韓国軍の戦力と状況
「我々は断固として独島を守り切る!」
空母李舜臣の艦内で、独島をバックに韓国機動部隊司令官が叫んだ。
「日帝に奪われた独島を奪回した上は、これを守り切らなければならない。いくら日本の戦力が圧倒的でも、我が李舜臣の戦力を以てすれば勝てる! いや、勝たなければならない!」
一部の幹部たちは歓声を上げたが、良識的な士官たちはしらけた雰囲気だった。
李舜臣の艦載機は、空軍から郷土予備軍へ移管されたF4ファントムとシュペルエタンダール。
パイロットと整備員も移ってきていたが、空母の発着艦に慣れているとは言えない。
しかも日本の空母より小さく、搭載力も発着艦能力も劣る。
発着艦自体の難易度も高い。
短い着艦距離では安全が確保しにくいし、より高い練度が必要になる。
合同着艦訓練を行ったとき米海軍のパイロットたちは、あんな小さな艦に着艦するなんて韓国のパイロットは俺たちより度胸と技量があると言って驚いていた。
それだけパイロットたちは、上手くやってくれている。
陸上に予備の飛行隊もいる。
しかし、F4ファントムの次世代機であるF14トムキャットを有する日本を相手にするには、分が悪すぎる。
日本との模擬空戦は、韓国の国是から行っていないが、米海軍のF14との模擬戦闘は非常に成績が悪かった。
フェニックスミサイルの長射程でアウトレンジされるのはもちろんだが、格闘戦でも不利すぎる。
機動力が高く、小回りが効くため、あっという間に後ろに回り込まれてしまう。
そして噂でしかないが、日本のF14パイロットは優秀だと聞いている。
アメリカのF14を簡単にねじ伏せたという話をよく耳にする。
トップガンへ行く日本の留学生は、皆優秀な成績を収めているそうだ。
F4もシュペルエタンダールも優秀な航空機だが、F14やF15に比べ性能の差がありすぎて勝てるとは思えない。
「しかも、日本の連中は空母が使えない。信濃は被弾しドック入り、尾張は長期改修で出られない。唯一動ける紀伊は、一万キロ彼方だ。戦局は圧倒的に我らに有利だ」
確かに稼働できる空母の数では、こちらが優位だろう。
生駒級を使っているが、船体が小さすぎて使える機体は限られている。
旧式になりつつある震電改か、F4ファントムを使っている。
F4はもちろん、シュペルエタンダールで圧倒できるはずだ。
F18なら発艦できるが、日本のF18導入計画は遅れていて、十分に相手にできると考えられていた。
空母だけなら、日本本土に近く、本土の基地を使えば独島は作戦行動圏内。
韓国軍も韓国本土から航空機を出せる。
だが、日本と韓国では総戦力が違いすぎ、航空機の数でも負けている。
被弾した信濃や、改装中の尾張の艦載機を陸上基地から発進させてくれば、十分な脅威となる。
既に独島周辺、美保関や岩国をはじめ、築城、小松、徳島、新田原などの航空基地には、航空機が移動してきている情報が入ってきていた。
米軍機の姿も確認されていた。
三沢や嘉手納から、日本各地に米軍の飛行隊が移動してきていた。
東アジアの混乱で東側が攻撃を仕掛けてくることを警戒しての配備だと、米軍は発表していたが、日本の盾、韓国が攻撃できないようにするための処置だろう。
佐久田がレーガンにねじ込んで実行させた。
元々、国連軍に便宜を図るため、民間の空港を含め基地使用を行うのは日本の義務だ。
もちろん、日本の承諾は必要だが、日本の提案だったため、すんなりと認めた。
韓国でも同じ処置をするべきだという話はあったが、国民の反対、反米感情を考慮して実行しなかった。
日本でも反対運動はあったが、強引に進めていた。
反発が少なかったし、断固として実行するという決意に満ちていた。
このような状況で勝てるわけがない、と韓国軍士官のほとんどは考えていた。
唯一韓国軍の優位な点は、独島に配備した対空ミサイルと対艦ミサイルだ。
独島必ずやってくる日本機動部隊が近づいてきた時、艦隊と共にミサイルを発射。
飽和攻撃で打撃を与える。
一回でも日本の攻撃を凌げば、日本に交戦を断念するだけの損害を与えることができれば、膠着状態に持ち込むことができる、と考えていた。
賭けと言って良いが、日本との戦力差を考えれば、勝てる確率が半分あるだけでもマシだ。
だが、士官たちは嫌な予感がした。
あの日本が、まともに自分たちに向かってくるだろうか。
太平洋戦争で戦力差がある米軍に不意打ちを続け、戦力的に奇跡としか言い様がない戦果を上げ続けた日本が。
圧倒的に韓国軍の戦力は日本に比べて低いが、戦力であることは間違いない。
大打撃とは行かなくても、日本に無視できない損害、戦後の北日本との対峙を考えれば許容できない被害を与えられる、と考えている。
日本もそれを理解しているはず。
だから独島にやってくるとは思えなかった。
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