02 荒城
重八の寺の焼け跡の近くの荒れ城。
そこに
賊は門番が「異様な雰囲気の坊主が来た」との報告を受け、どんな奴かと城門まで足を運んだ。
そこには、酷く醜悪な面相の、だがそれでいて、強い迫力を感じさせる托鉢僧――重八が縛られて、転がっていた。
何しに来た、と問うと、重八はあんたに会いに来た、と答えた。
賊は重八に興味を抱いた。
「縄を解いてやれ」
門番が無言で縄を解くと、重八は礼も言わずに立ち上がった。
「手下にしてくれ」
頼んでいるわりには、
だが賊は、この
「いいだろう」
「早速仕事がしたい」
「もうか」
賊が驚くと、重八は、国が派遣した将軍が、近くの寺や村を襲い、その成果に満足している最中だと思うと言った。
「油断している。これを襲えば、勝てる」
「簡単に言うな」
重八の言うとおりかもしれないが、賊の手下たちからすると、新参の言うことなど、誰が聞くものか。
「おれの
重八はこのあたりの出身で、小さい頃は餓鬼大将、今は顔役という立ち位置にいた。
声をかければ、十人くらいは集まるという。
つまりは、襲撃後に匿ってくれればいいと言う。
「じゃ、行くぜ」
「おい待て」
「何だ」
「そうまでして……いったい、何が狙いだ?」
「拙僧……おれに家族はいない」
皆、流行り病で死んだと重八は
賊は、それが何だと聞いた。
「あの童女は……あの子は、そんなおれに、家族ってのを、思い出させてくれた」
ほんの、
*
――お坊さん、お腹空いてるの?
――ああ、托鉢がうまくいかなくてね。
――怖い顔してるね、お坊さん。
――よく言われるよ。重八、お前は悪相だってな。
――だから貰えないんじゃない、お布施?
――ちがいない! 次から、顔を隠していこう!
――笑いごとじゃないよ、お坊さん。もう、仕方ないな。
……そう言って差し出された焼餅を、重八は何度も伏し拝みながらいただいた。
あまりの食べっぷりに笑い出した童女は、そんなに焼餅が好きなら、また明日にでも来てくれと言った。
――じゃ、また来てよ。
――ああ。
――あ、ちゃんと言わないと。こういう時は、さよならって。
――ああ、そうだったな。じゃ、さよなら……。
しかし、その「明日」、托鉢を終えてから童女に会いに行こうとした重八だったが、寺は焼け、村は……。
*
「……役人や将軍が、おれたち民草を食い物にする。それは間違っている。それを誰も罰しないなら、おれが――罰してやる。だからおれは坊主をやめた。賊になる」
「気に入った」
賊は重八に、自分たちの国を建国する企てがあることを語った。
「お前のような奴がいると、おれたちの国に
そこで賊は首を傾げた。
「お前、名を変えろ」
「何故」
「仮にも国の将として取り立ててやろうというのだ。らしい名にしな」
頼んだぜ重八、と賊は可笑しそうに笑った。
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