10話 学園長室

東郷ですと短く告げると彼女は学園長室の扉を開いた。

「失礼します。例の二人を連れてきましたよ。」


彼女が声をかけた先には30歳くらいの男性が立派な部屋の中央に座していた。


机の上の書類の山を見るからに、彼は大量の職務に追われている最中であるようだった。


乱雑に積まれながらも、どこか整っているように見えるそれらは、彼が実直で合理的な人物であるということをさり気なく教えてくれている。


「ああ、編入の件だったね。ここに用事があって来ると思って、今日の分の仕事は殆ど片付けてあるんだ。それに、たった今終わったところだからちょうど良かったよ。」


学園長は東郷さんを見るとそう言った。


「なるほど、用意が良くて何よりです。では、早速ですがお願いしますね。」


「そうだね。さて、朝宮くんと尾張さんだったね。ようこそ御門魔法学園へ。私は城ヶ崎源治。言わずとも知れたことだがここの学園長だ。」


その言葉に応じて、はじめましてと挨拶をしてから美玖さんは一礼をした。それに習って俺も学園長に向けて軽くお辞儀をする。


「はは、そんなに畏まらなくても良いよ。宗光とは昔からの友人でね。その弟子の君たちなら我が弟子も同然と私は思っているんだ。」


「それは、なんというか師匠が迷惑をかけているようで…。」


師匠が突然弟子を編入させてほしいと学園長に電話をする姿を想像して、思わず俺は学園長に謝りたくなった。


「その様子だと、君も宗光のことで苦労しているようだ。お詫びと言ってはなんだが、学園で困ったことがあれば私に頼るといい。できる限り力になろう。」


その厳格そうな顔つきで頬を緩ませて彼は親しげに言った。


「ありがとうございます。何かあればそうしようと思います。」


「彼に同じく私も。」


「ああ。遠慮はいらないからね。」


学園長はゆっくりと頷くと話題を切り替えた。


「さて、会長、ではなく、東郷さんから聞いていると思うが、今から君たちが所属することになるクラスを決めるための手続きをする。」


そう言って学園長は立ち上がり、彼から見て左手にあるドアへ向かって歩き出す。そして、扉の前に立つとこちらへと振り返った。


「ついてきたまえ。」


俺と美玖さんのそれぞれを一瞥してから、彼はドアを開いた。すると、扉の先には仄かに青く光るゲートが覗いていた。


「ここにも転移門ですか。」


これだけ転移門が置かれているのもこの学園ぐらいのものだろう。


______どんだけ金がかかっているんだか。


ここまで来ると呆れ笑いまで出てくる始末だった。


「そうですね。私も姉弟子から聞いてはいましたが、流石は御門学園という他ないです。」


呆れる俺とは対照的に彼女は感心している様子だった。


「ここへ来ると大体の子たちは君たちと似たような反応をするよ。」


学園長は苦笑を混じえて言うと、そのまま転移門をくぐり抜けた。それを追うようにして俺たちもあとに続いた。



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オールドエッジ ~師匠の言いつけで魔法学校に入学することになったけど、学内ランキング最下位ってどういうことですか?~ べっ紅飴 @nyaru_hotepu

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