第111話 おまけ 鷹月師匠の下での修行 前編
〈鷹月師匠との出会い〉芽衣子9才
T市のキックボクシングジムにて。
「ええっ!?芽衣子ちゃん、今度はサンドバッグ壊したの?」
「ご、ごめんなさい…。」
トレーナーに驚かれ、しょんぼりする芽衣子。
サンドバッグが、芽衣子の一撃に傷ついて、中身が全部出てしまっている。
それを見て、一緒にキックボクシングを習っている子供達がザワつく。
「あの子また、モノ壊したの?前は、床板蹴り抜いてたよね?」
「乱暴すぎて、一緒に戦いたくない。
対戦中に殺されそう…。」
あまりに強かった芽衣子。
義弟の静くんからは、見直されたものの、他の子供達からは遠巻きにされていた。
ため息をつく芽衣子。
(はぁ…。最初はトレーナーさんも、スゴイって褒めてくれたけど、今では私の事面倒な子だと思ってるみたい…。私、ここでもやっぱり落ちこぼれなのかな…。しゅん…。)
そこへ、たまたま、ジムの視察に来ていた
鷹月師匠から声をかけられる。
「こんにちは。芽衣子ちゃんといったかの?さっきのサンドバッグを壊したときの蹴り、最高じゃったぞ?
ワシの下で君のその才能、もっと伸ばしてみんかの?」
「え…。でも、めーこが練習すると皆に迷惑かけちゃう…。」
及び腰の芽衣子に、にっこり微笑む鷹月師匠。
「大丈夫!芽衣子ちゃんの為に絶対壊れない特別な施設を用意しよう。」
「えっ。でもお金…。」
「お金の事は気にせんでいい。君の蹴りを見たとき、君の才能を伸ばす事が、ワシの使命じゃと感じたんじゃ。
芽衣子ちゃんはキックボクシングで強くなって何かやり遂げたい目標とかないかの?」
「えっ。目標…?」
芽衣子の頭にある計画が浮かんだ。
トラ男をぶっ飛ばして京ちゃんを守る。
↓
京ちゃんと結婚する。
「ありますっ!!」
ふんすっと鼻息荒く叫ぶ芽衣子。
「よし!その目標ワシが叶えてやろう。」
満足そうに微笑む鷹月師匠と握手を交わす芽衣子。
〈島合宿〜あーちゃんとの出会い〜〉
芽衣子11才
それから、2年ー。鷹月師匠が特別に用意してくれた施設で、トレーニングに励み、メキメキ実力をつけた芽衣子。
鷹月師匠から、キックボクシングの合宿に誘われる。
「島合宿?」
「ああ。毎年夏に、よりすぐりの弟子達を集めて、ワシの所有している島で、自給自足をしながら、キックボクシングのトレーニングに励むという合宿を行なっているんじゃが、芽衣子ちゃんもぜひ参加してみんかの?」
更に一回り強くなれるという鷹月師匠の言葉に、参加する事にした芽衣子だが…。
島についてー。
合宿中のルームメイトは、南晶(17)。
6才年上の綺麗なお姉さんに、気後れする芽衣子。
「み、南さん、よろしくお願いします。」
「あんたが、氷川芽衣子って子?
鷹月師匠が、かかり切りで教えている子だっていうから、どんな子かと思ったら。
なんか思ってたより、パッとしない子ね。
とにかく、同室だからって、迷惑かけないようにしてね?」
「は、はい…。(しゅん…。南さん、キレイだけどちょっと怖い人…。)」
畑仕事の後、トレーニングに次ぐトレーニング。
「うげーっ。ゲボゲボッ。」
あまりのキツさに食べたものを吐いてしまう芽衣子。
「うえーん。京ちゃん。帰りたいよう…。」
部屋で、京ちゃんの写真を片手に涙していると、晶に興味を持たれる。
「何、あんた、その写真。もしかして、好きな子?」
「ドキッ。そそ、そんなんじゃ、ななな…。」
真っ赤になる芽衣子。
「ハハッ。分かり易っ!なかなかカッコイイ子じゃん。アタシ、島出たら、その子にアプローチしちゃおうかな?」
「えっ!!ダ、ダメッ!!」
(こんな綺麗な年上のお姉さんに迫られたら、京ちゃん好きになっちゃうかもしれない!)
青褪める芽衣子。
「ふふっ。どうするかは、勝負で決めない?
ちょうど、今日の夜最後のトレーニングは、トレーニング場で鷹月師匠の弟子総勢100人で戦う大乱闘戦になるらしいわよ?」
「大乱闘?ス○ッシュブラザーズ??」
「まぁ、リアルス○ブラみたいなものかしらね。そこで、アタシに勝てたら、その子にアプローチするの諦めてあげる。その代わり、私に負けたら、あんたがその子を諦めるのよ?」
「え、ええっ!!」
えらいことになったとわなわな震える芽衣子。
(この戦い絶対に負けるワケにはいかない!!)
トレーニング場にてー。
いよいよ始まった大乱闘戦。
「ひでぶっ!」
「あべしっ!」
筋肉ムキムキの屈強な弟子達を次々と倒していく、芽衣子と晶。
そして、最後、芽衣子と晶の一騎打ち。
「最後まで残るなんて、あんたやるじゃない!でも、ここまでよ。鷹月師匠の見ている前で、負けるワケにはいかないわ…!!」
「わ、私だって、負けないもん!」
ドカッ!バキッ!!ガガガッ!!
激しい攻防戦が繰り広げられる。
「晶さん…強い!!」
晶の攻撃に押され気味な芽衣子。
(でも、負けるワケにはいかない。だって、負けちゃったら…!)
京ちゃんと、晶が、イチャイチャデートをするイメージを思い浮かべる。
「だっめぇぇーーっっ!!!」
渾身の力で、蹴り上げ、晶を弾き飛ばす。
「ぐっはぁー!!」
床にぐったりと横たわる晶。
「今夜の乱闘戦、優勝者、氷川芽衣子ー!!」
高らかに鷹月師匠の声が響き渡る。
「やった!!ビクロイ?」
「それ、ゲーム違うでしょ?アイテテ…!」
ガッツポーズをとる芽衣子に突っ込みつつ、脇腹を押さえる晶。
「あんた、鬼みたいに強いわねぇ!!
悔しいけど、完敗よ…。あんたの男には手を出さないで、おいてあげるわ。」
「あっ。でも…。」
晶の言葉に、困った顔をする芽衣子。
「勝負に勝とうとムキになってなんだけど、晶さんが本当に京ちゃんを好きなら、私にそれを止める権利なんてないし…。晶さんが好きにしたらいいと思うよ…。」
「あんたって、バカみたいにお人好しねぇ…。」
しゅんと俯く芽衣子に、呆れたようにため息をつく晶。
「あのねぇ、私が好きなのは…。」
ひそっと芽衣子の耳元に囁く晶。
「(鷹月師匠よ…!)」
「へっ?!」
目を丸くする芽衣子。
「でも、私男の子だし、なかなか想いを伝えられないから、女の子として、普通に男の子に恋ができるあんたが羨ましかったのよ…。意地悪してごめんね?」
照れたように笑う晶に、ホッと脱力する芽衣子。
「そっか。晶さん、京ちゃんが好きなワケじゃなかったのか…。よ、よかったぁ…!」
「そこは、女の子じゃないことに驚くべきじゃないかしら?」
「もちろん驚いたけど、男の子でも、
晶さん、綺麗だから、京ちゃん取られちゃうかもしれないもん!本気じゃなくてよかったよ。」
「あんた、ホントブレないわね…。」
苦笑いする晶。
「晶さんの恋、私協力するよ?できる事あったら何でも言って?」
「ま、まぁ、アタシは半分諦めてるからいーのよ。それよりあんた、好きな男がいるのに、こんなに強くなっちゃっていいの?」
「えっ?」
「普通の男の子なら、あんまり強過ぎる女の子って引いちゃわない?」
「え。そう…なの!?」
愕然とする芽衣子。
新たな問題が浮上したのであった。
(続く)
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