1話1話は、とても短い物語です。魅力的でダークなものが多いので、中でも最後にゾクリと来たものを、ここで簡単にレヴューさせて頂きます。
わたしたちの生活に欠かせないQRコード。
そんなQRコードが、ある場所に突然現れる。
もしもあるなら、ポスターの中や、テレビ画面と言った所だろう。
しかし、このQRコードは、そんな場所ではなかった。
夜遅くに男はそれを見つけて、興味本位で近づいてしまう。
そして、急に目の痛みに襲われることになるのだが――。
果たして、男の身に起こった変化とは?
是非、探して見て下さい。
短編ながら毎日更新し、ちゃんと最後にオチのある作品群に仕上げた作者様の力量に驚かされました。
是非、御一読下さい。
ショートショートと聞けば、思い出すのは星新一だろうか、阿刀田高だろうか。R.A.ラファティやレイ・ブラッドベリを想起する人もいるだろう。
彼らに匹敵する才能がいまここに、あなたの目の前に現れたと聞いたらどう思う?
確認するのは簡単だ。遠藤世作の本作を読むだけでいい。相手は掌編小説だ、ものの五分とかからない。
ショートショートは懐の深いジャンルだ。SFもあればホラーもあり、ミステリもあれば純文学もあり。本作に目を転じてみよう。西暦5000年の支配のあり方、奇妙な穴の逸話、三名の自白、長いときを経て届いた手紙……。奇妙な味の作品も多い。マリモによる圧政、ストーキングの成就、QRコードの侵蝕、博愛主義の末路。ここに挙げたモチーフが少しでも気になった方は、それがどのように調理されたのかをご賞味いただきたい。
この作品は、タイトルで伏線を張り、描写で惹きつけ、ラストで転がす。ある意味で模範的なショートショートだが、どこか新しい世界を予感させるところがある。この体験を経た後に日常に復帰すると、日常そのものが少し変貌して見えるような。
新世界の掌編小説が、あなたを異境へと誘っている。
本作はショートショート。つまり短編集であるわけだが、そのどれもが面白く、手を抜くことなく丁寧に描かれている。
当たり前のようで、これはとても凄いことである。
まず貴方は第1話を読むだろう。成る程なぁ、と満足を得て、さてどうせならもう1話くらい読んでみるか、となる。読む。ほうほう、面白いじゃないかとなり更に次の話を読む。
ここまで来るともはや逃れられない。気がつけば最新話まであっという間だ。
次の話を読ませてくれ、もっと続きを読ませてくれ――。ジャンキーの出来上がりである。
本作はバラエティ豊かな構成になっており、笑える話、恐い話、感動する話など。選り取り見取りだ。
きっと、貴方の好みに合う物語があることだろう。
なにせ、このレビューを書いている私には、面白い話“しか”なかったのだから――。