ミサイル撃破と復仇戦
砂川の号令と共に主砲が放たれた。
砲口から一.五トンの砲弾が飛び出し、ベトナムの空へ一直線に進む。
だが、すぐに重力にひかれて放物線を描き始める。
装薬を減らされていたためだ。
それだけ迫ってくるミサイルのスピードが速かった。
しかし、先程の飛翔記録を元に出されたデータは、正確で砲弾の先端はミサイルに向かって下がる。
予め調停されていた三式弾改の時限信管が作動し、炸裂すると、内部から無数の弾子をミサイルを囲むように放つ。
もし、有人の攻撃機なら大和が発砲した瞬間に退避行動を取り逃げ出しただろう。
だが、プログラム通りに、目標へ慣性誘導とレーダーのみで飛ぶだけのミサイルでは対応力に差が出た。
愚直に真っ直ぐ大和に向かっていくミサイルは三式弾改の良い標的で、無数の弾子を浴びた。
弾子は翼と燃料タンクを貫き、ロケット燃料を発火させミサイルを爆発させた。
更に連続して放たれた三式弾の斉射により、三発のミサイルが破壊された。
だが、初期故障で墜落した一発を除いた残り一発が迫ってくる。
「飛翔体接近!」
「航海長に回避要請!」
主砲射撃の為に直進を維持して貰った。
だが、主砲の最小射程に入った今は前に向けて撃つ事が出来ない。
突き出した大和の艦首は格好いいが、零距離射撃では主砲の射線に入ってしまい砲撃不能だ。
あとは回避しかない。
対空砲も放たれるが、船体の左右に配備されており、前に撃てる対空砲は少ない。
舵を切り始めるが、大和は建造時から舵が利き始めるまで時間がかかることで有名だ。
直撃は免れないと誰もが思った。
ミサイルのレーダーが大和を捉え一直線に突入する。
命中するかと思った瞬間、奇跡が起きた。
「艦が動いている」
僅かに左舷側へ押される感覚、遠心力を砂川は感じた。
舵が利き始めると大和は急速に旋回を始めた。
ミサイルのレーダーは大和が回避しているのを検知した。
だが、初期ミサイル特有の応答性、修正の悪さと飛行性能の低さから大和を追いかけることは出来なかった。
ミサイルは大和の左舷を通過。
後方へ抜けた後、突如目標を見失いプログラムは混乱。
ミサイルはフラフラに動いて海面へ墜落した。
「回避できました」
「驚かせやがる」
砂川は、間一髪で助かったことに感謝しtあ。
「目標はどうなっている」
「地上部隊より目標の破壊に成功したと報告が入っています」
「よし」
迎撃に変更するまでに放った四二発の三式弾改はミサイルの発射点へ放たれた。
二回目のミサイル発射後、再装填に出てきた所で砲弾が炸裂し、弾子が襲った。
発射後は、反撃を警戒して移動するようのがセオリーだが、初の実戦の興奮で彼らは忘れていた。
また、東側が得ていた大和の主砲射程の数値が古く、五〇キロ以上に伸びたことを知らず、第三射まで放って退避するだけの時間があると考えていた。
そのため、彼らはもろに主砲の射撃を浴びた。
ミサイルもランチャーも人員も、区別無く等しく確率論に従い弾子を浴びて仕舞った。
着弾を見て待避壕に避難した者もいたが、大和の砲弾を受けて待避壕ごと破壊された。
最後に、ロケット燃料タンクに引火し大爆発がトドメとなった。
爆風で全てがなぎ倒され大火災が発生する。
周囲の酸素を燃やし尽くし、発生した高熱が生き残った者の息の根を止めた。
「砲撃完了」
「地上部隊から誘爆しているという報告がありました」
「そうか」
砂川は満足し安堵した。
自分の大和を傷つけた存在を撃破出来た。
これ以上攻撃を受けることは無い。
だが、怒りが残っている。
「まだ他にいるかもしれないな。残弾も残っている。目標周囲の敵を撃破するぞ。地上部隊に砲撃目標は無いか尋ねろ」
「は、はい。こちら大和、目標は無いか」
戦闘中の混乱で副長も砲術長も砂川の指示を是とした。
幸い、火災が激しいだけで装甲に問題は無く、残存燃料を洗い流して鎮火させることに成功していた。
主砲射撃に問題が無く、砲撃可能なことも大きな理由だった。
「ローンスターより支援要請が来ました」
「砲撃せよ」
テト攻勢に対する反撃の為に各国の部隊が参戦している。
英語を使っているところからアメリカの部隊だと砂川は判断し命じた。
実施、この部隊はテキサスの部隊だった。
だが、次は違った。
「大尉、ブルードラゴンより支援要請が出ています」
「何処にだ?」
「ここです」
「フォンニィ・フォンニャット村か」
座標から地図を見て砂川は確認した。
「かなり内陸だな」
「ですがミサイルらしき物体を発見したと」
「よし、潰すぞ。砲撃位置の割り出しと針路指示を」
「はい」
射程が伸びた分、大和からでも十分届く。
ミサイルを潰せるならと、砂川は大和を射撃位置へ向かわせた。
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