砲撃と空爆

「砲撃は順調です」


「ブルードラゴンより報告。目標に命中。射撃を継続されたし」


「よし、反撃できないように潰すぞ」


 ブルードラゴンの指示でベトコンを潰せて砂川の気分は良かった。

 大和を傷つけた奴に反撃できたし、今後の災いの芽を潰せる。


「砂川大尉、通信が入っています」


「何だ?」


「信濃の震電飛行隊で空爆を行うから砲撃を止めろ、と」


「上原か」


 口調で誰か分かった。

 譲りたくないが、射撃位置から逸れつつある。

 修正するために艦の向きを変える、旋回する必要がある。

 飛行隊にも支援を要請しているのは気に食わないが、ミサイルを潰すためなら許容範囲だ。

 更にもう一つ、懸念材料が出てきた。


「北方よりレッドサムライが来ていると警報が出ています」


 コールサインから正体をすぐに思いだして砂川は顔を歪めた。

 大和最大の仮想的だ。

 米軍のネーミングセンスには辟易するが脅威である事には変わりない。

 このままだと射線に入ってきて邪魔をされる。

 前も、射撃中に入り込まれて射撃を中断させられた事があった。

 東側の艦だが、表向きは中立であるため手出しできない。

 誤射した場合は擬装スパイ船以上に厄介だ。

 打ち合いをして負ける気はないが、大和の被害は大きいし、東との全面戦争の可能性が出てくる。

 レッドサムライがやってくる前に、ミサイル部隊に最後のトドメを、打撃を与えておきたかった。


「砲撃中止、旋回する。その間は任せると航空隊に言ってやれ」


「了解」


 大和は射撃を中止し、旋回を始めた。

 その間に目標地点に航空隊が侵入し爆撃を行った。


「ワザと射程内の敵を潰しているな」


 見せつけるような攻撃に砂川は苛立つが、それが上原の性格である事は昔からよく知っている。


「俺たちの手柄を取るつもりならそうはいかないぞ」


 双発ジェット化した震電改といえど、爆弾搭載量は五トン程度。

 四機編隊で二〇トン程度しか爆弾を落とせない。

 大和ならば一斉射で一三トン以上。

 二斉射で飛行小隊以上の成果を上げられる。

 だが、砲撃するために旋回に時間が必要な事も事実だ。


「旋回終了次第。砲撃する」


「飛行隊がいますが」


「射線から離れたら砲撃。見せつけてやれ」


「北方から、レッドサムライ接近。このままでは射線に入ります」


「戦闘中につき針路を変更するよう伝えろ」


「既に行っています。ですが、航行の自由を盾にして針路を変更しません」


 海の世界においては、領海も含め相手に害を与えなければ、ルールを守っていれば自由に航行出来る事になっている。

 流石に戦闘中の海域に飛び込む船はいない。

 だがレッドサムライ、東側の艦艇は、北ベトナムとベトコンの支援、戦闘の邪魔をするため、射線の間に入り込んで来ていた。


「大和の射程に入らないよう、警告は続けるように。射線に入る前に徹底的に砲撃して潰しきる」


「了解」


「敵のミサイル基地を潰すぞ、主砲射撃用意! 指定された座標に対して撃ち込む。諸元算出急げ!」


「了解!」


「座標入力完了。速力、針路、現在位置の入力完了」


「射撃データ算出。方位左一〇二、距離四六二〇〇、仰角四二。弾種榴弾、強装薬準備良し」


「全主砲塔、装填完了! 旋回、仰角調整良し」


「大和の針路安定。艦の動揺、許容範囲内。主砲安定装置、正常稼働確認。誤差修正良し」


「主砲斉射準備完了」


「主砲射撃」

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