ミサイル迎撃と罠
「畜生め!」
ミサイルを放ったファントムを見て、梶谷は吐き捨てる。
「何で撃つんだ!」
梶谷は知らなかったが、このときイランの最高指導部、とくにホメイニはイスラムの敵、西側がイランの空をイランが飛ぶことを禁止し、西側が悠々と飛ぶことが許せなかった。
一矢報いようと、タンカーへの攻撃を指示し、空軍に実行させた。
イラン空軍としては西側をこれ以上刺激したくなかった。
だが、空戦に出られなくても、忠誠心が強く異教徒、反体制派を拷問にかけることで定評のある革命防衛隊の脅迫が加われば、無視などできない。
だから、最小限の攻撃で済ませようとした。
そのためファントム一機に攻撃を命じ、運悪く梶谷が遭遇してしまった。
「どうするんだ!」
「撃墜する! レーダーで捕捉しろ」
わめき散らしても梶谷は冷静に瞬時に判断を下し、後席に命じた。
トムキャットは制空戦闘機、戦闘機を撃墜するための戦闘機。
だが同時に艦隊に接近する対艦ミサイルを迎撃するために存在する。
ミサイルを仕留められるだけの能力を持っている。
「対艦ミサイルはフェニックスで仕留め、ファントムはスパローでやる!」
機体を引き起こし、ミサイルとファントムを狙える位置へトムキャットを向かわせる。
二つをレーダーに捕らえると、後席は火器管制装置を操作して指示された目標にロックオンする。
「ミサイルをロックオンした」
「発射!」
梶谷がトリガーを引き、フェニックスが放たれると急旋回してファントムを追う。
これで撃破できる。
「ファントムも捕らえた」
捕捉した目標の内、六個をロックオンできる機能をトムキャットは持っている。
すぐにロックしてスパローを発射。
後はミサイルとファントムがレーダー範囲に収まるように飛行して、撃墜を待つ。
簡単に終わるはずだった。
だが、イラン空軍はタンカーへの攻撃に援護を送ると共に罠を仕掛けていた。
梶谷の電波探知機から、けたたましい警告音が鳴る。
「ロックオンされた! 敵機だ!」
敵のレーダーに捕捉され、ミサイルで狙われていることを梶谷に伝えた。
「何処だ! どこに居た!」
狙っている敵機が何処にいるか分からず、梶谷は叫ぶ。
「真後ろだ! 急上昇中! 山陰に隠れていたようだ!」
レーダーも万能ではない。
物体の陰、山の後ろ側にいる機体を見つけることは不可能だ。
イラン軍機は、その欠点を突いて、山間を飛ぶことで梶谷の機体に接近。
罠にかかると急上昇してロックオンしてきた。
「あ! ミサイルを撃ってきた!」
後ろを振り返っていた後席が叫ぶ。
梶谷は上に付いた鏡で後ろを確認。
確かに白い噴煙が自分たちに向かってきている。
「回避しろ!」
「ダメだ!」
後席の指示を梶谷は拒否した。
「どうしてだ! 当たるぞ!」
「撃ったミサイルが命中していない!」
ミサイルは命中するまで目標にレーダーを当てて誘導する必要がある。
回避すると誘導が途切れミサイルは目標から外れてしまう。
対艦ミサイルをここで逃すとタンカーに当たって撃沈されてしまう。
それだけは避けたい。
「加速する!」
梶谷はバーナーをふかし加速する。
だがそれでもミサイルの方が梶谷のトムキャットより速い。
「あと十秒で命中するぞ!」
素早く残り時間を計算した後席が叫ぶ。
「発射されたミサイル撃破まで八秒だ! 撃墜後二秒で回避する!」
梶谷はミサイルに狙われながらもロックオンを続ける。
後ろから迫り来る死神の鎌、ミサイルの接近に焦る。
だが、撃破するまでじっと我慢だ。
自分の撃ったフェニックスミサイルが対艦ミサイルに徐々に近づいている。
「早く、早く当たれ」
命中までの時間がもどかしく感じる。
永遠とも思える時が経過した後、二発の対艦ミサイルに梶谷が撃ったフェニックスが命中し、撃破した。
ちなみにスパローで狙ったファントムも撃墜していた。
「撃墜した!」
「ミサイル接近! 間近だ!」
「回避する!」
命中した瞬間、梶谷は機体を横回転させ、更にチャフを散布して回避機動を行う。
急激な運動とチャフによる誘導攪乱により迫ってきたミサイルは梶谷の機体を見失った。
チャフを突破した後、梶谷の機体すれすれを敵のミサイルが通過し、梶谷は回避に成功する。
「やった! 避けたぞ!」
「まだだ! 撃ってきた奴を仕留める!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます