空母への他国航空隊派遣
信濃に日本以外の飛行隊が乗り込むようになったのはベトナム戦争以降、西側各国が軍備の維持、人員確保が困難になっていたからだ。
ベトナム戦争で高まった反戦運動により、徴兵は反発が多い。
さらに大戦後、武器の高度化によりこれらを扱える専門的な人間が少ない。
やる気がある志願者は少なくなっている。
しかも適性がものを言うパイロットの数は、さらに少ない。そこへ中東への派遣が加わる。
東側陣営という敵を正面に抱えている状態で西側陣営が派遣できる兵力は少ない。
そこで、一つの空母に複数国の飛行隊を載せるアイディアが日本から提案された。
一カ国で航空隊と空母を揃え、派遣することは困難だが、飛行隊だけでも送ることが出来れば良いという考えだ。
日本は元から空母を移動する洋上航空基地として定義し、空地分離、飛行隊と空母を切り離して運用することで効率を高めてきた。
大戦中から生み出したこの技術は更に洗練され飛行隊を頻繁にローテーションする仕組みを作り上げていた。
ベトナム戦争直後より計画は実施され、F4ファントム飛行隊で良好な成果を生み出し、トムキャットに代替わりしても続いていた。
当初二〇〇機購入予定のF15イーグルを半分に減らしてトムキャットを日本が増やしたのも空母へ着艦できるという利点を、融通性を作るためだ。
同じ艦載機を保有しているなら他国でも載せられるという意見が通り、実行される。
アメリカも提案に賛同した一国だった。
すでに海軍の空母に海兵隊の航空隊が派遣されている実例があり、稼働率、コストの削減に寄与していた。
各国からアメリカの空母へ派遣されれば自国の航空隊を更に効率的に運用できるという思惑もあった。
EATOの構成国から航空隊が派遣され、こうして同じ空母にアメリカ、中華民国、台湾の飛行隊が乗っているのだ。
提案しただけに日本の空母は人気だった。
食事の時間が制限されていたが味も量も種類も豊富なため、人気だった。
一方のアメリカの空母は二十四時間営業していたが、決まった料理の上に味がイマイチで、アメリカの将兵からも量は一寸少ないが日本の方が良いと評価されていた。
規律は厳しいが、その分正確で、居心地の良い清潔な空間であり、アメリカ空母以上に評価されていた。
概ね好評だが、中にはミッチェルや楊のような奴もいる。
絡まれるのが鬱陶しいので言う。
「それより良いのか? 飛行長が、お前たちの機体が着艦時に過剰な負荷がかかったことについて説明を求めてきていたが」
「まじい」
先の着艦で二人は荒々しい着艦を行い、足が折れかけていた。二人は慌てて飛行長へ釈明するべく、梶谷が来た道を逆方向へ向かっていった。
「珍しく弱気だな梶谷」
二人がいなくなってから葉は、梶谷に声をかける。普段なら一言二言返す梶谷が黙ったままなことが葉は気になった。
「ああ、襲ってきたF14に乗っていたのはアイター少佐だ」
「本当か」
「間違いない。あの度胸と操縦技術はアイター以外にあり得ない」
「そうか」
梶谷の言葉に葉は喜びと悲しみが入り交じった声を漏らした。
梶谷と葉、そしてアイター少佐は、五年前、ミラマー海軍航空基地のアメリカ海軍戦闘機兵器学校、通称トップガンの留学生だった。
各自の母国、日本、イラン、台湾、南中国がトムキャットを導入すると決めたとき、選ばれて派遣されたパイロット達だった。
導入は終わっていたが自国養成だけでなく、より高度な戦闘技術を学ぶため、アメリカ最高峰の学校、世界最高のF14訓練学校へ毎期留学生を送っていた。
トップガンが受け入れるのは各飛行隊の最高のF14のペアのみ。
各国も自国で最高のF14のペアを送り込んでいた。
戦闘機乗りらしく、互いに鼻っ柱の強いパイロットだったが、互いの技量を認めると意気投合し、仲良くなった。
特にアイターと梶谷、そして葉はトップガンを巡って争い、切磋琢磨したライバル同士だ。互いの技量を認め卒業すると帰国したが、友情は続いていた。
その後も、技量向上のため互いの国を行き来することが続いた。
イラン革命まで。
「もし中東派遣になったら、イランのF14が信濃に降りてくると思ったんだがな」
少佐と共に信濃に乗ることを梶谷は夢想していた。
だが革命と共に少佐は投獄され、飛行できないと聞いていた。
しかし、再び飛べたことを喜ぶと共に敵になったことが悲しかった。
敵にならないことを祈りたいが、そうも行かないらしい。
「パイロットはブリーフィングルームに集合せよ」
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