作戦開始と再会
梶谷はパイロットスーツを着て準備を整えると、甲板に向かうべく廊下に出た。
「梶谷、敵が手強いようなら、助けて、と言えよ。すぐに助けに行ってやる」
ばったりミッチェルと楊に出会って、軽口を言われてしまった。
「お前は攻撃隊だろう」
「爆弾を落としてからでも十分に間に合う」
ミッチェルと楊が言う。
彼らはF18乗りだ。
高価すぎるF14より安価に、しかも武装を変えることで攻撃機として活躍する機体として開発された。
この利便性から、アメリカは日本に売り込みを図っている。
日本も、空母での運用性が高まることからホーネットに興味を持っていた。
だが、フェニックスミサイルの長射程と、それを操るトムキャットに惚れ込んでいることもあり、計画は進んでいない。
日本独自の戦闘機開発計画FXも進んでおり、導入されるかは未知数だ。
ただ、知らないことだったが、F18の導入は決定していた。
FXも開発するが、ホーネットを基本にすることで機体設計を大幅に簡略化すると共に、運用マニュアルを真似ることで短期間に作戦運用を開始しようという魂胆だった。
だが、今の梶谷たちには未来の計画より今日の敵だ。
「油断するなよ。連中は甘い相手ではない」
「なに、軽くこなしてみせるさ」
「腕が口に見合っていることを願っているぞ」
憎まれ口をたたいたが、本心だ。いやな奴だが、同じ艦に乗る者同士であり、死んでしまっては寝覚めが悪い。
多少は優しく言う。
梶谷はエスカレーターで飛行甲板に上がり、自分の機体へ向かう。
今回は激しい空戦が予想されるため、フェニックスは通常の二発ではなく、四発だ。
最大六発搭載可能だが、着艦重量をオーバーするため、四発が限界だ。
ペアと共に乗り込み、最終チェック。
準備を終えキャノピーを閉じ、整備士たちが離れる。
誘導員の誘導に従ってカタパルトへ向かった。
「リンデンホーム、こちら海猫05。発艦する」
「了解、必ず帰ってこいよ、放蕩息子」
航空管制が発艦許可を出すと、発艦士官が両手の親指でスイッチを同時に押し――安全のためボタン一つだけで打ち出されないように設計されている――梶谷の機体を加速させる。
梶谷の乗った機体はカタパルトから洋上へ打ち出され、大空へ向かって急上昇する。
攻撃機を追い越し上空警戒に努める。
「鷹天狗より海猫05へ、反応あり、敵機だ」
早速信濃のE2Cが見つけたようだ。
流石にイラン側もこれだけの編隊を見れば攻撃してくると分かり、迎撃に出てくる。
「了解、フェニックスでやる。誘導を頼む」
「了解。ロックオンする」
後席が指示通りにミサイルを発射。
慣性誘導で飛ばした後、最終誘導段階で敵機をロックした。
「撃墜」
後席が報告する。
スコアをまた一つ梶谷は伸ばした。
「外れた! いや、回避された!」
葉が叫ぶ。
飛んでくるミサイルを回避できるイランパイロットはアイター少佐しかいない。
「今行く! 待っていろ!」
葉は嫌がるだろうが、相手は多分少佐だ。
逃したら攻撃隊が危険だ。
いけ好かない二人だが、味方が落とされるのを見逃すことは出来ない。
梶谷は機体を旋回させるとアフターを全開にして、合流する。
「食い付かれた! 離れない!」
トップガンの時と同じだ。
葉を、標的を捕捉したら逃さない。
教官相手でも、小型で軽快なF5をどこまでも追いかけていったタフな手練れが少佐だ。
梶谷も引き剥がすのに苦労したことをよく覚えている。
「もう少しで追いつく!」
既に梶谷のトムキャットはシースパローの射程に入った。
だが、近すぎて葉の機体に当たる。
サイドワインダーなど自立誘導のため、誤射の可能性がさらに高い。
「機銃で仕留める」
梶谷はさらに接近する。
「振りほどいた!」
葉が嬉しそうに言う。
回避が成功したと思った。
「いや、誘い込まれた」
梶谷を引き込むためにアイターはわざと葉を逃がしていた。
葉の援護のために引き寄せられた梶谷をロックオンすると、アイターはミサイルを放った。
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