乱戦
FAV10はJハリアーの開発者が、トムキャットを見て開発した機体だった。
彼は岐阜基地で評価試験を受けているF14を紅茶を飲みながら左右に大きく間隔を空けて設けられたエンジンナセルを見て思った。
「あそこにペガサスエンジンを載せられそうだな」
左右のエンジンの間が大きいなら、ペガサスエンジンの左右から出てくる排気を流すには十分な広さがある。
Jハリアーという魔改造機、双発垂直離着陸機を完成させた後であり、ペガサスエンジンの双発制御に自信があった。
大型のトムキャットでも、新型のペガサスエンジンなら垂直離着陸できるだけの推力が得られると確信していた。
早速、生け贄、もとい一機のF14が提供され試験を実行。
飛行を成功させた。
通常のトムキャットの武装を半分程度搭載可能な機体となったが、垂直離着陸が出来る状態であり、十分だった。
機体に満足した国防軍は早速採用し、千歳基地に配備した。
最小限の改造だったため、可変翼機構はそのままとされ、配備された。
正式名称はFAV10のみで愛称は無かったが、どこからともなくヴァルキリーと名付けられ定着していった。
北海道という前方に展開したのは、北に真っ先に滑走路が狙われて使用不能になるから。
千歳基地が使えなくても前線飛行場、高速道路の一部を使っての短距離離着陸での展開を考えての事だった。
流石に通常時は整備性を考え千歳基地に集中配備されており、攻撃を受けた。
だが幸い、掩体壕は無事で、滑走路が使えなくても、その能力が役に立った。
北日本は、不十分な機体と侮っていたが、緊急時には十分な性能を持つ機体だった。
滑走路が使えないため、駐機場から垂直離陸または、安全が確保された場所から短距離離陸して発進。
戦闘高度に達すると、すぐにフェニックスを発射。
味方の援護に入った。
ヴァルキリーの詳細について
https://kakuyomu.jp/works/16816927862107243640/episodes/16818093091574369689
「馬鹿な、そんなことがあるか」
あり得ない事態に隊長の思考は停止した。
事前のブリーフィングでは、敵機は千歳から上がってこないはず。
圧倒的な数的優位で敵を撃破出来るハズだった。
なのに自分達が攻撃を受けている状況を理解できず、身体がこわばる。
「隊長! 回避を!」
星子が進言するが、隊長はまだ衝撃から立ち直れず、応答しない。
「退避する!」
星子は、咄嗟に機体を捻らせて回避機動をとった。
おかげでミサイルから逃れた。
隊長の機体は直線運動を行ってしまい、フェニックスの直撃を受けた。
命令がない為、多数のSu27が撃墜される。
それでも、何機かは星子に続いて回避機動をとり、離脱していた。
だが危機はまだ終わっていない。
「敵機が迫ってくる」
先程、攻撃したイーグルの残存編隊が接近してくる。
数はまだ星子達が優位だ。
だが、編隊はバラバラな上に、千歳基地から上がった編隊の援護もある。
状況は不利になりつつあった。
だが、星子は諦めず、瞬時に決断した。
「乱戦に持ち込む!」
あえて星子は敵機であるイーグルに接近する。
撃墜するためではない。
南が味方への誤射を避けるため、南の戦闘機がフェニックスミサイルを撃てないようにするためだ。
星子の狙いは当たり、それ以降、星子が狙われる事は無かった。
だが、離れていた味方は撃墜される。
イーグルに乗る南のパイロットの腕は良かった。
だが、星子も腕は良い。
イーグルの後方に食らいつき、決して離れない。
そんな状態を十数分も続けた。
だが、状況は悪くなっていく。
「南の機体の数が多くなっている」
7G以上の状態で星子はディスプレイ、次々と送り込まれる南の編隊と、減っていく味方を見る。
軍事境界線近くに隠匿配備された対空ミサイルが引き出され、北日本軍の機体を撃破している。
対抗砲撃を行っても南に潰されている。
また三沢からの援軍が到達し空戦に参加している。
北が徐々に不利となっていた。
「好機ね」
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