青龍師団と韓国軍の実体
通信員の話を聞いて、須加は眉をひそめた。
ブルードラゴン――青龍師団はベトナムに派遣されている韓国軍海兵隊第二海兵師団だ。
もとより勇猛とされる韓国軍の中でも志願制の海兵隊は、更に精鋭であり、「クソの中にも筋肉が入っている」と米兵が下品に噂するほどだ。
だが、連中の戦いぶりは勇猛と言うより、蛮勇と言った方が良い。
戦場で民間人への暴行などの噂が絶えない。
証拠隠滅のために、砲爆撃で消し飛ばすこともある。
しかもその砲爆撃の要請を米軍や他の部隊に求めてくる。
時部隊に火力が少ないと言っているが相手の部隊にも片棒を担がせて発覚を遅らせるために姑息な手段だ。
米軍は、手数が少ない――自国の部隊の戦争忌避で士気が低く、任務達成率が低いし、ベトナム軍が能力的にも士気的にも信頼できないので、韓国軍を頼りにしている。
そのため韓国軍の行為を黙認、報告を受けても誤認だろうと受け付けずもみ消している。 だが、日本部隊は戦争犯罪に巻き込まれたくないし、もとより韓国軍とは関わりたくないので消極的な態度、関わりあいにならないよう動いている。
それは韓国軍も承知で日本を騙そうと英語のコールサインを送ってくる。
日帝と言ってさげすむ韓国軍は日本に後始末をさせてやりたいらしい。
いや日本の名誉を貶すために引き入れようとしているようだ。
米軍が主力のため、意思疎通がしやすいよう英語でコールサインを作るのは致し方ない。須加の部隊も米軍との共同作戦ではコールサインを英語にしている。
しかし、それを擬装に使われると頭にくる。
通常は単純なコールサインのため場慣れした須加達は引っかかることはない。
韓国軍と接触する事の多い部隊も同様で、要請を断る部隊が多い。
しかし、このときは違った
「大和がブルードラゴンの支援要請を受諾しました」
「何っ」
時折、大和に砲撃させようとしているが、臼淵艦長は韓国軍の手口を知っているため拒絶している。
それが、あっさり承認するなんておかしい。
「どうして大和が砲撃するんだ」
思わず須加は前に出て通信員に問い詰めてしまった。
「詳細は不明ですが大和が被弾し艦長が負傷したという情報が」
「何だと」
下級士官、少尉が前に出て戦う陸戦と違い、軍艦は艦長を頭脳とした巨獣だ。
その頭脳が損傷したら混乱するのは目に見えている。
今まで艦長が事の真偽を判断していたとしたら、事情を知らない指揮代行者が素直に要請を受けてしまう。
「大和に止めるように言え!」
「しかし、大和に対する命令権はありません」
「警告を与えろ! 民間人がいる可能性あり! 射撃を中止されたし! いそげ!」
「は、はいっ」
大和の砲撃の威力はよく知っている。
あんな砲撃を民間地帯に撃ち込んだら大惨事だ。
大和は勿論、日本の威信は地に落ちる。
最近の厭戦的な気分に、この惨劇が加わったら日本も、政府も、大和も叩かれてしまう。
「早く繋げ」
「呼び出していますが答えません。向こうも混乱しているようです」
被弾により通信設備の一部に支障が出た上、上級司令部との損害報告についてのやりとりで通信能力が飽和していた。
隊員数が少なくなっていたこともあり乗艦者は少ない。
大和は人気だが、他の艦艇、護衛や空母、支援艦艇の乗員を減らし動けなくするわけにはいかず、大和の乗員も定員を割っていた。
被弾へのダメコンのため、通信員が一部引き抜かれた事も事情を悪化させていた。
「まだか!」
「繋がりません」
その時、ディスプレイ上の大和のマークが変化した。
「大和、砲撃を開始しました」
「畜生!」
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