援朝抗美軍への反撃

「何が起きたんだ」


 信じられない光景に呆けた表情で宗像は呟いた。

 夢を見ているのか、あるいは走馬灯かと疑ったが、現実だった。

 一体誰がと思ったが、宗像の部下が歓喜を爆発させながら答えた。


「味方の増援です! 五式砲戦車だ!」




「正面の敵に対して砲撃せよ!」


 五式砲戦車を率いる西は部下に命じた。

 敵が少数しかいないのなら、叩いておいた方が良い。

 速力を重視し五〇両近い部隊の大半を置き去りにしたため手元には十両にも満たない。

 しかし、それで十分だった。

 猛虎戦車相手には十分すぎる。

 しかも使っている砲弾は新開発されたAPDS弾。

 スリーブを使い主砲の直径より小さいタングステン弾を叩き込み、装甲を貫くのだ。

 西達が放った砲弾は美事、猛虎戦車を貫き、撃破した。

 撃破されたことに驚いた猛虎戦車は、混乱し、後退する。

 その時、連携が乱れ、隙が生まれた。

 西はその隙を見逃さなかった。


「全車突入!」


 西は遮二無二突入させ、猛虎戦車を次々と撃破する。


「好機到来だ! 突入しろ!」


 宗像も機会を逃さず、橋頭堡へ攻撃を仕掛け、敵歩兵を掃討。

 五式砲戦車が進出できる余裕を与えた。

 歩兵の援護を受けた装甲車両の登場に中共軍はパニックになり逃走。

 かくして稜線は国連軍に奪回され、防衛線は安定した。


「素晴らしい成果だ!」


 奪回された陣地を見て後から追ってきたジー部に乗った老人が拍手を叩きながら駆け寄ってきた。

 寒気の中、曝露された車の上にいたにもかかわらず、磨かれたブーツの足取りも軽やかに西の元へ行く。


「良くやった西。さすがゴールドメダリストのことはある」


「ありがとうございますパットン将軍」


 二人の英語の会話は、米海兵隊を驚かせた。

 あのパットン将軍が日本軍と共にこんな前線まで来た。

 ヨーロッパ戦線で大活躍し、沖縄戦で共に泥にまみれて戦ってくれたパットン将軍。

 そして戦いぶりをパットン自身が賞賛した日本軍と共に来てくれた。

 これで勝てる!


「パットン将軍万歳!」


 自然と歓呼が沸き上がった。

 自分達は生き残れる、勝てるという希望が喜びとしてわき上がったのだ。


「遅くなって済まなかったな。海兵隊の戦友達」


「いいえ、しかし将軍がいらっしゃるとは」


「後方で命じるのは性に合わん。戦況図を見せてくれないか」


「はっ! 司令部にどうぞ」


「そんな時間は無い、塹壕から敵陣地を見ながら地図で答えてくれ」


「は、はい!」


 海兵隊も前線で指揮する将校は多いが、パットンは更に上をいっていた。

 すぐさま最前線に赴くと、付き添ってきた米第一海兵師団師団長スミス少将が戦況図を広げ、敵の陣地の配置を説明。

 パットンは状況を把握する。


「ふむ、状況は悪いな」


 闘志に溢れるパットンには珍しく弱気な発言をするが、ポーズだった。


「だが時間が経てば、より悪化する。直ちに攻撃を仕掛け、連中の攻撃を破砕する」


 攻撃破砕攻撃。

 敵の攻勢が発起される直前にその準備を叩く。

 出鼻を挫くには最適な方法だ。

 十分な兵力があれば。


「将軍、残念ながら、我々には最低限の守備兵力しかありません」


「理解している。だが日本の援軍が来ている。彼らに行って貰う」


「それでも兵力は不十分です。せめて航空攻撃が可能になるまでお待ちになられては」


「それが何時になるか分からない。攻めるなら今だ」


「大丈夫なのですか?」


 スミス少将は半信半疑だった。

 やって来た日本軍だけで膨大な中共軍を撃滅できるとは思えない。

 しかしパットンは信じていた。


「出来るな西」


 強い口調で尋ねられ、西は背筋を伸ばして答えた。


「願ってもないことです。上陸したばかりで手柄を立てておりませんから。機会をくださるなら喜んで」


 西は二つ返事で答えた。


「よし、では攻撃を始めたまえ」

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