校中の噂になってるんだぜっ?」


「はああっ?!」


寝耳に水の事に、俺は大声を上げた。


「んな事してねーよっ!彼女とは嘘コクを通した先輩後輩の仲だって!まだっ!!」


「「?」」


大声で反論したところ、つい付け足してしまった言葉を二人は聞き逃さなかった。


「あっ、いや…。な、なんでもない…。」


「でも、京太郎、氷川さんの家に行った事はあるんだろ?」


「あ、あるけど、親御さんがいるときか、蛍光灯を換える手伝いで短時間行っただけで、

彼女に手を出すなんて、そんな事は断じてしていないよ!」


そこだけは、彼女の名誉の為にもちゃんと誤解は解かなければと、俺は必死に主張した。


「それだって、何度かしかないし、夏休みの前半は、バイトで顔を合わせるぐらい、

後半は彼女が島の方にバイトに行っちゃったから、ほとんど会えてなかったし、噂みたいな状態は物理的に不可能だよ。」


「ふーむ。スギはどう思う?信じるか?」


「うーむ。そうだな…。」


マサが、難しい顔で腕組みをしながらスギに聞くと、スギは、顎に指をかけて少し考えると…。


「よーし!そこまで言うなら、これからする俺の質問への答え次第で、信じてやろうじゃないか。」

「お、お、おう…?」


突然人差し指を突き付けられ、俺は戸惑った声を漏らしてしまった。


「第一問 コンドームの使用期限はどのぐらい?」

「ええっ?」


いきなり、なんて質問するんだよ、スギ?!

俺は戸惑いながらも、必死に頭を巡らせた。

そうだよな。ゴム製品だから、期限あるんだよな。結構短そう…だよな。


「えーと、3ヶ月…ぐらい?」


「ブーッ!不正解!!」


スギは容赦なく、バッテンマークを出した。

なんか、デジャブ…。誰かさんにも同じ事された覚えがあるな…。


「正解は、3年〜5年でした!」


「そ、そうなんだ…。」


意外と期限長かった…。スギの隣のマサも「そうなんだぁ」と感心顔で聞いている。


「第二問 めちゃう○や、う○ぴた、0.○1ス○ンなど、一般的なコンドームの10個入りの価格はどれくらい?」


うっわ、全然分かんねー。精密に作られてそうだから、そこそこ高そうだよな?


「ご、5000円位…か?」


「ブブーッ!不正解!!高すぎだ!せいぜい800円〜1500円位だろ。」


「そ、そうなんだ…。」


意外と安かった。俺のお小遣いでも十分買えそうだ。いや、買わないけどね?使用予定ないし…。と思いつつ、ふいにこの間の芽衣子ちゃんのパンチラが思い浮かび、慌てて打ち消した。


駄目だって!誤解を解こうとしてるときに、そんな妄想しちゃ!!


「第3問 コンドームを持ち運ぶ場合、保管場所はどこがよい?」


お。これなら、答えられそうだな。


「財布!」


確か、運動部の先輩で、ここに保管してるっていう人がいたよな…。

自信満々で答えた俺に、スギは容赦なくバッテンマークを出した。


「ブブブーッ!不正解だ!!」


「ええ〜、駄目なのか?」


俺は、その場に崩れ落ちた。


「コンドームは銅に弱いから、10円玉の入ってる財布の中に入れたら、いけないんだと。缶のケースや、ハードケースの名刺入れとかで保管するといいらしいぞ?」


「そうだったのか…。」


スギの詳しい説明を受け、納得はできたけど、結構知らないでそこ入れてる人多そうだな…。


「ふーん。財布駄目なんだぁ。」


よかった。マサも知らなかったらしい。


「全問不正解の京太郎の判決は……!」


スギのメガネが怪しく光り、俺はゴクッと息を飲んだが…。





「無罪だ!」

「は?」



「いや、疑って悪かったな。京太郎!」

「何だよ、ソレ!!不正解だったら無罪のクイズだったのかよ?」


満面の笑みを浮かべて肩を叩いてくるスギに俺は文句を言った。


ったく、真面目に答えて損したぜ…!


「京太郎、俺も疑って悪かったよ。

『陰キャカースト底辺童貞同盟』へお帰り。」


マサもすまなそうに謝ってきたが、いや、そんな同盟入った覚えないんだけど。


「これで、3人の友情は元通りだな。」

「まぁ、誤解が解けたならよかったけど…。」


にこやかな二人に絆されそうになりつつも、

何か腑に落ちない事があるような気が…。

はっ。


「スギはどうしてそんなに、コンドームについて詳しいんだ?」


「ギクッ。」


俺の疑問にスギは、動揺して肩を揺らした。


「はっ!本当だな?ス、スギもしかして俺達よりひと足先に大人に…!?そ、そう言えば、親いないとき、彼女の家に勉強教えに行ってたよな…。まさか、その時に…。」


マサが震えながら、スギに人差し指を突きつけたところ…。


「それが、違うんだ…。」

スギはガックリと肩を落とした。


「確かに親はいないけど、彼女小さい弟がいて、全然そんな雰囲気にならなかったんだ…。弟くんの相手しながら、勉強教えただけだよ。」


「え。じゃあ、コンドームに詳しかったのは…。」


「ううっ。本当は期待して、準備だけはバッチリしてたんだぁ…。」


「「ス、スギ…。」」


その場に座り込み、きゅうりの塩漬けのようにしょっぱい顔になっているスギに俺達は、一童貞として温かい視線を向けた。


「それは残念だったな…。よし、スギ、今日、久々に俺達でラーメン屋でも行くか?」


「いいな。うん。行こう。俺達の奢りだぞ。スギ。」


「いいのか?あっ…。でも今日は彼女の弟の誕生日だから、家に呼ばれてて…。プレゼントにポケ○ンカード渡さなきゃ…。ごめん。京太郎、マサ。」


申し訳なさそうな顔になるスギに俺とマサは慌てて言った。


「それなら、明日。明日行こう、スギ!」

「うん!明日行こう!」


「ううっ。ありがとう!京太郎…。マサ…。」


涙ぐむスギに俺とマサは心の中で呼びかけていた。




スギ、お帰り…。


『陰キャカースト底辺童貞同盟』へ…。








*あとがき*


いや、何なの…?と思われた方すみません(;´∀`)💦


なお、コ○ドームについては、ネットでさらっと調べたぐらいで、あまり詳しくありませんので、訂正するべき箇所がありましたら、教えて下さいm(_ _;)m💦💦

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る