ブレトンウッズ体制
ワシントン時間八月一五日夜に発表されたニクソンの経済政策は世界に衝撃をもたらした。
この衝撃と影響がどれほどのものか、説明するには第二次大戦後半まで遡らなければならない。
ノルマンディー上陸、マリアナ諸島奪取により戦争の終わりが見えた連合国は、戦後世界を見据えた秩序構築を模索し始めた。
しかし、その中心はアメリカだった。
欧州は戦火で疲弊し国力が衰退。
戦後復興が必要だった。
復興のために必要な膨大な援助、金と物資、機材は小規模な奇襲攻撃を除いて戦火を受けなかったアメリカの工業力、経済力に頼ることとなる。
そのため協議はアメリカのブレトンウッズにおいて行われ、連合国各国は経済協定を結ぶことになる。
協定の内容はアメリカドルを基軸とした固定為替相場、ドルを金の兌換通貨とする金本位制を採用することになった。
金本位は、貨幣と保有する金が交換できることで貨幣の価値を保証する仕組みのことだ。
金という価値のある実物を基にするので通貨の信用が高い、伝統的な制度であり、第一次大戦のころまで各国が使っていた。
また貿易を活発にするため各国通貨の交換比率は固定、固定相場制とされた。
設立された国際通貨基金IMFと国際復興開発銀行を通じて迅速に資金が送られ、固定された通貨比率は支払いを迅速にして貿易を容易にする。
金本位と固定相場制の二つで世界、西側世界を迅速に復興させるものだ。
これをブレトンウッズ体制と呼ぶ。
良い事のように聞こえるが、当時世界の三分の二の金、当時の価格で二五〇億ドル分の金を保有し準備金、交換できる金を用意していたアメリカが世界経済の中心になるよう仕組まれたものだ。
しかし当時の経済学者ケインズはブレトンウッズ体制に欠陥があると批判した。
アメリカに有利なだけでなく、経済の規模が金の総量に制限され、いずれ破綻すると指摘した。
第一次大戦後より徐々に金本位が廃れたのは、第一次大戦で保有する金準備以上に戦費負担が重くのしかかったからだ。
生産力は確保できていたが、工業力を回せるほど金、金準備がなく経済が混乱したためだ。
結果、戦債が重くのしかかり、金が債権国、アメリカに流出。
金本位を維持できないほど金準備が低下し、政府が通貨の価値を保証する管理通貨制度に移行した。
だが第一次大戦でアメリカは困窮どころか、戦地から離れた上に、膨大な軍需で大儲けをして世界一の工業国に躍り出た。
第二次大戦では参戦したが戦場から遠く離れた米本土、工業地帯は戦火を受けることなく、さらに富を増やした。
そのまま戦後を迎え、世界で圧倒的な経済力、国力を持り世界最大の金の保有国になりあがったアメリカは金本位の欠点に気が付かなかった。
いや、金本位を維持できなくなったのは、諸外国が衰退した証拠とみなしたのかもしれない。
結果、アメリカは自身のプラン金本位と固定相場を押つけ採用させた。
世界経済協定が結ばれた土地にちなみブレトンウッズ体制と呼ばれる世界経済体制は世界の復興に使用された。
連合国とはいっても、事実上アメリカの支援がなければ戦えない各国はアメリカに従うしかないし、アメリカの援助を受けなければならない。
英国など、国力が疲弊しすぎて、自国民への食糧供給もおぼつかずアメリカの援助を受け戦後も配給制を維持しなければならなかった。
しかも、この援助は終戦からは有償となり、借金でイギリスはアメリカに繋がれることとなる。
イギリスでさえこの状況なのだから、反対できる国などいない。
ブレトンウッズ体制は採用され、戦後直後から大量のドルが西側世界に流れ、世界の復興に役に立った。
確かにブレトンウッズ体制はここまでは上手く行った。
西側各国はアメリカの戦後復興援助、マーシャルプランもあって急速に 復興を成し遂げた。
しかし、ここからブレトンウッズ体制は揺らぎ始める。
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