第二次日本海海戦勝利

「日本の大勝利です!」


 のちに第二次日本海海戦と名付けられる勝利は、総理官邸にもたらされ、アメリカから帰国していた佐久田も聞いた。


「我が方の被害は?」


「澤風が撃沈されましたが、他の被害はありません」


「韓国軍に与えた損害は?」


「艦隊を壊滅させ、艦隊攻撃に来た韓国軍航空戦力の多くを撃破しました」


「射程一〇〇キロ以下のミサイルを使うなど愚かだ」


 アメリカの防空網は大戦中でさえ一〇〇キロから一五〇キロはあった。

 戦後、アメリカを真似した日本も同等のものを採用し、進化している。

 その防空圏に入るなど自殺行為だ。


「アウトレンジしなければ被害は大きくなるな」


 戒めるように佐久田は言った。

 今言ったことは間違いなかったが、大戦中に不用意に指摘したため、悲劇を、桜花という特攻機を作り出してしまった。

 もう二度と、行わない。

 だからこそ、対艦ミサイル開発に力を入れるように進言し、八〇式の改良をすぐに命じたのだ。

 少なくとも、桜花で散った搭乗員たちに続く者を作ることはない。

 それが彼らへの手向けだと信じていた。

 だが、いつまでも感傷に浸っていられない。

 戦争はまだ続いており、次の手を考えなければ。


「済州島は?」


「島の大半を占領し、韓国軍の組織的抵抗は終わりました。残敵掃討戦に移っております」


「住民は?」


「静かです。今のところ反抗はありません」


 反日的で抵抗を予想していただけに静かなのは予想外だ。

 衝撃的すぎて、思考停止状態になって呆然としているのだろう。

 いや、韓国本土からの扱いを考えれば、日本に迎合する人々が多いことも考えられる。 そのまま併合するのはいろいろ問題、現地住民の扱いの問題もあるので勘弁願いたい。 それでも占領中は面倒を見る必要がある。


「優しくするんだ。住民に対する暴行は厳禁だ。捕虜移送は迅速に。だが、移送する光景を見せるんだ」


 国際法では住民から捕虜を離す――住民からの暴行を抑える義務がある。

 だが、捕虜を、大韓民国軍を捕まえ、見せることで日本が圧倒したことを明確にする。 こうでもしないと反抗する。


「韓国はどうしている?停戦交渉に出てきたか?」


「いいえ、日本の不法な侵略に屈することはないと徹底抗戦の模様です」


「本気か?」


「米韓連合司令部指揮下の部隊を、郷土予備軍へ移転しようとしていますが、米軍に拒絶されています」


「困ったことだ」


 韓国の行動にアメリカも頭を悩ませているだろう。


「どうしますか?」


「交渉に出てくるよう、圧力を強める」




「反撃だ!日本の侵略を撥ね除けよ!」


 青瓦台で全大統領は叫んだ。

 叫んでいるのは全大統領だけではない。

 愛国的な韓国人が街に繰り出して日本の済州島占領に抗議して迅速に奪回しろと声を上げている。


「無理です。機動艦隊は壊滅。航空部隊も制空権を奪われ行動不能です」


 だが、それが不可能なことは軍上層部は理解していた。

 島を奪回するには海上、航空部隊が必要だが、韓国軍はその全てを喪っている。

 しかも日本はほとんど無傷。

 絶望的なほどに戦力差が出てしまっている。


「黙れ! 実行しろ!」


「奪回の可能性はありません」


 処罰が怖いが部下の命を救うために、無意味な作戦で日本軍に殺されに行くのは避けなければならない。

 だから断固として反対した。


「兵力が足りないなら、韓国軍から移せ」


「米韓連合司令部が拒否しています」


 韓国軍のほとんどは米韓連合司令部の指揮下にあり、韓国政府でも動かすことはできない。

 連合司令部の指揮下にない、特戦旅団や郷土予備軍を使って戦争をしていたが、それらは壊滅。

 日本の肩を持つアメリカが移管を許すはずがない。

 転用したとしても三八度線の兵力が減少し、北朝鮮が進撃してきかねない。

 しかも兵力は九割方、陸上戦力。

 海空を移動する手段がないため、上陸作戦に使えない。


「大統領、ここは休戦交渉に」


「ダメだ!国土を回復するため戦闘を続行する!」


 全の意地でもあったが、外の国民が敗北を許さない。

こ こで休戦し韓国が不利な条件で妥結したら国民は不満を持ち、大統領の罷免を求めるだろう。

 左派の大統領、北朝鮮に従順な大統領が現れたら韓国は北朝鮮に併合されてしまう。

 絶対に許されないことだ。


「奪回するまで日本との戦争を続ける」


「大変です!鬱陵島に日本軍が上陸しました!」


「何!」


 独島の北西にある島で面積七二平方キロ、人口一万前後の韓国領だ。

 韓国本土と独島の間にあり、独島への支援を送るのに必要な拠点だ。


「どうやって落とされた」


「日本の航空部隊の空爆の後、艦砲射撃を受け部隊は壊滅。そこへ空中機動部隊が乗り込み、占領されました」


 済州島と韓国機動艦隊を壊滅させた日本は、艦隊と部隊を自由に動かすことが可能になり、最初に鬱陵島を狙った。


「……連中は韓国全土を占領する気か」


「いいえ、被害を極小にするためでしょう」


「どういうことだ」


「防備が固められている独島を孤立させ、追い詰めた後、最後に占領するつもりでしょう」


「では、奪回作戦は」


「今開始されてもおかしくはありません」


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