空中戦とミサイル攻撃

「畜生!」


 梶谷はチャフとフレアを撒いて回避する。

 チャフとフレアにミサイルが引き込まれる。

 やはり、スパローとサイドワインダーを同時に放っていた。

 トリッキーなところはトップガンから変わらない。


「だが、格闘戦は負けないぞ!」


 背後に突かれても梶谷は強がる。

 自信があるからだ。

 急旋回して逃げる。

 と見せかけて上昇し旋回。

 速度が小さくなったため旋回半径が小さくなり、後ろに付いていた。

 アタイー少佐を追い越させ後ろに付く。


「貰った!」


 機銃を放つ。アタイー少佐機の左エンジンが消えた。

 だが、旋回されて逃げられる。


「追撃する」


「後ろに付かれた!」


 背後から別のイランF14が張り付いてきた。

 万事休すかと思ったとき、F14が爆発した。


「騎兵隊の到着だ。助けに来たぜ」


 ミッチェルの恩着せがましい声が響いた。


「攻撃はどうした」


「言っただろう。爆弾を落としてからでも十分に間に合うって」


「そういうことだ」


 葉も合流して言う。

 助けられた事に梶谷はうんざりした。

 艦に帰ったら散々自慢されるだろう。

 だが、ミッチェルと楊の自慢はすぐに終わった。

 レーダー画面が無数の点で埋め尽くされた。


「ミサイルだ! 画面が真っ白になるほど打たれている!」


「ミサイルは攻撃隊が破壊したんじゃないのか!」


「目標はキチンと破壊したぞ!」


「じゃあ、このミサイルの数は何だ!」


 のちに発覚したことだが、攻撃はすべてデコイに命中していた。

 目標選定が間違っていたのだ。


「そもそも連中は何であんなにミサイルを持っているんだ」


「楊の国が売ったんだろう」


「北と一緒にするな!」


 石油を確保するため、北中国、中華人民共和国はイランへ大量の武器を売り払っていた。

 だがイラクからの石油も欲しくて、イラクへイランの倍の武器を輸出していた。

 皮肉にもイラン最大の武器供給国である北中国は、イラク最大の武器取引相手である。


 とアメリカの報告書に書かれるほどだ。

 実際、放たれたのは北中国製のシルクワームだ。

 手軽な上に、扱いやすいことから第三諸国を中心に売られていた。


「放っておけ! どうせ一〇〇キロも飛べない!」


 だが、お手軽な分性能もそこそこで、射程も百キロを超えないとされていた。

 艦隊は安全のために沿岸から一〇〇キロ以上の距離を置いている。

 だから母艦は安全だと気楽に思っていた。

 梶谷が事実を言うまで。


「既に百キロ超えているぞ」


 配備されたのは胴体を延長し、弾頭を減らして燃料を増大させた長射程型だった。

 東側が西側の空母を仕留めるため、射程を伸ばした特別製だ。

 アウトレンジ戦術が西側機動部隊への正しい戦術か確認するためにイランへ提供された新型であった。


「撃墜する!」


「拙い新手の敵機が接近してくる!」


 しかも間が悪いことに、イラン空軍の機体が接近してきた。


「そうか、連中の狙いは俺たちの空母だ」


 タンカーがいないのに対艦ミサイルを放つなどおかしい。

 ならば目標は沖合を航行する空母、ニミッツと信濃だ。

 邪魔な航空機を発艦させる空母を撃破、少なくとも航空機運用能力を奪えば、上空に戦闘機をあげられない。

 ミサイルを撃ち尽くしても、無防備なタンカーなら航空機に爆弾を搭載すれば十分に活躍できる。


「撃墜する! ミサイル発射!」


「おい! 敵機が来ているぞ!」


「命中するまで援護しろ!」


「無茶言うな!」


「スパローじゃもう射程外だ。攻撃できるのは俺たちのフェニックスだけだ。困ったときは助けてくれるんだろう」


「分かった! やってやるよ! ってフェニックスが来たぞ!」


「慌てるな! F14の間にチャフを撒いて妨害しろ!」


「ガッデムッ!」


 ミッチェルはヤケクソで梶谷とフェニックスミサイルの間に入り、チャフをばらまいた。

 梶谷の指示に従うのは剛腹だが、それ以外に方法はない。

 ミッチェルのF18から放出された物体からアルミ箔の破片が飛び散り、空に舞い銀河のような輝きを作る。

 フェニックスは誘導電波をアルミ箔の乱反射で妨害され、梶谷たちを見失い、見当違いの場所へ落ちた。


「良し! ロックした!」


 その間に梶谷と葉はシルクワームをロックオン。

 ミサイルを発射する。


「早く来てくれ! 狙われている!」


「急いで離脱しろ! こっちはそれどころじゃ無い! ミサイルを始末する!」


「見捨てるのか!」


「空母優先だ!」


 一機の損失と空母一隻、さらに出撃中の艦載機。

 その損失を計算すれば空母を守るのが優先だ。


「シルクワームを撃墜したら戻ってくる! それまでお前たちがトムキャット相手にしていろ!」


「無茶苦茶な!」


 M2以上でシルクワームを追いかける梶谷に、M1.8のF18が追い付けるわけが無く、イランのF14に捕まる。

 だが、梶谷はミサイルの追撃を優先しF18を置いていく。

 ミサイルに追いつくと、フェニックスとスパローの各種ミサイル、最後には機銃で撃墜する。

 四基のシルクワームを破壊したが、そこまでだった。

 艦隊の防空網、大量のミサイル迎撃が始まる空域が迫っていた。


「タイムオーバーだ! あとは艦隊の防空網に任せる!」


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