僕と夕焼け。

ナ シ 。

プロローグ

「おかあさん!!」


「みてみて!」


僕は母の車椅子に手をかけた


「お空がまっかだよ!!」


僕は空を指し、そう言った。


「これはね、夕焼けって言うんだよ」


母は優しい声で教えてくれた。


「ままの1番好きなお空なの。暖かくて優しい色のお空がままは好きよ。」


母は優しい声でそう言い寂しげな表情で

見つめた。


「うん!!ぼくもゆーやけ!好き!」


母は僕に優しく微笑んだ。


「もう、帰ろうか。」


「うん!またこよーね!こーえん!」


それが僕が初めて母と見た夕焼けだった。


田舎の山頂近くにある公園から顔を出す

夕焼け…


僕は母が好きな夕焼けを母と一緒に見るのが

大好きだった。


母が狭い小さな檻の中から毎日見る夕焼け…


母は僕と一緒に見る夕焼けが幸せの時だと

言った。


自由に出れない外


たまにしか会えない僕と母


母はずっと小さな檻の中


体調が悪化するばかり…


(神様は意地悪だ。)


(お母さんは何もしてないのに、

どうして悪いことばかりをするんだ。)


そんなことを考えていたら病院に着いて

しまった。


母とは手を振り別れた。


僕は迎えに来ていたおばあちゃんの暖かい

手の温もりに包まれながら家までの

道を歩いた。







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