第1話 - 学校 前編

「おばあちゃん!行ってきまーす!」


「お母さん、行ってきます。」


僕は母の前で手を合わせた。


母が亡くなり5年が経った。


僕に母の記憶はない…


母と最後の会話は初めての夕焼けから

数回会った後、母は息を引き取った。

僕と会うことはなく母は最期を迎えたそうだ。


今はおばあちゃんと2人暮らしをしている。


僕が中学生になり初登校の日


玄関まで杖をついて見送るおばあちゃんに


手を振り僕は急いで自転車で学校へ向かう


朝の風に髪がなびかれながら坂を越える


満開の桜が視界いっぱいに広がり、


胸を高鳴らせた。


街全体が桜色に染まる季節


僕は期待と不安でいっぱいだ


バイクの音が心地よい…


桜並木、桜舞う中制服を着た生徒達が

登校している。


校門で挨拶が飛び交う中僕は緊張しながらも

挨拶をし、自分の教室へと向かう。


僕は1年C組だ。


階段を登りながら、

どんな人がいるのだろうと思い

ドキドキしながら教室へと向かう。


扉を開け、教室へ入ると僕に視線が集まる。


なぜこっちを見るのかと不思議に思いながら

見渡すと、皆静かに座っていた。


僕は少し遅い方だったらしい、

見られているのが恥ずかしくなり

少し小走りで自分の机へと向かう。


僕の席は1番左の窓側の席だった。


椅子に座り周りを見渡すと、

緊張しているのか話している人はいなかった。


教室全体が静まり返っていて、


「ギシッ」


っと椅子の音ですら鳴り響いた。


そんな気まづい雰囲気がしばらく続いた。


「ガラガラッ」


とドアが開く音がした。


「おはよう!元気かー?」


と騒がしく入ってきたのは青ジャージを

着ている天パの担任らしき男だった。


「今日から担任になる、

伊上哲(いのうえ さとる)だ!よろしくな!!」


「男子の体育も担当するからなー!」


いかにも生徒に好かれるような熱血系な教師

だと誰が見てもひと目でわかるような人

だった。


「そうだな…まずは、出席番号順番に自己紹介

してもらうぞー。名前、出身校、好きなこと

言ってってなー!」


僕はその言葉を聞いて心臓が鳴り響くのが

わかった。


僕まではそんなに時間はない…


言うことは決まっているから迷うことは

ないのだが、僕は人に注目されるのが

なりよりも苦手だから、嫌だった。


あまり目立たずに友達を作るにはどうすれば

いいのかと思い、


どんな感じに言うのか参考にしようと

クラスメイトの自己紹介を聞いていた。


普通に自己紹介する人、面白く自己紹介して場を盛り上げようとする人、それがおもしろかったのか意外にも笑う人がいたりと色々な人が

いた。


僕の番まで回ってくるのに時間は

かからなかった。


僕は緊張しながら恐る恐る椅子から

立ち上がった。


「出席番号20番。朝日奈 夕陽(あさひな ゆうひ)です。出身校は北小 好きなことはバスケです。色んな人と仲良くなりたいので仲良くして

くれたら嬉しいです。よろしくお願いします。」


そう言い、お辞儀して座った。


小学校は少し離れたところにあったので

学校が同じ人はクラスにいなかった。


正直緊張で手が震えていた。


やっと終わったという安心感と共にちゃんと

上手く言えていただろうかという不安が

襲ってきた…。


やっぱり人に注目されるのは苦手だ…


担任の説明が終わり、

鐘が鳴り響き休み時間に入った。





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僕と夕焼け。 ナ シ 。 @na__shi

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