第56話 図書室での再会
嘘コク四人目の情報を聞いて、モヤモヤするところはあったものの、その後秋川先輩との対決にいっぱいいっぱいになってしまって、その後もデートや、剛田先輩、細井先輩
のことで、紛れてしまっていた。
とにかく、神条先輩のいる図書室には京ちゃんを近付けない方がいいと思っていたのに、
自分でそういう方向に持っていってしまうなんて、なんてバカなの?
でも、確か、マキちゃん、昼休みは神条先輩当番じゃないって言ってたよね?
京ちゃんは何としても四人目から守らなければ…!
私は図書室の前の廊下まで来ると、京ちゃんに、悲壮な決意を胸にお願いした。
「京先輩、ちょ、ちょっと、ここで待っててもらえますか?ここは汚染区域である可能性があるので、安全を確認し次第、大丈夫そうでしたらすぐお呼びしますので…!」
「え?何?汚染区域って…?」
「決して私が来るまで、図書室に入っては行けませんよ?危ないのでこれ、巻いてて待ってて下さい。」
私は、お弁当の手提げに入れていた、唐草模様の風呂敷を京ちゃんに渡した。
「いや、こんなん巻いてたら俺、不審者じゃ…。」
「シッ!決して敵に見つかってはいけませんよ?」
図書室の入口で目をパチクリしている京ちゃんを残して、私は、図書室のカウンターへ急いだ。
図書室は、2、3人の生徒がテーブルで本を
読んだり、勉強したりしているぐらいですいていた。
カウンターでは、マキちゃんが、頬杖をついて、動物飼育系の4コマ漫画を読んでいたが、私の顔を見ると、驚いて目を丸くした。
「あれ?芽衣子、珍しいね?図書室には絶対来ないって言ってなかった?」
「いや、それがちょっと、やらかしてしまって…。
今、当番ってマキちゃんだけ?」
マキちゃんは、すご~く気まずそうに教えてくれた。
「ああ〜、それが、当番の子が何人か風邪で休んでて、代わりに例の嘘コク四人目の先輩が…。今、本の整理してる…。」
「!!!なんてこった!最悪パターン!!」
私は頭を抱えると、マキちゃんに神条さんが当番じゃない日時を教えてもらうと、マキちゃんに別れを告げ、すぐに入口の方に向かった。
四人目の汚染区域と分かった以上、京ちゃんに即刻この場を離れてもらわなければ…!
せっかく、教えてくれようとしたのに申し訳ないけど、今日は体調が優れないから、また、本を教えてもらうのは次回ということにさせてもらおう。
しかし、私が図書室の入口近くで見た光景に私は凍りついた。
新刊コーナーの本を手にとってページをめくっていた京ちゃんに、
図書委員の腕章をつけた女生徒が、床に落ちた風呂敷を拾って今、まさに手渡さんとしているところだった。
初めて見たその
「あの…、風呂敷落としまし…、矢口くん?」
「あ、すみませ…、神条さん?」
二人は、向き合い、まるでドラマのワンシーンのような再会を果たした。
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昼ご飯を食べ終わってから、俺と芽衣子ちゃんは倫理の課題の参考図書を調べに、図書室に向かっていたのだが…。
何だろう?
芽衣子ちゃんの様子がまた少しおかしい。
顔色は悪いし、ソワソワしているし、
「芽衣子ちゃん、トイレなら我慢しないで…。」
「ち、ちがいますからっ!」
芽衣子ちゃんは真っ赤な顔で否定した。
やべ。またセクハラしちった。
芽衣子ちゃんは図書室の前の廊下まで来ると、悲壮な表情で俺に頼み込んできた。
「京先輩、ちょ、ちょっと、ここで待っててもらえますか?ここは汚染区域である可能性があるので、安全を確認し次第、大丈夫そうでしたらすぐお呼びしますので…!」
「え?何?汚染区域って…?」
俺は度肝を抜かれて聞き返した。
「決して私が来るまで、図書室に入っては行けませんよ?危ないのでこれ、巻いてて待ってて下さい。」
芽衣子ちゃんは、お弁当の手提げに入れていた、唐草模様の風呂敷を俺に渡してきた。
「いや、こんなん巻いてたら俺、不審者じゃ…。」
本を泥棒しにきた奴と間違われたら、どうするんだい?
ま、今どき唐草模様の風呂敷しょって泥棒するやつなんかいないだろうけどさ。
「シッ!決して敵に見つかってはいけませんよ?」
しかし、芽衣子ちゃんは俺の話を遮り、人差し指を立てると、余裕のなさそうに、辺りを伺うと、目をパチクリさせにている俺を残して図書室入口から中へ入って行った。
いや、敵って何?芽衣子ちゃんまた何の遊び始めたんだろう?と俺は首を傾げるばかりだった。
少しだけ入口の戸を開け、チラッと覗くと、カウンターで、笠原さんと芽衣子ちゃんが何やら真剣な表情で話し合っているのが見えた。
笠原さん、図書委員だったのか。ありゃ、長くなりそうじゃねーか?と苦笑いを浮かべ、
ふと、見ると、入口近くに、新刊コーナーがあり、何冊か本が置いてあるのに気付いた。
「おっ。青山太郎の新刊がある!」
好きなミステリー作家の新刊を見つけ、興味を引かれた俺は芽衣子ちゃんに渡された風呂敷を肩にかけ、図書室に足を踏み入れた。
入口付近にちょっといるくらいなら大丈夫だろ?
新刊コーナーの前に立ち、冒頭シーンを読んでいると、肩にかけていた風呂敷がいつの間にか落ちたらしい。
誰かが風呂敷を拾ってこちらに渡してくれようとしているのが横目で見えた。
「あの…、風呂敷落としまし…、」
「あ、すみませ…、」
風呂敷を受け取り、拾ってくれた女生徒に礼を言おうとして、目を丸くした。
「矢口くん?」
「神条さん?」
図書委員の腕章をつけたメガネをかけたその女生徒は、まぎれもなく、神条桃羽=俺に唯一マジコクをしてきた女子だった。
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