独島――竹島問題

 独島。

 日本の竹島は李承晩によって一方的に韓国領だと主張され、返還を求められていた。

 当然、日本は拒絶した。

 だが、李承晩は「日帝の暴挙、軍国主義の残党の戯言であり、粉砕する必要がある」として、極東戦争末期、韓国軍を送り竹島を占拠した。

 だが、圧倒的な日本の海軍力――大和をはじめとする艦隊に追い払われ、韓国軍は撤退した。

 それでも懲りない李承晩は独島奪還を掲げ、海軍の増強を図ろうとした。

 だが、アメリカの協力拒否と韓国の工業力の低さにより、上手くいっていない。

 そして厄介なことに、韓国国民や反日勢力にも独島奪回のアピールは非常に評判が良く、多くの国民に受け入れられていた。

 そのため、歴代政権では国威浮揚に利用され、国民の間に根付いていた。

 朴正熙が日本からの援助引き出しに失敗するほど強まっており、時代を経てさらに磨かれていた。


「確かに国民の支持を得られます。ですが、日本はアメリカの有力な同盟国です」


 日米は緊密に連携している。

 何より、同じ西側陣営の国同士でトラブル――武力衝突を起こすのは拙い。

 日本は西側諸国におけるアジアの要として重視されている。

 アメリカが韓国に肩入れするとは思えない。

 むしろ日本を支持するだろう。


「そうとは思えないが」


 しかし全の考えは違った。

 最近の日米関係は、良くない。

 貿易摩擦が起きており、食い違いが生まれている。

 ワシントンと東京で頻繁に通商問題について激論が行われ、米議会で日本を糾弾する演説が続いている。

 日米関係が悪化しつつあると見てもおかしくない。


「十分に付け入る隙があると考える。アメリカが日本の味方をする可能性は低いだろう」


「ですが、アメリカ抜きとしても日本の軍事力は絶大です。特に海軍は……」


 日本は戦艦大和をはじめ、信濃型空母三隻、その他艦艇を有しているのに対して、韓国は駆逐艦と哨戒艇、揚陸艦艇――北の武力攻撃があったときに海上機動を行うための部隊しかいない。


「我が軍は米韓連合司令部に大半の部隊を指揮下に入れています」


 極東戦争が起きたとき、劣勢だった韓国軍は米軍に作戦統制権を委譲した。

 一応指揮権は韓国に残っているが、韓国軍を自由に動かすことはできない。


「それならば問題は無い」


 全の笑みに見た者は恐怖を抱き、反論できなかった。




 数日後、青瓦台――韓国大統領府は声明を出した。


「韓国は、米国に作戦統制権の返還を求める」


 韓国大統領の言葉に米国は拒絶反応を示した。

 極東戦争以来、韓国軍は国連軍・米軍の指揮下にあり、依然としてその状態が続いている。

 以前から水面下で統制権返還を韓国は要請していた。

 だが、能力の低い韓国軍に米軍を与えては損害が出てしまい、米国民の支持を失う恐れがある。

 米国はそう考え、拒絶していた。

 韓国側も米国の支持を失うことを恐れ、表だって要求することはなかった。

 しかし、青瓦台――韓国大統領府が発表したことで一気に外交問題化し、首脳レベルでの議題になってしまった。

 もちろん、実質的な交渉は実務者レベルで行われたが、以前より激しいものになった。

 最悪の場合、アメリカは朝鮮半島からの撤退さえ本気で考えた。

 当然韓国もそのことを知っており、交渉のための材料としてしか考えていなかった。

 幾度かの交渉の末、妥協として本当の目的である郷土予備軍――韓国の予備役兵部隊を米韓合同司令部から除外することに成功した。


「日本は自衛隊という予備役組織を持ち、日本政府のみが指揮権を保有している。我が大韓民国も同じ扱いをしてもらいたい」


 米軍の本音としては、二回目の半島での戦闘に備えて予備役――開戦時の即応予備兵であり、反撃の中心戦力も掌握しておきたかった。

 だが、大韓民国の国民がアメリカの態度に反発し、反米感情が高まった。

 同盟国国民の支持を得るために、当時ホワイトハウスの主だったカーター大統領は韓国の言い分を認め、許した。

 予備役部隊は、たいした影響は無いと考えていたし、戦争になればなし崩しに正規軍へ編入しようと考えていたからだ。

 だが、これが全の立てた作戦の第一歩だった。


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