Re:NAI

一ノ瀬 もなか

プロローグ

Novio社の会見に、多くの記者が集まっていた。


Novio社は、AIを得意とする某大手IT企業の社内ベンチャーとして設立され、その後目覚ましいスピードで業績を上げていき独立。「NAIエヌアイ」を開発後は、さらに売り上げを伸ばし、日本でも有数のITメガベンチャーへと成長した。


会見の会場にNAIの開発責任者である増田ますだと何名かの技術者が入ってくると、記者達のフラッシュライトが増田達を照らした。


開発の経緯について、増田が話し始める。

「我々はこれまで、NAIを通し、人々の『快楽』について追及をしてきました。現在では世界各地の人々の『快楽』に関するデータがNAIには集まっている。我々はこれらのデータを基に、人々の行動パターンや思考パターン、幸せになる道筋を割り出すことで、恋愛シミュレーションをできるバージョンを用意することができた。もう画面の中だけではない、リアルに、自由に、恋愛をシミュレーションできる時代がやってきたのです」

記者の一人が手を上げる。

「日本新聞の高橋たかはしです。なぜ、これまで集めてきたデータを、恋愛シミュレーションに使うようにしたのですか。他のサービスへの転用も考えられたはずですが」

ありきたりな質問ではあるが、当然気になるところではある。これだけ人間の様々なデータを集めてきたのだから使い道は数多くあったはずである。それをなぜ最初に「恋愛シミュレーション」に使用したのか。


「簡単な話です。恋愛って人間の本能的なところで、かつ話題性もあって皆さん好きでしょう。我々のもっと人間の深いところを知りたいという探究心と、皆さんの好きなコンテンツがたまたま合致したのが『恋愛シミュレーション』というだけです。あわよくば、日本の少子化にも歯止めがかかるかもしれませんしね」

増田はそう冗談交じりに話すと、「ここからは他の者に任せます」と残し、その場を後にした。


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Re:NAI 一ノ瀬 もなか @kinyo825

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