ミサイル駆逐艦澤風

「接近するミサイルを撃墜しろ!」


 艦隊司令部が乗る大和から迎撃命令が出される。

 F14からフェニックスが発射され、エグゾゼへの迎撃が始まる。

 だが海面すれすれを飛び、戦闘機より小さいエグゾゼを捕らえるのはフェニックスでも難しい。

 二基を撃墜するので精一杯だった。

 残り三基。

 生き残ったエグゾゼへ大和の四六サンチ砲の三式弾斉射、対空迎撃が行われる。

 だが、韓国側も予測しており、時間差を置いて発射したこともあり、密集させない。

 一発を迎撃するのが精一杯であった。

 しかし切り札はあった。


「対空ミサイル打ち方はじめ!」


 配備されたばかりの太刀風型がスタンダードミサイルを放ち、迎撃を行う。

 多数のミサイル攻撃に対して艦隊が弱いことが分かってから対空ミサイル搭載艦の配備を進めてきた。

 太刀風型はその最初のシリーズ艦であり、日本は大いに期待していた。

 Mk 13 GMLSから八秒ごとにスタンダードミサイルが放たれ迎撃に向かう。

 その甲斐あって、接近してきた残り二基のミサイルは全て艦隊に到達する前に撃墜された。


「上手くいったな」


 全機撃墜を報告され、安堵の空気が流れた。

 そのとき、レーダー手から悲鳴のような報告が流れた。


「北方より敵編隊接近! 距離一一〇!」


 それは李舜臣から発進した別働隊だった。

 正面から攻撃しても成功する可能性は少ないと考え、一方を海から、もう一方を韓国本土経由で飛ばした。

 韓国の山間を飛びレーダーを避けて接近。

 最短距離まで近付くと南下し、信濃の北方に現れた。

 対馬海峡から突進してきた攻撃隊に気を取られていたこともあり、発見が遅れた。


「ミサイルを撃たれる前に撃墜しろ!」


 撃たれる前に撃つのがセオリーだ。

 それに母機の方が体積が大きくミサイルより狙いやすい。

 ファントムは二発搭載可能なため、標的の数も少なく出来る。

 だが、発見した時には近すぎた。

「迎撃!」


 命じるものの、対応できる機体は少なかった。

 既に東からの攻撃隊とミサイルを迎撃するためにファントムミサイルを消耗していた。

 エグゾゼ発射前に撃墜できたのは、ファントム一機、エシュペルエンダール二機のみ。

 残りはエグゾゼを発射した。


「敵機ミサイル発射!」


 先発した攻撃隊の報告もあり、別働隊は射程内に入るとすぐさまミサイルが発射する。

 発射されたエグゾゼのは一一基。

 その全てが艦隊へ突進していく。

 澤風がスタンダードミサイルを放ち迎撃する。

 だが、やはり発射速度、単装のランチャーでは、必要なミサイルを短時間で撃ち出すことはできない。

 それでも澤風は最後まで撃ち続けた。

 艦隊を守るための盾になるため、ミサイルを放つため。

 それが徒となった。

 ミサイルの全てが前に出てきてレーダー反応の強くなった澤風に向かって突進してきた。


「ミサイル、澤風に命中します!」


 直後澤風に二発のミサイルが命中した。

 一発は不発だったがロケット燃料により炎上。

 もう一発は後部に命中し機関室を損傷し機関停止。

 澤風は航行不能となった。


「澤風は放棄。救助を急げ」


 日本の司令官は早々に見切りを付けて、警戒を厳重にする。

 まだ攻撃が続くかもしれない。

 警戒態勢は厳重にしなければならない。

 既に韓国艦隊は壊滅していたが、エグゾゼは残っていると判断して警戒していた。

 だが、戦闘に勝利したことに変わりはない。

 日本は優位に戦える状態となった。


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