空母の重要性
第二次大戦以来、空母が海戦において、特に島を巡る戦いで重要であることが証明されてきた。
それは大戦後も変わらず、世界の海軍関係者の常識であり、韓国海軍も例外ではない。
「先のフォークランド紛争でもイギリスは空母と艦載機を使いアルゼンチン軍に勝利しました」
特に82年のフォークランド紛争では、空母が活躍できるかどうかで戦況がまるきり変わることが、事実である事が立証された。
衰退し海軍を削減していたイギリスだったが一万キロ以上も離れた地点に空母――オーストラリアへ売却予定だった軽空母イラストリアスを展開させた。
乗せていたのは、通常機に比べ能力に制限のあるハリアーだったが、一日一回以上の出撃と巧みな運用により数で圧倒するアルゼンチン軍を撃退。
イギリスに勝利をもたらした。
対する日本はトムキャットなどハリアー以上の高性能機を、多数運用できている。
しかも、独島は韓国本土はもちろん日本本土にも近く、すぐに航空機の支援が見込める。
いくら何でも厳しすぎる。
反日的傾向があっても優秀な軍人である彼らは冷静に戦力差を認識しており、勝てないと結論づけていた。
だが、全は気楽だった。
「好機はいつ来るか、わからないものだぞ」
生徒をたしなめるように全は言った。
部下は「そんなことはあり得ないだろう」と思い、何も言わなかった。
意に沿わない意見や現実を教えれば、予備役編入か北のスパイとして収監されるだろう。
黙っているのが吉だ。
おsもそも日本と韓国の戦力差は絶望的であり、好機などやってこないと考えていた。
しかし、思わぬ好機がやってきた。いや、来てしまった。
突如CNNのホルムズ海峡からの報道が全世界を駆け巡った。
「先程、イラン軍による大規模なミサイル攻撃があり、日本の空母信濃が被弾。航空機運用能力を失ったと見られます」
イラク・イラン戦争によりペルシャ湾のタンカーを守るため、日本は空母信濃を派遣していた。
そのさなか、空母信濃がイラン側の攻撃を受けて被弾し、発着艦能力を失った。
最初は混乱による誤報かと思われた。
だが、信濃の帰還発表と、乗艦していた報道クルーの取材を通じて、信濃が本当に被弾し航空機運用能力を喪失。
復旧に数ヶ月かかると見られていた。
それでも日本には二隻の空母が残っている。
だが、このうちの一隻を相手にすることさえ韓国には厳しかった。
日本はシーレーン、生命線である石油を確保するため、慌てて空母紀伊を出港させ、シーレーン防衛に穴が空かないよう、ペルシャ湾へ即時派遣した。
運悪く、空母尾張は長期改修、船体延長を含む大規模改修でドック入りしており引き出すことができない。
生駒級空母がいるが、F14を搭載できないため、この時期は練習空母として扱われていた。
日本の周囲から空母がいなくなり、韓国にとって絶好の機会となった。
「諸君! 好機到来だ!」
全大統領が喜色満面で幕僚たちに言う。
この好機を逃しては、次がいつ訪れるか分からない。
今のうちに実行するつもりだった。
それでも幕僚たちの顔は暗かった。
「しかし、日本には大和がいます」
大韓民国建国前の大戦から活躍し、あまたの艦艇を撃沈。
もはや伝説を超え神話として語られようとしている艦の威力を知っている彼らは勝てるとは思えなかった。
信濃の被弾と共に、大和も長期整備のために日本に戻ってこようとしている。
しばらくは動けないだろうが、独島の作戦に参加するのは明白だ。
しかし、全には秘策があった。
「大丈夫だ。手は打ってある」
全の言葉を幕僚たちはうさんくさく思っていたが、本当に手は打たれていた。
秘密裏に北日本へ密使を送り、交渉を行っていたのだ。
「帝国主義者の日本から独島を奪回し懲罰するために協力してほしい」
韓国の軍事行動を伝え、密かに協力を求めた。
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